会社を設立する際に決定しなければならない決算期。
実は、経営者が自由に決められることをご存知でしょうか?
決算期の設定時期によって、会社の資金繰りがしやすくなったり、節税効果が見込める場合もあります。
今回は、決算期の設定方法についてご紹介します。
決算期の設定と事業年度
決算を行う時期について、個人事業主の場合は暦年課税が決められているため、
1~12月の期間を事業年度と考えて確定申告を行うことが一律で定められており、変更はできません。
しかし法人であれば、決算期は任意で設定することができます。
たとえば2019年4月1日に会社を設立した場合、
決算日をその年の12月末に設定すれば、
1期目の事業年度は4~12月の9カ月間となり、
2期目以降から1~12月となります。
もし2020年3月31日を決算日と設定すれば、1期目の事業年度は最長の1年間となります。
決算日の設定ポイントは?
決算日を他社に合わせてなんとなく決めてしまうと決算期に負担が増えてしまうため、
注意する必要があります。ここで押さえておくべきポイントは、次の4つです。
(1)1期目が1年間になるように
資本金が1,000万円未満で会社を設立した場合は、
設立1期目および2期目(大規模法人の子会社を除く。
2期目については前期の上半期の課税売上高が1,000万円以下であることが条件となる)
については、消費税を免除する規定があります。
そのため、1期目を最長の1年間になるよう決算日を設定しておけば、
丸2年間、消費税の免除が受けられます。
(2)繁忙期を避ける
会社は、決算日から2カ月以内に法人税等の確定申告を行って納税しなければいけません。
確定申告は準備に時間と手間がかかるため、
売り上げが大幅に上がる繁忙期の直後に決算日を設定すると、
節税対策が間に合いません。
特に売り上げに季節的な変動があるような業種では、
決算日は繁忙期から期間を空けて設定してみてはいかがでしょうか。
(3)支出の多い月を避ける
法人税等の納税に伴う資金の確保を考えると、
支出の少ない時期に決算日を設定するのも一つの方法です。
具体的には、夏季や冬季の賞与支払い月や、
納期の特例を申請している場合の当該納付月などを避けるとよいのではないでしょうか。
決算期の変更手順
前述の通り、会社設立時に設定した決算日は、後から変更することも可能です。
公証役場での定款の認証や登記も不要なので、
税務署などへ届け出をすることで簡単に変更することができます。
具体的には
(1)株主総会の決議を取り、
(2)所轄税務署・都道府県税事務所・市区町村の役所へ
『異動届出書』を提出します。その際に、変更を決議した
『株主総会議事録』のコピーも併せて添付します。
決算期が会社の状況にそぐわないとお困りの場合は、
会社の事情に合わせて計画的な節税対策を講じていくためにも、
早めの変更をおすすめします。
*斎賀会計事務所では会社の状況、代表者様の意向を丁寧にお聞きし、
会社経営の向上にお役に立てるよう努めております。
お気軽に、ご相談ください。
適切な会計処理は、ディスクロージャーのみならず、経営方針策定や計画的に会社運営を進めるうえでも必要不可欠なもの。
不適切会計が発覚した場合、会社は事後対応に追われるだけでなく、進行中のプロジェクトに滞りが生じたり株価が下落したりと、さまざまな悪影響に見舞われることになってしまいます。
にもかかわらず、不正会計や粉飾決算など、
いわゆる『不適切会計』を開示した上場企業は年々増加しています。
この背景には何があるのでしょうか。
大企業だけでなく、中小企業や個人事業主にも関わる
不適切会計の定義や増加の理由、その防止方法をみていきましょう。
過去最多となった不適切会計の開示企業数、その増加の理由は?
近年、開示資料の信頼性確保や企業のガバナンス強化の取り組みを求める声が浸透し、
不適切会計の開示企業数が増加し続けています。
その背景として、上層部からの数値目標達成のプレッシャー、
承認事務の機能不全といった着服や不正を行いやすい脆弱なガバナンス、
監査基準の厳格化、経済のグローバル化、
トップ主導の風通しの悪い体制などがあげられています。
また、東京商工リサーチが2018年1月に公開した
2017年全上場企業『不適切な会計・経理の開示企業』調査によると、
不適切会計の発生当事者別では、親会社が23社だったのに対し、
子会社・関係会社は30社となり、複雑な決算処理に対応できない混乱や、
業績目標などのプレッシャーから不適切会計に手を染めるケースも多いようです。
不適切会計の定義とは?
『不適切会計』という言葉が注目を集めるきっかけになったのは、
2015年に明らかになった某上場メーカーの会計処理問題です。
不適切会計に似た言葉として、『不正会計』や『粉飾決算』がありますが、
どのような違いがあるのでしょうか。
これについて、日本公認会計士協会は、
不適切会計を『意図的であるか否かにかかわらず、
財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、
又はこれを誤用したことによる誤り』と定義しています。
ポイントは、『意図的であるか否かにかかわらず』という点。
他人を欺くような意図的な不正行為も、意図しないヒューマンエラーやミスも、
正しい会計処理ではないという意味で不適切会計に含まれる、
というのが日本公認会計士協会の見解です。
すなわち、意図的な不正会計や粉飾決算は不適切会計の一部にすぎないということになります。
不適切会計の防止には会社側の体制づくりが重要
たとえば今後、経理・財務部門の人手不足が深刻化していくと、
高度な会計処理が要求される会社では、意図しないヒューマンエラーなどによる
不適切会計が増加してしまう可能性が考えられます。
どの会社においても“対岸の火事”とは考えず、
あらかじめ防止策を講じておくことが必要でしょう。
また、意図的な不適切会計発生の防止策として、内部統制の強化が重要です。
内部統制は『業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、
事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が
達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、
組織内のすべての者によって遂行されるプロセス』とされ、
職務分掌や業務の効率化によって確立されていきます。
ただ、内部統制を確立するだけでは、
不適切な会計処理の完全な防止にはつながりません。
従業員同士が共謀した場合や経営者主導の場合などは、
内部統制が発揮されにくくなるためです。
このような原因による不適切会計を防ぐには、
トップ主導体制や決済権を1人に集中させず、承認事項には複数の人を介入させるなどして、
社内間で取引業務相互を定期的に照合できる環境を整えておきましょう。
また、不適切会計が発覚するきっかけが会社内部、
すなわち内部通報者によって明らかになった場合にも、
解雇などの不利益な扱いにならないように保護する対策が必要です。
ちなみに、不適切会計が発覚した場合、上場企業であれば、
上場廃止や特設注意市場銘柄への移管などの措置がとられます。
刑事責任としては、違反者個人には懲役や罰金、
会社には億単位の罰金が科せられる場合があります。
株主からは代表訴訟を提起され、役員等が損害賠償を請求されることもあります。
従業員一人ひとりの意識改革や、内部通報システムの確立などは、
抑止力として大いに機能するといわれています。
不適切な会計処理が会社に与えるダメージや
個人責任を問われる可能性などの認識を社員一人ひとりに持ってもらうためにも、
定期的に研修などを行うのもいいでしょう。
不適切会計は、会社の存亡に関わる大きな問題に発展しかねないリスクの一つです。
不正を看過しない体制や従業員一人ひとりのプロ意識を醸成することで、
最悪の状態になる前にリスクを回避できるはずです。
*斎賀会計事務所では金融機関や得意先から信頼される決算書等会計書類作成のお手伝いをいたします。
お気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
働き方改革関連法案の成立で、建設業の時間外の
上限規制は当面適用が猶予されます。
今回は、猶予の内容や企業規模との関係、
36協定締結の必要性など留意点をご説明します。
適用猶予の期間は、企業規模を問わず、
2019年4月から2024年3月31日までの5年間です。
この日をまたぐ場合には協定期間の初日から起算して1年までとなります。
また、適用が猶予される事業は、建設業のほか、交通誘導警備なども含まれます。
適用猶予の期間は 2024年3月31日まで
労働基準法では、法定労働時間は原則1日8時間、週40時間と決められています。
しかし、あらかじめ労働組合(または労働者の過半数代表者)と使用者で
『時間外・休日労働に関する協定届』、いわゆる『36(サブロク)協定』を締結することにより、
これを超える時間外労働や休日労働をさせることができます。
2018年6月に成立した働き方改革関連法案で改正された労働基準法では、
時間外労働等の上限に関しては、下記の通り定められています。
(1)原則月45時間、年360時間を超えないこと(新法36条3項、4項)
(2)特別条項により、休日労働を含め月100時間未満、
休日労働を含まず年720時間以内(5項)とすること
(3)特別条項によらない場合も、休日労働を含め月100時間未満、
休日労働を含め2~6カ月間の1カ月あたりの平均が80時間を超えないこと(6項)
ただし一部の事業・業務については働き方改革を進める方向性を共有したうえで、
実態を踏まえて適用の一定期間猶予措置が設けられており、
建設業もこれに含まれています(法139条2項、1項の復旧復興事業は一部取扱いが異なる)。
適用猶予の期間は、2024年3月31日までとなっており、
この日をまたぐ場合には、協定期間の初日から起算して1年までです。
適用は猶予でも36協定の締結自体は必要ですので、協定事項を確認してみましょう。
建設業の猶予は 企業規模を問わず適用となる
新法36条2項2号では、適用猶予の対象期間を1年間に限るとし、
事業完了または業務終了までの期間が1年未満である場合も、
1年間とする必要がある(平30・9・7基発0907第1号)とされました。
延長時間を書く欄として、新法では『1日、1カ月、1年のそれぞれ』としていますが、
建設業については、適用猶予により1カ月のところは
『1日を超え3カ月以内の範囲で協定をする使用者および労組などが定める期間』となります。
36協定の様式は9号の4などを用います(新労基則70条)。
中小企業に対する時間外の上限規制は2020年4月1日から始まります(働き方改革関連法附則3条)。
建設業の猶予は直接関係がなく、企業規模を問わず2024年3月31日まで猶予される形です。
適用が猶予される事業は下記の通りです(新労基則69条)。
(1) 労基法別表第1第3号に掲げる事業
現在、限度基準告示により、月45時間等の限度時間や
特別条項の適用がない事業とリンクします
(平11・1・29基発45号、平15・10・22基発1022003号)。
(2)建設業に属する事業の本店、支店等
労基法法別表第1第3号に該当しないもの(平30・9・7基発0907第1号)とされ、
たとえば、事務部門主体の本店・支店などです。
(3)工作物の建設の事業に関連する警備の事業
当該事業において交通誘導警備の業務を行う労働者に限るとしています。
働き方改革関連法案で新たに盛り込まれることになった、
時間外労働や休日労働についての厳しい上限規制は、
従業員が心身とも健康に働くために必要なものです。
しかしその一方で、工事期間が必ずしも年間を通して一定ではない建設業の場合、
残業が減ることは従業員の収入の減少に直結することにもなります。
この調整をうまく行いながら、働き方改革の成果を上げられるようなシステムを検討していきましょう。
*36協定の確認、給与体系の見直しなどは、お気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
贈与税の非課税額は年間110万円以内と
定められていますが、条件によって最大2,500万円ま
でを非課税で贈与することができる、
『相続時精算課税制度』という制度があり、
年間約5万人が利用しています。
今回はこの『相続時精算課税制度』の特徴や
注意点について詳しくご説明します。
制度利用の条件
相続時精算課税制度を利用するための条件は、
『贈与する人が、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の祖父母もしくは父母であること』、
そして『贈与される人が、贈与された年の1月1日時点で20歳以上の子どもまたは孫』です。
手続きは、相続時精算課税制度届出書を贈与された『次の年の2月1日から3月15日まで』に
所轄の税務署に提出することから始まります。
戸籍謄本など贈与される相手との関係が証明できる書類などを添えて提出します。
相続時精算課税制度を選択した場合、暦年課税への変更ができなくなるのでご注意ください。
2,500万円を超えると贈与税率が適用に
相続が発生した際には、贈与された金額分(贈与時の時価)が相続財産に含まれることになります。
贈与される財産の種類や金額、贈与される回数の制限はありません。
トータルで最大2,500万円までが特別控除額として計上されます。
そのため、2,500万円以内であれば、非課税で贈与することができます。
2,500万円を超えた贈与に関しては、20%の贈与税率が適用されます。
たとえば贈与された財産が5,000万円だった場合、
通常は(5,000万円-基礎控除110万円)×55%-控除額400万円=『2289.5万円』の
贈与税が課せられます。
相続時精算課税制度の適用後は、
(5,000万円-特別控除額2,500万円)×20%=『500万円』が贈与税額となります。
両方を比較した場合、『1789.5万円』の節税効果を見込むことができます。
どのような財産に適用されると効果的か
相続時精算課税制度では、『贈与した時点の評価額』にて、相続時に計算されます。
そのため、たとえば開発予定の土地や、値上がりの可能性を持つ株式、
年代ものの貴金属品や骨董品など、将来的に価格の高騰が期待できる財産を贈与すると、
より効果的といえます。
大切な家族には、少しでも多くの財産を残したいものです。
*相続・贈与について気になることがありましたら、斎賀会計事務所に一度ご相談ください。
前事業年度の法人納付額が一定以上だった場合、
事業年度の中間で今期の法人税の一部を前払いで
納める必要があります。今回は、この“中間申告”の
内容について解説します。
“中間申告”が必要な場合とは?
中間納付額が10万円を超える場合は、
事業年度の中間で“中間申告”を行い、
法人税を前払いする“中間納付”をしなければなりません。
申告・納付期限は、事業年度開始の日以後6カ月を経過した日から
2カ月以内(決算日から8カ月後)です。
たとえば3月決算の会社の場合、中間決算月は9月、
申告、納付期限は11月30日となります。
その事業年度の決算時には中間申告で納付した額が控除され、
払い過ぎの場合には還付されるため、中間納付を行ったからといっても、
損をするわけではありません。いわば、前払いにあたります。
半期の時点で一度支払っておけば、年度末にまとめて支払うより
資金繰りの見込みが立てやすい場合も多いほか、
安定的な税収の確保につながるため、税務署の心象もよくなります。
前年度納付額の半分を申告するか今年度半期分の利益から計算するか
中間申告の方法には次の2通りがあり、いずれかを選択することができます。
【予定申告】
前事業年度の確定申告に係る法人税額で、
事業年度の開始の日以後6カ月を経過した日の前日までに確定した金額を
前事業年度の月数で割ったものに6を乗じて(100円未満切り捨て)
法人税額を計算します。
仮に、前事業年度の月数が12カ月で、前事業年度の確定法人税額が120万円の場合、
120万円÷12カ月×6=60万円となります。
簡単に計算できるため、ほとんどの法人がこの方法を採用しています。
【仮決算】
事業年度開始の日以後6カ月の期間を一事業年度とみなして
所得の金額等を計算した場合には、中間申告書の提出の事項に代えて、
次の事項を記載した中間申告書を提出することができます。
(1)その期間の所得の金額等
(2)(1)の金額の計算の基礎その他一定の事項
通常の確定申告と同じように決算書類を作成し、税額を計算する必要があります。
ただし、仮決算で計算した中間納税額が、
予定申告により計算した金額を超えている場合には、
仮決算による中間申告は選択できません。
仮決算のメリット・デメリット
「前期の売上は好調だったけれど、
今期の売上はかなり下がってしまったので中間納付が苦しい」という場合には、
仮決算を行ってもよいでしょう。
仮決算は今期の数字をもとにしているので、
もし計算の結果が赤字であれば、納税額は0円となります。
しかし中間決算には、税理士に対して決算報酬の支払いが必要となるなど、
トータルで見ると支払いが多くなり、キャッシュフローは悪化します。
そのため、中間納付によって事業が破綻してしまうほど会社の資金繰りが厳しい場合や、
納税額が非常に多く、税理士への支払いが増えても中間納付で資金を浮かせて
事業に回したい場合以外は、仮決算を行わないほうがよいと考えられます。
*法人・個人の申告に関するご相談は、お気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
会社を経営するうえで、経営者は会社から役員報酬を得ることができます。
目分量で役員報酬を決めてしまってはいませんか?
適切な額を定めれば、中小企業にとっては大きな節税効果を見込むことができます。
今回は、節税効果を上げる役員報酬の決め方についてご紹介します。
役員報酬の額で変動する法人税と所得税
会社を経営していると、会社としての法人税のほか、
役員報酬にかかわる個人としての所得税や住民税を支払い、
さらに社会保険料も負担しなければなりません。
これらの税金を減らすことは、結果として手元にお金を残すことにつながります。
節税にはまず、会社の法人税率を下げることと、個人の所得税率を下げることが必須になります。
中小企業の場合、法人税率(実行税率)は会社の所得、
いわば利益によって変動します。
年間で400万円以下の利益の場合は21.4%、年
間で800万円を超える利益を出した場合は33.8%の法人税がかかります。
つまり、利益が少なければ少ないほど、法人税率が低くなることがわかると思います。
一方、個人の所得税率も同様で、所得によって変動していきます。
195万円以下の所得であれば所得税率は5%で、
195万円を超え、330万円以下であれば10%といった具合です。
経営者の中には役員報酬を高めに設定し、年間で4,000万円を超える収入を得ている人も存在します。
この場合は、なんと45%もの所得税が課せられてしまいます。
また住民税は、所得に関わらず一律で10%課税されるので、
所得によっては、最大で55%もの税金が課せられる可能性があります。
このことから、個人の所得もできるだけ低くしたほうがよいことがわかります。
しかし、個人の役員報酬を少なくすると、その分が会社の利益になり、
法人税率が上がってしまう可能性があります。
その逆もしかりで、役員報酬の分を損金として算入すれば法人税率は低くなりますが、今
度は逆に個人の所得税率が高くなってしまいます。
最適な節税をするには、法人の所得と個人の所得のバランスを考えなければいけません。
そのためにはまず、適切な役員報酬の額を決める必要があります。
節税効果のある役員報酬の決め方とは?
役員報酬をいくらにすれば、最大の節税効果を得られるのでしょうか?
家族構成や年齢、事業の規模などケースバイケースですが、ここでは、
40歳独身で資本金5,000万円の会社を運営しているという前提で考えてみます。
たとえば、役員報酬を除く会社の利益が年間で2,000万円あったケースで、
役員報酬を年間で1,000万円受け取った場合と、1,500万円受け取った場合の、
税率の違いを見てみましょう。
どちらも役員報酬以外の所得がなく、基礎控除のみ所得控除がある場合を前提とします。
・役員報酬が年間1,000万円の場合(会社の所得1,000万円)
個人の所得・住民税額は約184万円(※1)になり、会社の法人税額は約338万円になります。
所得税額と法人税額の合計は約522万円です。
・役員報酬が年間1,500万円の場合(会社の所得500万円)
個人の所得・住民税額は約386万円(※2)になり、会社の法人税額は約116万円になります。
所得税額と法人税額の合計は約502万円です。
※1
役員報酬 給与所得控除 基礎控除
((10,000千円-2,200千円-380千円)×23%-636千円)×102.1%+(10,000千円-2,200千円-330千円)×10%=1840千円
※2
((15,000千円-2,200千円-380千円)×33%-1,536千円)×102.1%+(15,000千円-2,200千円-330千円)×10%=1840千円=3,863千円
つまり、このケースでは、役員報酬を1,500万円にしたほうが、
役員報酬を1,000万円にするよりも、会社と個人を合わせて考えると、
約20万円も手元にお金が残ることになります。
一概に役員報酬を低く設定すればよいわけではないことが、
おわかりいただけたのではないでしょうか。
多少の損を覚悟で会社にお金を残す選択も
もちろん、役員報酬の決定には会社の経営方針も関わってきます。
会社に資金を残しておくほうが、会社の財務体質を強固なものにし、
会社間の取引を有利に進めることができます。
また、設備投資のためにも、会社に資金を多く残しておきたいという考え方もあります。
そのため、多めに法人税を払ってでも、個人より会社にお金を残しておきたいと
考える経営者は少なくありません。
また、役員報酬には基準額などがあり、不相当に高額だった場合は、
高額な部分の金額が損金に算入できなくなることもあります。
役員の業務内容や、会社の規模や業界の平均報酬によっても基準額が変動します。
このように、役員報酬は会社の状況に応じた適正額があり、
それを見極めることが何よりも大切になってきます。
自社のためになる“最適な役員報酬額”に関するご相談は、お気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産もしくは
居住用不動産を購入するための金銭の贈与が行われた場合に、
贈与税の基礎控除額である110万円の他に、2,000万円までの
控除が認められる特例の配偶者控除があります。
配偶者控除の対象となる不動産の範囲
配偶者控除の対象となる不動産の範囲は以下の2つです。
⑴ 夫もしくは妻が所有者の居住用家屋
⑵ 配偶者もしくは親族が所有者となっている建物の土地に対する所有権か借地権
⑵の例として、妻が居住用家屋の所有者で、夫がその家屋の土地の所有者の場合、
夫から妻に対して土地の贈与を行うケースが当てはまります。
もう一つの例として、夫婦と子どもが同居している家庭で、子どもが居住用家屋の所有者であり、
夫がその家屋の土地の所有者の場合に、妻が夫から土地の贈与を受けるケースがあります。
ちなみに配偶者控除は、居住用家屋のある土地の一部の贈与にも認められます。
また、居住用家屋のある土地が借地権の際に、いったん金銭にて贈与を受け、
その後、土地を地主から購入した場合であっても、居住用不動産の取得となり、
配偶者控除を適用できます。
特例を受けるための条件は?
配偶者控除の特例を受けるための条件には、次のようなものがあります。
⑴ 夫婦の婚姻期間20年以上が経過した後の贈与であること
⑵配偶者からの贈与が本人が住むことを目的とした日本国内の居住用不動産であること
⑶配偶者からの贈与が居住用不動産を購入するための金銭であること
⑷贈与された年の翌年3月15日までに贈与の対象となる居住用不動産に居住しており、
その後も贈与された居住用不動産に引き続き居住する予定があること
配偶者控除は、贈与される配偶者が同一人物の場合、一生のうち1回だけ認められます。
配偶者控除に必要な書類と手続きの期間
配偶者控除の手続きには、贈与税の申告が必須です。
贈与税の申告に必要なのは、以下の書類です。
⑴戸籍謄本もしくは戸籍抄本(贈与された日から数えて10日以降に作成されたもの)
⑵戸籍附票の写し(贈与された日から数えて10日以降に作成されたもの)
⑶居住用不動産の登記事項証明書などその居住用不動産を購入したことを証明できる書類
⑷固定資産評価証明書などその居住用不動産を評価する書類
(金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合)
贈与税の申告は翌年の2月1日から3月15日までの間に、
所轄の税務署にて行います。相続・贈与について気になることがありましたら、
お気軽にご相談ください。
*相続・贈与のご相談はお気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
2019年10月1日、10%への増税と同時に、
税率の引き上げに伴う低所得者への配慮として
『消費税の軽減税率制度』が実施されます。
今回は、軽減税率の対象品目はどんなものがあるのか、
また軽減税率制度が業務にどう関係するのかについて
解説します。
コンビニ弁当の消費税は、8%?10%?
注意しておきたい細かな区分
消費税が8%から10%となっても、軽減税率の適用対象となるものは消費税8%で、
現状のまま据え置きされます。
軽減税率の対象になるのは大きく分けて、下記の2項目です。
●飲食料品(酒類・外食を除く)
●週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)
たとえば、コンビニで持ち帰りの弁当を買うときは軽減税率の適用対象ですが、
それをイートインスペースで食べると店内での飲食、
つまり『外食』となるため、軽減税率の対象外となります。
そのため、イートインスペースを利用するかを顧客に確認して会計することになります。
ケータリング、出張料理は適用外ですが、有料老人ホームなど生活の場における
飲食料品の提供や、学校給食法第3条2項に規定する義務教育諸学校において
設備の設置者が行う学校給食は適用対象です。
また、一般書籍、定期購読している週刊誌や月刊誌は軽減税率の対象外です。
週2回以上発行する新聞についても、定期購読契約に基づくものであれば適用対象ですが、
駅売りや電子版などは対象外となります。
おもちゃ付きのお菓子など、食品と食品以外のものが一体となっているものは、
税抜価格が1万円以下であり、食品の占める割合が全体の3分の2以上の場合に限り、適用対象です。
軽減税率対策補助金 賢く利用して早めの対応を!
軽減税率制度が実施されると“複数税率”となるので、
取扱い商品や仕入れに適用される税率に間違いがないか確認する、
帳簿や請求書などは税率を分けて記載しなければならないなど、
業務で対応しなければいけないことが増えます。
課税事業者の方は仕入税額控除を受けるため、
2019年10月1日から2023年9月30日まで、
帳簿と区分記載請求書などを保存しておく必要があります(区分記載請求書等保存方式)。
具体的には、現行制度の帳簿や請求書などへの記載用件に加えて、
『軽減税率の対象品目である旨』、『税率ごとに合計した税込対価額』を記載する必要があります。
先にご紹介したコンビニのように、同じ店舗で8%のものと10%のものを
精算しなくてはならない場合、複数税率に対応したレジや受発注システムの導入、
または改修をしなければならず、準備には費用や時間も多くかかります。
そのため、中小企業や小規模事業者の方々へは、
そういった費用の補助が受けられる2種類の補助金制度があります。
レジの導入費や改修費の支援を目的とした「A型」と、
EDI等電子的受発注システムの導入費や改修費の支援を目的とした「B型」です。
導入・改修費用の額にもより、上限もありますが、
おおよそかかった費用の2分の1から4分の3の補助が受けられます。
申請の受付期間は決まっていますので、早めに確認しましょう。
*消費税軽減税率制度についての対応、会計処理の対応などのご相談はお気軽に斎賀会計事務所へ
ご連絡ください。
ある会社が税務調査の対象になったとき、
その会社の取引先に対して行われるのが『反面調査』。
自社の税務調査で取引先に調査が入るケースもあれば、
逆に相手先の税務調査で自社に調査が入るケースもあります。
取引先との関係を悪化させないためにも、
できれば反面調査となるのは避けたいものですが、
万が一入ることになってしまった場合、
どのような対応が必要となるのでしょうか。
今回は、反面調査を受けた際の対処法、留意点などをご紹介します。
反面調査の対象となるのは、どんなとき?
ある会社に税務署が税務調査に入ることを『本調査』といいますが、
このとき、たとえば非協力的な態度を取ったり、帳簿への記載が不明瞭だったりと、
その会社の帳簿だけでは実態がわからないと判断された場合、
本調査を受けている企業の取引相手にも調査が入ります。これが『反面調査』です。
売上の計上漏れの疑いがある場合は得意先に、
仕入れの計上漏れの疑いがある場合は仕入先に対して反面調査が行われます。
必要に応じて、本調査中の企業の従業員家族、
退職した元従業員やその家族にまで及ぶケースもあります。
税務調査官が本調査で十分な調査ができないと判断すれば、
反面調査が行われる可能性が高くなります。
取引先に迷惑をかけないためにも、普段からの取引資料の整理や正確な帳簿作成が必要です。
もし調査官が来訪したら 落ち着いた対応が肝心
反面調査は本調査とは異なり、事前の通告なく行われることがほとんどです。
これは取引先と事前に口裏を合わせたり、
書類を改ざんしたりするなどの不正行為を防ぐためのものです。
ある日突然、税務調査官が来社し、反面調査する旨を伝えてきたら、
まずはその調査官に対し、
(1)身分証明書の提示(所属、官職名、氏名、生年月日の確認)
(2)反面調査を行う要因になった取引先名と、取引内容の確認
これらを必ず請求し、その上で、調査官が求める資料だけを提出するようにします。
また、税務調査よりあくまでも営業活動が優先されますので、
経理担当者や代表者など、調査に対応できる人物が不在などのやむを得ない事情がある場合は、
延期を申し出ることもできます。
ときには調査官から、本来の反面調査とは無関係の書類を提出するよう求められることもありますが、
その場合は提出しなくても構いません。
反面調査が入ったとしても、取引先が必ずしも不正行為をしているとは限りません。
あわてず、落ち着いて対応することが大切です。
嘘や改ざんは厳禁! 取引先には念のための一報を
反面調査が入ったとき、今後の関係性を維持するという意味でも、
取引先には一報を入れておくのが無難です。
調査官によっては口外を禁止してくるケースもありますが、強制力はありません。
また、調査の延期が決定してから取引先に連絡をした場合で、
実施日までに書類の書き換えや口裏合わせなどを頼まれるようなことがあったら、
断固として断る姿勢が大切なのは言うまでもありません。
反面調査が行われる時点で、調査官は取引自体に一定の不信感を持っているため、
虚偽の資料や回答は見破られる可能性が高く、
また、口裏を合わせた側も『不正加担者』として税務署に記録が残ることになります。
そうなった場合、後々の自社の本調査が厳しいものになることは避けられないでしょう。
なお、反面調査を拒否した場合には、法人税法などの規定により、
1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになります。
反面調査が間接的に強制されていると言われる所以です。
誠実に報告するという心構えで対処すれば、何も問題はありません。
※会社の経理処理・申告・税務調査などお困りごとは、お気軽に斎賀会計事務所へお問い合わせください。
中小企業の経営者ともなれば、ひっきりなしに保険会社
からの営業電話がかかってくることと思います。
保険の営業マンが「これに入れば法人税が節税できます」
との謳い文句ですすめるのが、『法人向け定期保険』。
中には、法人税を4割も減税できるとする
商品もあります。その口上は果たして本当なのでしょうか?
今回は、法人向けの定期保険について詳しくご紹介します。
加入することで節税になる仕組みとは?
ご存知の通り、法人税は会社の収益に法人税率をかけて算出されます。
たとえば資本金が1億円以下の企業で、その年の収益が500万円だった場合、
法人税率が30%であれば、法人税は500万円×0.3で、150万円となります
(実際の法人税率は条件によって変動しますが、ここではわかりやすく30%としています)。
収益が100万円なら法人税は30万円となり、収益が0円なら法人税は0円です。
つまり会社の収益が低ければ低いほど、法人税も安くなります。
この収益を下げるために、保険に加入するという方法があります。
『法人向け定期保険』は、主に経営者や役員が死亡した場合に保険金が支払われるもので、
加入して毎月の保険料を損金として算入することで、
課税所得を減らし、結果的に法人税を減らすことができるというわけです。
保険には、一定の条件を満たすことで全額を経費にできる“全損型”、
半分が経費になる“半損型”、
まったく経費にならない“全額資産計上型”の3通りがあります。
定期保険は、基本的には貯蓄性のない保障目的の掛捨保険であるため、
支払った保険料は損金となります。
ところが保険の種類によっては、支払時に保険料の一部を前払費用として資産計上し
一定期間経過後に損金に算入するものがあるため、
必ずしも支払時に全額が損金となるとは限りません。
そして、定期保険であっても、加入後10年ほどで解約すると
『解約返戻金(かいやくへんれいきん)』を受け取ることができるものもあり、
これが注目を集めています。
つまり、毎月の保険料を支払うことで収益を減らし、
法人税を節税する一方で、その支払っていた保険料は、
高額の解約返戻金という形で戻ってくる仕組みです。
収益として計上される、解約返戻金の落とし穴
ここまで聞くと、すぐにでも全損型の法人向け定期保険に入って
手元の資金を多くしたいと思えてきますが、そこに落とし穴があります。
実は、この解約した際に支払われる『解約返戻金』は、
収益としてカウントされてしまうのです。
つまり、保険に加入してから解約するまでの期間は法人税を節税できたとしても、
解約した際の『解約返戻金』によって、これまで節税してきた法人税と
同等の法人税を解約した年に支払うことになります。
これを『課税の繰り延べ』と呼びます。
たとえば、毎年200万円の保険料を支払い、
5年後に解約すると950万円の『解約返戻金』を受け取れる保険に入ったとします。
法人税率30%として200万円×0.3とすると、1年間の“節税効果”は、60万円。
これを5年続けると、300万円もの節税になります。
しかし解約時に950万円が支払われるので、
これが収益として計上されると950万円×0.3となり、
285万円もの法人税を支払わなければなりません。
結果、5年で300万円を節税し、5年後に支払う法人税が285万円
(支払った保険料のうち資産計上すべき金額がある場合、節税額は減少します)。
こうしてみると、手元に残るお金は案外少ないといえます。
とはいえ、保険の解約時に赤字決算であれば、
結果的に法人税は低くなるので、通常通りに法人税を支払うよりも、
細かい節税にはなるかもしれません。
保険は、本来の意義に基づいた利用を
これら『法人向け定期保険』について、
2018年6月、金融庁は、経営者や役員死亡時の保障を前面に出しながら、
同時に節税のために中途解約を前提としているのは、
商品設計的に本来の保険の趣旨から逸脱しているおそれがあるとして、調査に乗り出しました。
金融庁が指摘する通り、保険は節税するためのものではありません。
経営者や役員が倒れてしまうと、会社の運営上、大きな損害を与えます。
そのための危機回避策として、
万が一の場合の死亡退職金や会社の運転資金に
保険金を充てられるようにとの目的で加入するのが、
正しい保険のあり方といえます。
本来の意味での保険への加入は、リスクヘッジになるだけでなく、
会社運営に必要不可欠な、精神的安定感にもつながっていきます。
未加入の方、既に加入されている方、自身の会社の状況に適したプランを
一考してみることをおすすめします。
*会社の経営状況にベストな保険のご案内は、斎賀会計事務所へお問い合わせください。
経営者が支払う代表的な税金と言えば、
『法人税』『固定資産税』『事業税』『消費税』です。
なかでも消費税は身近な税金としてよく知られていますが、
案外、基本的なことをご存知でない方もおられるのではない
でしょうか?
ここでは、消費税の仕組みや納付が必要なケース、
不要なケースなどについて簡単にご説明します。
消費税納付の基本的な仕組み
消費税とは、消費行為に対してかかる税金のことです。
消費行為とは、消費者が店舗で商品を購入したり、
サービスの提供を受けたりすることを指します。
本来、消費行為があった際は、すぐに税務署に消費税を納税するべきですが、
これは現実的ではありません。
そのため、商品代金に上乗せした消費税を店舗がいったん預かり、
代わりに納付するという仕組みになっているのです。
たとえば、メーカーが原価87円をかけて製品を製造し、
メーカーはこれに消費税を上乗せし、93円で卸売会社に販売し、
6円分の消費税を税務署に納付します。次に卸売会社は、
93円で仕入れた商品を、消費税を上乗せした100円で店舗(小売)に販売し、
小売から徴収した7円分の消費税から、
メーカーに支払った消費税の差額である1円を税務署に納付します。
そして、小売は100円で仕入れた商品を、
消費税を上乗せした108円で消費者に販売し、8円分の消費税から、
卸会社に支払った7円を引いた1円を税務署に納付します。
つまり、『預かった消費税』-『支払った消費税』=納付する消費税、
という計算式となり、「メーカー」が6円、「卸売」が1円、「小売」が1円と
それぞれが分担して消費税を納めることによって、
最終消費者が負担する消費税8円を税務署に納めているというわけです。
消費税の納税義務が免除される場合とは?
原則として、上記の計算式で納付する消費税はされ、
消費税に係る課税売上高が一定金算出額を超えると納税義務が発生します。
しかし、その課税期間の基準期間における課税売上高が
1,000万円以下の小規模事業者については、消費税の納税義務が免除されます。
基準期間における課税売上高とは、
法人の場合は原則として当事業年度の前々事業年度の課税売上高、
個人事業主の場合は前々年の課税売上高をいい、
この間の課税売上高が1,000万円以下である場合には、
『免税事業者』とみなされて税務署への消費税の納付が不要となります。
また、消費税を計算するためには、
売上と仕入、両方の帳簿や請求書などを保存しておかなければならず、
事務処理の負担が増えることになります。
一定規模以下で次の要件をすべて満たす事業者は、
『簡易課税制度』という預かった消費税から、
業種によって決められた一定率を乗じた額を支払った消費税とみなして、
納税額を計算する、簡易な計算方法での算出が認められています。
<簡易課税制度の要件>
●課税事業者
●適用を受けようとする課税期間の前事業年度又は前年に簡易課税制度選択届出書を提出済み
●その課税期間の前々事業年度(法人)又は
前々年(個人事業主)の課税売上高が5,000万円以下であること
*消費税の申告・納付に関わることで不明点や疑問に思うことなどがありましたら、
お気軽に斎賀会計事務所へお問い合わせください。
契約書や領収書などの課税文書に貼る収入印紙は、
記載内容や金額によって印紙税額が決まっています。
切手サイズながら、納税額は200円から40万円を超すものまであるので、
取り扱いには十分注意したいものです。
貼り損じた場合や、収入印紙が不要になった場合でも、
しっかり対処すれば損をすることはありません。
そこで今回、日常的に収入印紙を扱う方はもちろん、
年に数回しか扱わない方も役に立つ、
『誤って貼ってしまった収入印紙の対処方法』をご紹介します。
そもそも収入印紙はなぜ必要?
国税の一種である『印紙税』は、「さまざまな取引において行われる各種書類や資料のやり取り」について課される税金です。
その金額は、書類の種類や記載されている金額に応じて決まります。
この印紙税を納めるために必要なのが『収入印紙』です。
原則として、その書類を作成した人が、
“書類に所定金額の収入印紙を貼りつけて割印を押す”までを担当します。
この作業をすることで、『納税』を済ませたことになります。
印紙税が課される課税文書は、印紙税法で規定されています。
私たちがよく目にするものでは『領収書』『各種の契約書』『約束手形または為替手形』が該当します。
税務調査等で印紙税の未納が発覚した場合、
当初に納付すべき印紙税の金額の3倍に相当する過怠税を納めなければなりません。
しかし、納付を忘れていた場合でも調査を受ける前に、
自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されますので、
還付に限らず“課税文書は税金”という意識をもって、取り扱いには十分注意しましょう。
間違えた収入印紙は還付できる
課税文書に適正金額以上の収入印紙を貼ってしまったり、
不課税文書に収入印紙を貼ってしまったり、ということもあるかと思います。
収入印紙は印紙税のため、他の税金同様に、過剰に納付した税金を『過納金』、
誤って納付した税金を『誤納金』、それらをまとめて『過誤納金』といいます。
印紙税による過誤納金は、課税文書が下記の還付対象であれば還付してもらうことができます。
・不課税文書・非課税文書に収入印紙を貼ってしまった場合
・課税文書に貼りつけた収入印紙が本来の課税金額を超える場合
・損傷、汚染、書損その他の理由により使用する見込みのなくなった場合
ただし、還付を受けたいとする課税文書が破損等で原型をとどめていなかったり、
還付についての確認申請書および過誤納の事実を証するために必要な文書その他の物件を、
すべて備えて納税地の所轄税務署長に提出・提示したときから
5年以上経過している場合は還付が認められないことがあります。
加えて、国の各種手数料の納付に使用された収入印紙は還付されませんので、注意が必要です。
還付手続きの流れと方法
還付手続きは、以下のステップで進みます。
1.印紙税過誤納確認申請書の記入
2.申請書と間違った印紙を貼った文書を税務署に提出(持参もしくは郵送)
3.指定の銀行口座または郵便局を通しての送金
『印紙税過誤納確認申請書』は税務署で入手するか、
国税局のホームページからダウンロードすることができます。
申請書にはさまざまな記載欄がありますが、
国税局のホームページで公開されている『税務署の手引き』P17-18にある
「印紙税過誤納確認(充当)申請書」記載例を参考にしながら記入を進めてください。
申請書と間違った印紙を貼った文書は、持参もしくは郵送にて税務署に提出します。
税務署で確認が終わると、申請書と還付請求対象の文書に税務署の確認印が押されて返送されます。
その後、申請書に記入した口座へ還付金が振り込まれます。
たとえ貼り損じてしまった場合も慌てずに、還付請求を行って適正な納税を行いましょう。
*会社の経理事務等でお困り事があれば、お気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
安倍内閣が掲げた経済政策として発足した所得拡大促進税制。
これは、事業で得た利益を賃上げにより従業員に還元した法人又は個人事業主に対し、
税金を一定額控除する制度のことです。
今回、平成30年度税制改正により、
所得拡大促進税制適用要件の見直しが行われました。
ここでは、所得拡大促進税制の内容をおさらいすると共に、
改正されたポイントにも触れていきます。
所得拡大促進税制とはどんな制度?
所得拡大促進税制とは、従業員の給与を上げる代わりに、
増加した雇用者給与支給額の一定割合を法人税・所得税から控除できる制度です。
この制度の狙いは、その名の通り、
従業員の賃上げを図ることで、個人の所得を拡大させて消費を促進させることにあります。
今回の改正では、さらなる景気の向上を図るため、
賃上げや設備投資に積極的に取り組んできた法人又は個人事業主(特に中小企業者等)への支援措置が強化されました。
平成30年度の主な改正内容とは?
まず、適用期間が2018年4月から2021年3月までと新しくなりました。
また、これまでは賃上げ基準年度が定められていた2012年度および前年度と比較して、
当年度の所得が増加している場合に適用されていたのに対し、
改正後は、前年度と当年度との比較のみとなり、適用対象が拡がりました。
また、設立第1期目は適用できなくなりましたので、注意してください。
主だった適用要件は、下記に規模別に示しています。
〈大企業(資本金1億円以上)〉
・平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から3%以上増加している
・国内設備投資額が減価償却費の総額90%以上である
〈中小企業者等(資本金1億円未満の法人及び個人事業主)〉
・平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から1.5%以上増加している
・設備投資額の要件はなし
どのくらいの減税が受けられる?
これまでは、2012年度比で、法人税・所得税共に給与の増加額の10%まで控除できましたが、
改正後は、前年度比で増加額の15%まで控除できるようになりました。
主だった控除税額は、下記に規模別に示しています。
〈大企業(資本金1億円以上)〉
・控除税額の原則計算は、給与等支給増加額×15%。上積み措置は、
給与等支給増加額×20%(控除上限額は、当期の法人税額の20%)
・上積み措置を受けるための要件として、
教育訓練費(※1)が比較教育訓練費に対して20%以上増加している
〈中小企業者等(資本金1億円未満の法人及び個人事業主)〉
・控除税額の原則計算は、給与等支給増加額×15%。
上積み措置は、給与等支給増加額×25%(控除上限額は、当期の法人税額の20%)
・上積み措置を受けるための要件として、
平均給与等支給額が比較平均給与等支給額から2.5%以上増加している。
また、教育訓練費(※1)が前期の教育訓練費から10%以上増加、
もしくは、経営力向上計画(※2)の認定+経営力向上が確実に行われたものとして証明された、
のいずれかを満たすこと
今回の所得拡大促進税制の改正は、大企業にとって、
増加率が3%になったことや設備投資要件も加わったことでハードルはやや高くなったものの、
引き上げられた控除率や控除上限により企業への効果は大きくなるでしょう。
また、中小企業者等の控除率も大幅にアップしているので、
これまでよりも多くのメリットがあるといえそうです。
※1従業員への教育などを目的として、研修費や通信教育費、セミナー参加費などを会社が負担する費用
※2中小企業が人材育成や財務・コスト管理などの取り組みをまとめたもの。
事業所管大臣に申請し、認定を受けることで、さまざまな支援を受けることが可能になる
*法人税・所得税等税金のご相談はお気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
毎年、“暦年贈与で相続税対策をしていたのに、税務署から名義預金とみなさ
れて相続財産に加えられてしまう”といったケースがあります。
そうなると延滞税や加算税がかかることも……。
では、現金や預金が名義預金とみなされるのはどういったケースなのでしょうか?
名義預金とは?
形式的には相続人が預金口座の名義人であっても、
実質的には被相続人が管理や運用を行っている預金を一般的に『名義預金』と
言います。
名義預金と認定されてしまうと、たとえ相続人に贈与していても、
被相続人の相続財産に加算されてしまいます。
名義預金になる条件とは?
預貯金等の帰属に係る判決(平成21年4月16日東京高裁)によると、
名義預金について、以下の基準を総合考慮して判断するのが相当であるとしました。
・当該財産またはその購入原資の出捐者(しゅつえんしゃ)
・当該財産の管理及び運用の状況
・当該財産から生じる利益の帰属者
・被相続人と当該財産の名義人ならびに当該財産の管理及び運用をする者との関係
・当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯
・贈与の事実の有無
重要なポイントは“口座の管理運用者”が誰なのか
名義預金に関して特に重要なのが“預金を管理しているのは誰か”ということです。
預金管理者によってどう判断が変わるのか、事例を元にご説明します。
(1)財産をもらう人(相続人)が口座を管理している
贈与であることを相続人も認識しており、財産の管理運用も本人が行っている場合では、
名義預金ではなく相続人への贈与と判断される可能性が高くなります。
(2)口座を作成後、途中で相続人が通帳を渡された
この場合も贈与となる可能性の高いケースです。
実際にあった事例では、途中から相続人が預金を
管理していたことや被相続人が出捐者だと特定できなかったことから、
裁判所は相続財産とはいえないと判断したことがあります。
(3)被相続人が口座を管理している
相続人が口座の存在自体を知らず贈与である証拠もないような場合には、
贈与ではなく名義預金とみなされます。
さらにこのような状況で被相続人が亡くなった場合も
同様に名義預金となり、被相続人の財産となります。
名義預金は「知らなかった」では済まされません。
さらに意図的に名義預金を作っていた場合には、
故意に事実を仮装・隠ぺいしたと判断される可能性もあります。
税務署に指摘されて大ごとになる前に、必ず専門家に相談しましょう。
*相続・贈与のご相談はお気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
[相談内容]
当社で新たに『積立年休制』(※1)を導入したところ、早速対象者が出ました。
『積立年休制』を申し出た当人は長距離通勤をしており、
支払う通勤手当は高額に上ります。このような場合に、
通勤手当を支払わないことは可能でしょうか?
[結論]
通勤手当は賃金に含まれるため、長距離通勤者だからといってカットすることは原則
として認められません。
しかし、予め就業規則に定めておいたり、積立年休制だけを別扱いとすることによっ
て、通勤手当をカットするという方法もあります。
年休を取得しても通勤手当は原則支払う
まず、従業員が年休を取得した際に支払う賃金は、以下のいずれかに定めておく必要があります。
(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)標準報酬月額の30分の1(要労使協定)
(1)と(3)は、ともに計算ベースに通勤手当を含むため、通勤手当部分のカットは不可能です。
(2)の賃金については、その定め方によりますが、正社員の通勤手当は定期券相当額を支払うのが一般的です。
なお、定期券額は実際に使用する日数(およびカレンダー上の日数)に関係なく一定です。
“通常の賃金”の額は、労基則25条で定められており、
『月によって定められた賃金は、その金額を月の所定労働日数で除した金額』となります。
しかし、実務的には『通常の出勤をしたものとして取り扱えば足り、
施行規則に定める計算をその都度行う必要はない』とされています(昭27・9・20基発675号)。
つまり、1ヶ月のうち年休で数日間休んでも、通勤手当は全額支払われることになるため、
長距離通勤者だからといってカットは認められません。
就業規則や積立年休制の別扱いで 通勤手当のカットは可能に
以上のように、原則的に通勤手当のカットは認められておりませんが、
予め就業規則に定めておくか、積立年休制だけを別扱いとすることによって、
通勤手当をカットするという方法もあります。
例えば、就業規則において『15日を超えて出勤しない場合には、それ以降、通勤手当を支給しない』などの根拠規定を置いた場合、
『通勤手当を除く所定内労働賃金』が『本来支払われるべき通常の賃金』とみなされ、通勤手当のカットも可能となります。
また、積立年休制は、時効消滅した年休を積み立てる義務はない“法定外”の恩恵的制度といえるため、
『その成立要件・法律効果などは当事者間の取り決めに委ねられる』と解されます(菅野和夫著『労働法』)。
そのため、積立年休制だけを別扱いし、使途を『病気等』に特定したり、
支払う金額も『通勤手当は除く』等の形で定めたりすることができます。
『積立年休制』を導入する場合には、
(1)使途(病気、家族の介護、ボランティア活動など)の制限
(2)上限日数
などを規定化し、いつ何時やむをえない事態が起こっても対処できるように、
予め就業規則の見直しなどを行うことが大切でしょう。
※1 年休の権利は2年で時効消減するが、その消滅した日数を積み立てておき、
病気等の理由があれば時効消減したはずの年休消化を認める制度。法的な義務はない。
*給料支給に伴う事務についてのご相談はお気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
Q. 当社は弁当や総菜の製造・販売をしています。
従業員は10人前後が入れ替わりながら働いている状態です。
フルタイムで働いているパート社員の社会保険を未加入にしたいのですが、
それは可能なのでしょうか?
A. 法人の場合、従業員が1人でもいると強制加入となります。
個人であれば、『従業員数』と『事業の種類』によって判断されます。
事業所が社会保険に加入する基準
事業所が健康保険に加入するかどうかは、以下の3つによって決まります。
●事業の態様(法人・個人)
●従業員数
●事業の種類
法人であれば、従業員が1人でもいれば強制加入となります。
個人の場合、従業員が5人以上であれば強制加入の対象となりますが、
非適用事業であれば加入する必要はありません。
非適用事業とは以下の通りです。
●農業
●牧畜業
●水産養殖業
●漁業
●サービス業(ホテル、旅館、理容、娯楽、スポー
ツ、保養施設などのレジャー産業)
●法務(弁護士、税理士、社会保険労務士など)
●宗教(神社、寺院、教会など)
今回のケースは、弁当や総菜の『製造』と『販売』を行っているので、
強制適用の対象となります。
飲食・料理業が『主なる事業』であれば、保険加入は強制されない
これに対して、飲食・料理業は以下の理由から非適用事業となります。
『料理店・飲食店等は物の販売のみが目的ではなく、
場所の提供、サービス等も含んでおり、
社会通念上も販売業とは区別されている』(昭18・4・5・保発905号)。
一つの事業所で異種の事業が併存的に行われる場合は、
『一つの事業が他の事業に従属附帯するときは、
「主なる事業」と一体的にその適用を決定』します(昭25・11・30保文発3082発)。
『主なる事業』が販売であれば、従業員が5人以上の場合に限り、
社会保険に加入する義務が生じます。
『主なる事業』が飲食店であれば、従業員規模に関係なく非適用事業所として扱われます。
社会保険適用事業所に当たるかどうかわからない等、
社会保険についてのご相談は斎賀会計事務所へお気軽にご連絡ください。
民泊やライドシェアなど、様々なシェアサービスが広まっている昨今。
稼働していない会議室や工場のラインなどを一時的に貸し出す、
新しい形のシェアビジネスも広まってきています。
こういったサービスの『税務上の処理』をどう考えればいいのでしょうか。
今回は、シェアサービスの現状と、税務上の処理についてご紹介します。
空き時間や空き設備を活用したビジネスとは?
自社の会議室を時間で貸し出すことのできる貸会議室サービスの『スペイシー』
多くの企業の会議室は常に埋まっているわけではなく、
時間によっては長く空いてしまうこともあります。
『スペイシー』は、この使われていない空きスペースに目を付け、
スペースに対するニーズが合致した企業同士をマッチングさせ、シェアできるようにしました。
また、ポスターやチラシなどの印刷サービス『ラクスル』は、
全国の中小印刷会社にある未稼働の印刷ラインを活用して、業績を伸ばしてきました。
アパレルの流通サービス『シタテル』は、
Tシャツなどのオリジナル商品を作りたい小規模なアパレルブランドやファッションデザイナーと、
全国の中小縫製工場や生地工場をつなぎました。
このようなシェアサービスが年々広がりを見せており、
ここ数年で一気に広まり定番化したカーシェアリングのように一般化するのではないかと言われています。
減価償却できない『遊休資産』はどうなる?
それでは、これらの設備に関しての税法上の処理はどうなるのでしょうか。
恒久的に使用していて、空いた時間で設備の貸出を行っている場合は、
通常の固定資産とみなされ、減価償却としての損金算入が認められます。
一方、事業目的で設備を導入したものの、何らかの理由によってその設備の使用や稼働を休止している場合、
その設備のことを『遊休資産』と呼びます。
税務上は、この遊休資産について、減価償却としての損金算入は認められていません。
これは税法上、減価償却することのできる条件に、
『事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く』(法人税法2条23号)と定められているためです。
ただし『遊休資産』であっても、その未稼働の時期に適切な維持や補修、
メンテナンスが行われており、いつでも稼働できる状態にある設備については『稼働休止資産』と呼び、
税務上減価償却の対象にすることができます。
不要な設備は『有姿除却』で対応
では、今後使用する見通しがつかない設備は、どのような処理方法を取り得るでしょうか?
この場合は、解体や撤去をしなくても、資産の未償却分を経費とすることができます。
これを『有姿除却(ゆうしじょきゃく)』と言います。
税務上『有姿除却』が認められるには、以下の2つの要件があります。
1、その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
2、特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより、
将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
ただし、これらの要件については、実務上厳格な判断を要するものとされていますので、慎重に対応しましょう。
普段から使っている設備で、空き時間が生じるときは、
シェアサービスで新たな利益を生み出すことができます。
また、今後稼働する予定のない資産は、
『有姿除却』として処理し損金算入することができる可能性があります。
眠ったままにしている会社資産・状況を鑑みながら、適切な判断をしていきましょう。
※減価償却など税務上の処理のご相談は、お気軽に斎賀会計事務所へご連絡ください。
2018年5月30日に国土交通省が発表した
『平成29年度住宅市場動向調査』によると、土地を購入した
注文住宅新築世帯の平均購入資金は4,334万円でした。
なお、住宅を購入するにあたり、子や孫へ住宅購入費用を
援助することもあるでしょう。
そこで活用できるのが
『住宅取得等資金の贈与税の非課税制度』と
『相続時精算課税制度』です。
今回は、2つの制度の違いや注意点についてご紹介します。
『住宅取得等資金の贈与税の非課税制度』とは?
父母や祖父母などの直系尊属から、自宅の新築または増改築などにあてるための資金を
贈与された際に、一定の金額まで贈与税が非課税となる制度です。
なお、『暦年贈与』(※1)や『相続時精算課税制度』と併用して
活用することもできます。
さらに相続開始前3年以内に住宅取得等資金の贈与があったとしても、
相続財産には加算されません。
『相続時精算課税制度』とは?
60歳以上の直系尊属から贈与を受けた場合に、2,500万円まで贈与税を非課税に、
2,500万円を超えた分の20%に贈与税が課税される制度です。
『住宅取得等資金の贈与税の非課税制度』と併用できるなど一見メリットが大きいように思えますが、
節税対策として活用する際には以下の点に注意する必要があります。
【注意点1】
仮に2,000万円を子どもに贈与した場合、
相続時精算課税制度を利用すれば贈与税は課税されません。
しかし、相続時には贈与時の評価額2,000万円が相続財産に組み込まれ、
相続税課税対象となってしまいます。
【注意点2】
相続時精算課税制度を一度利用すると、
同一贈与者からの生前贈与に対して『暦年贈与』を利用することはできません。
ただし、贈与者が異なる場合は『暦年贈与』を活用できます。
【注意点3】
『小規模宅地の特例』(※2)との併用もできません。
仮に、評価額1億円の自宅の土地が小規模宅地に当たる場合、
要件が揃えば相続税の評価額を2,000万円まで下げられることもあります。
しかし、相続時精算課税制度を利用すると、1億円が課税対象額となり、
贈与税額は(1億円-2,500万円)×20%=1,500万円となります。
後々「贈与税は非課税となったけど、相続税で課税された!」ということにならないよう、
非課税制度のリスクをしっかり確認しておくことが大切です。
なお、『住宅取得等資金の贈与税の非課税制度』と『相続時精算課税制度』を適用するには、
必ず申告する 必要があるので注意しましょう。
※1 毎年一定額(1人あたり年間110万円)までの贈与であれば非課税となる制度。
ただし、相続開始前3年以内の相続人に対する贈与には相続税がかかります。
※2 一定の要件を満たした場合、
亡くなった人が自宅として使用していた330㎡までの土地を8割引きで相続できる制度。
*贈与・相続などでお困りごと心配ごとがございましたら、お気軽に斎賀会計事務所へご連絡ください。
平成30年度税制改正で『電子情報処理組織による申告の特例』が創設され、
一定の法人には、法人税と消費税を電子情報処理組織(以下、e-Tax)で
確定申告することが義務づけられました(以下、電子申告の義務化)。
今回は、この『電子申告の義務化』の概要と、
e-Taxのメリットについて解説します。
『電子申告の義務化』の対象企業とは?
財務省が平成30年4月に改定した『行政手続コスト削減のための基本計画』による
と、平成28年度における『法人税申告のオンライン利用率』は79.3%でした。
ただし、資本金が1億円以上の法人の『法人税申告のオンライン利用率』は56.9%に留まっています。
そのため、社会全体のコスト削減や生産性向上などを目的として、
平成30年度税制改正にて『電子申告の義務化』が決定されました。
なお、e-Taxでの申告が義務化される税目・対象法人は以下の通りです。
【対象税目】(※1)
●法人税&地方法人税
●消費税&地方消費税
【対象法人】
(1)法人税&地方法人税
●日本国内に主たる事務所を有する法人のうち、その事業年度開始時において
資本金または出資金の額が1億円を超える法人
●相互会社、投資法人、および特定目的会社
(2)消費税&地方消費税
●(1)の法人+国および地方公共団体
【適用開始日】
平成32年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から適用されます。
将来は中小企業も義務化!?e-Taxを導入するメリットとは
前述の『行政手続コスト削減のための基本計画』では、
“法人税・消費税におけるe-Tax利用率”の今後の目標を、
資本金または出資金の額が1億円を超える法人などは100%、
中小企業でも85%以上と定めています。
さらに、将来的には中小企業にも電子申告の義務化が検討されています。
では、企業がe-Taxを利用することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか?
【電子申告のメリット】
● 税務署への申告書提出に出向く事や郵送の必要がないため、
機密文書を社外に持ち出すリスクや発送コストを軽減できる
●税理士による代理送信も認められるため、
税務担当者の作業効率化や人件費削減が見込め、申告ミスの削減にもつながる
●オフィスからインターネット経由で電子納税が可能
また、本改正により、法人税申告書別表のデータ形式の柔軟化・提出先の一元化など、
電子申告手続きを促進すべく環境整備が進められます。
e-Taxを利用するには事前の手続きが必要ですが、一度導入してしまえば、
法人税などの申告・納税におけるメリットが享受でき、作業効率などが格段にUPする事を見込めます。
将来的には全企業に電子申告の義務化が検討されていることから、
大法人だけでなく中小企業においても、早めにe-Taxの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※1 地方税の法人住民税および法人事業税についても電子申告が義務化されます。
詳しくは各地方公共団体のホームページをご確認ください。
会社の税務申告、電子申告(e-Tax)についてのご相談は、お気軽に斎賀会計事務所までご連絡ください。
会社が資金調達する方法には、株式発行や金融機関からの借り入れの他に、
社債を発行するという方法があります。
株式発行などに比べると手続きが簡単で、
種類によっては無担保で発行できることから、
中小企業などで多く使われている資金調達方法のひとつです。
今回は、この社債のメリットと注意点をご紹介します。
社債の基礎知識と発行のメリット
社債は、
発行することによって投資家から資金を集め、
その投資家に定められた期間利息を支払い、
満期になると元本を返済するというシステムです。
また、株式のように価値が変動することはありません。
社債には、
公に提示して投資家を募集する『公募債』
銀行や証券会社など、法的に認められた適格機関投資家を相手にする『プロ私募債』、
会社の関係者や親族等の縁故者や取引先などの少人数を相手にする『少人数私募債』があります。
少人数私募債には以下のような発行条件があります。
1.社債購入者の募集を50名未満とすること
2.購入者の中に適格機関投資家がいないこと
3.社債総額を最低券面額で割った数が50未満であること
多くの中小企業では、手続きが簡単で担保も不要であり、
償還期限や利率、発行金額が自由に設定できる少人数私募債を発行しています。
また、社債は一般的に銀行からの借り入れよりも利率が低く、
株式のように経営に干渉される心配もありません。
少人数私募債発行で大切な投資家との信頼関係構築方法とは?
社債を発行する場合には、資金調達の目的と用途を明確にし、
借入から償還までの期間の事業計画書や返済計画書を作成する必要があります。
無計画に資金を集めても、有効に活用することができないばかりか、
社債を購入した投資家からの信頼も失いかねません。
また、返済計画がしっかりしていないと、いざ満期になっても「元本を返済する資金がない」ということもありえます。
こうなると投資家からの信頼を完全に失い、次の社債の発行が難しくなる可能性があります。
特に少人数私募債においては、いかに投資家との信頼関係を築くかが重要となります。
発行の際には、投資家にきちんと社債の募集総額や、利率、支払い方法、償還期間や償還方法などを伝え、
さらに事業計画書や財務諸表などの自社情報を積極的に開示しましょう。
また、社債発行時に説明会を開いたり、
社債を発行してからは決算終了後や利息の支払い時に報告会を設けたりするなど、
会社の状態を真摯に投資家に報告して、信頼を重ねていくことが大切です。
社債は中小企業における資金調達の手段として有効であることは間違いありません。
資金調達や社債発行などのご相談は、斎賀会計事務所までお気軽ご連絡ください。
会社設立時には、開業準備や登記のほかにも、
さまざまな手続きを行わなくてはなりません。
そして、その中の一つに“社会保険の加入手続き”があります。
法人を設立した場合は、原則として社長1人であったとしても、
社会保険に加入しなければなりません(※1)。
今回は、起業を考えている、もしくは起業したばかりの方へ向けて、
社会保険の基礎知識をご紹介します。
そもそも社会保険って何?
社会保険とは、主に以下の4種のことを指します。
(1)健康保険
健康保険法に基づき、労働者やその扶養家族が病気やケガをしたり、
または死亡や出産をしたりした場合に必要な給付を行う保険制度。
(2)厚生年金
厚生年金保険法に基づき、国民年金制度に上乗せされる形で、
加入者の老齢、障害、死亡時の保障として年金の給付が行われる保険制度。
(3)雇用保険
雇用保険法に基づき、加入者が失業した際の失業給付や、
労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、
労働者の生活及び雇用の安定を図るための支援を行う保険制度。
なお、社員には原則加入義務がありますが、法人の代表者が加入することはできません。
(4)労災保険
勤務中や通勤中に従業員がケガや病気になった場合、または亡くなられた場合に、
労働者本人やその遺族に対して、必要給付が行われる保険制度。
労働者災害補償保険法に基づき、事業所単位で適用されます。
従業員を雇用した時点で必ず加入しなければなりません。
また、これらに加えて40歳以上の従業員については、介護保険が加わります。
加入義務がある 会社の条件はコレ!
必ず加入しなければならない『強制適用事業所』は以下の通りです。
・株式会社などの法人
・個人事業主で従業員数が5名以上の事業所(※2)
一方、以下の『任意適用事業所』には加入義務がありません。
・従業員が5人未満の個人事業所
・個人事業主が運営する従業員5名以上の事業所のうち、
農林水産業や、理美容業・飲食業など一部のサービス業
任意適用事業所が社会保険に加入する場合は、
常時使用する従業員の半数以上の同意を得た上で、“任意で”加入することになります。
会社が負担する保険料率は 従業員の給料の約15%!
社会保険料は、『標準報酬月額×社会保険料率』により算出します。
そのため、標準報酬月額も社会保険料も従業員の給料の額などによって異なります。
ただし一般的には、会社・従業員が月々負担する保険料率は、
それぞれ“従業員の給料の約15%”とされています。
仮に月収30万円の従業員の場合、月々会社が負担する社会保険料のおよその額は
『300,000円×約0.15%=約45,000円』となります。
従業員数や給料の額により、社会保険料は会社にとって大きな負担となる場合もあるでしょう。
しかしながら、強制適用事業所の場合、社会保険への加入は必須です。
起業を考えている、もしくは起業したばかりの方は、
必ず社会保険料を織り込んだ上で、事業計画を立てていくようにしましょう。
※1 社長の役員報酬が0円、または報酬が保険料を下回る場合は除く。
※2 理美容業・飲食業などのサービス業や、農林水産業などは除く。
起業、事業計画などでお困りのことがあればお気軽に斎賀会計事務所までご連絡ください。
『財務会計』『税務会計』『管理会計』。どれも同じような響きの用語ですが、
それぞれ異なる会計分野を表しており、“会計の目的・用途”が大きく異なります。
今回は『会計にまつわる基礎知識』と題し、これらの会計分野について各用語の違い
や基本的概要などをご説明します。
財務会計とは?
株主・銀行・取引先など外部の利害関係者に対して、
会社の適正な経営成績や財政状態を報告することを目的とした会計です。
基本的に、利益を『収益-費用』で算出し、利害関係者へ開示する損益計算書、
貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書などの財務諸表を作成します。
外部への報告が目的であるため、日本国内または国際ルールに基づき作成しなければ
なりません。
税務会計とは?
国や地方公共団体に対して、税金の計算について正しい申告をすることを目的とした会計です。
基本的に、所得を『益金-損金』で算出し、税務申告のための決算書を作成します。
会社や個人事業の成果をもとに税金の金額を計算して国などに申告するため、
“外部の利害関係者に報告する”という点では財務会計の一種であるといえます。
ただし、会計の目的の違いから、財務会計は“利益の計上”、
税務会計は“損金の計上”を保守的とする考え方がベースになります。
そのため、“導き出される数字が必ずしも一致するわけではない”ということを念頭に置いておきましょう。
管理会計とは?
財務会計や税務会計とは異なり、会社内部で閲覧・分析するための会計です。
一般的に管理会計をもとに“事業計画書”や“中期経営計画書”などを作成するため、
経営方針や事業計画を決める重要な判断材料になりうる会計といえるでしょう。
また、業績評価や目標管理、人事考課などの資料として用いられることもあります。
あくまで社内で利用するため、基本的にその作成方法に規定や制限はありません。
レポート式が多いようですが、その作成目的を明確にし、
社内での作成方法を定めておくとよいでしょう。
外部向けor内部向けで作成内容が大きく異なる!
以上のように、財務会計は『利害関係者への財務状況の開示』、
税務会計は『税務申告』、管理会計は『経営分析や管理』と、
それぞれの目的や用途が異なります。
また、外部向け会計の財務会計と税務会計は、
必ず一定のルールに則り会計情報を作成する必要がありますが、
内部向け会計の管理会計にルールはありません。
そのため、財務会計などを利用し、作成目的に合わせた“経営者が確認したい指標”などを反映させるとよいでしょう。
斎賀会計事務所では、「租税正義の実現」の理念に基づき、信頼性が高い税務、会計等を提供しています。
会社の経理、財務、税務等のご相談はお気軽にご連絡ください。
バブル崩壊後の1990年代~2005年頃にかけ、日本では“就職氷河期”と呼ばれる就職が困難な時期がありました。
そこで今回は、就職氷河期に就職の機会を逃したことなどを理由に、長期にわたって不安定雇用を繰り返す方を正規雇用労働者として雇い入れた事業主に支給される助成金をご紹介します。
特定求職者雇用開発助成金
(長期不安定雇用者雇用開発コース)
■主な支給要件
以下の要件すべてに当てはまる方を、ハローワークなどの紹介により、正規雇用労働者として新たに雇用すること。
(1)雇入れ日時点の満年齢が35歳以上60歳未満の方
(2)雇入れ日の前日から起算して過去10年間に5回以上離職または転職を繰り返している方
(3)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介の時点で失業状態にある方
(4)正規雇用労働者として雇用されることを希望している方
■支給額
雇入れから1年間を支給対象期間として、合計最大60万円が支給されます。
・第1期(雇入れ~6ヵ月):30万円
・第2期(第1期後~6ヵ月):30万円
※大企業の場合は、合計50万円(第1期:25万円、第2期:25万円)を支給。
上記のほかにも『支給対象期間の途中で対象労働者が定年に達する場合は支給対象とならない』など細かな要件があります。
詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
また、労務、税務等のご相談は斎賀会計事務所にて承っております。
役員報酬を、どのように設定していますか?
役員報酬は設定額によって法人税の金額に大きな差が出るため、
多くの経営者にとって頭を悩ませるポイントです。
特に起業したばかりの経営者は、法人税の支払い額を見越したうえで、
資金繰りを考えなければいけません。
役員報酬の金額の目安は、どのくらいなのか?
役員報酬をいくらに設定すると、節税につながるのか?
今回は、そうしたお悩みを解消する、役員報酬の設定についてご説明します。
役員報酬を高くすると資金繰りで困る場合も
役員報酬の金額を決めるときは、多くの場合『役員が受け取る報酬』と
『支払う税金(法人税)』を比較して検討します。
現状の税法では、役員報酬の損金算入額には制限があるからです。
そのため、節税できる範囲(損益算入)で設定する必要があります。
このことを知らずに役員報酬を高額に設定してしまうと、
後々、資金繰りで困ってしまう場合があります。
会社の利益を抑えて法人税の納税額を少なくしようとしても、役員報酬が損金として認められず、
想定以上に法人税が高くなるケースがあるからです。
起業したばかりの経営者の方は、特にこの点に注意するようにしましょう。
なお、現在の税務上で会社の損金として認められている役員報酬は次の通りです。
・定期同額給与
・事前確定届出給与
・利益連動給与
・退職金
・ストックオプション
・使用人部分の給与のうち相当なもの
これらに当てはまらない役員報酬は損金になりません。
また、その役員の職務内容や類似法人の支給状況と照らした場合においても、
職務の対価として相当な金額である必要があります。
社員に支払う給与と比べて、役員報酬には税務上、さまざまな制限があります。
そのため、『役員が受け取る報酬』と『支払う税金(法人税)』を比較して決めることになるのです。
利益を会社と個人でどう分けるかがポイント
法人税などの税金を考慮して役員報酬を設定するとき、事業で得た利益を
『会社』と『個人』でどう分けるかがポイントとなります。
たとえば、利益が1,000万円で役員報酬が500万円の場合、
・会社の利益:1,000万円-500万円=500万円(これに法人税がかかる)
・個人の利益:500万円(これに所得税がかかる)
それぞれの利益や所得金額によって、法人税や所得税の税率が変わりますが、
この税率の差が節税につながります。
法人税は、中小法人の場合、課税所得が800万円を超えると税率が上がるため(約34%)、
会社の利益が800万円超となるかどうかが、役員報酬を設定するときの判断ラインとなります。
所得税は所得控除もあるので一概には言えませんが、
年収600万円であれば20%の税率で収まると考えられるため、
このあたりを一つの目安として考えることができます。
役員報酬は事業年度の初めに決めて、その後特別な事情がない限り、
原則1年間は変更できません。
会社の資金繰りにも影響する大事なものなので、設定する際はよく考えて、決定しましょう。
※ 役員報酬額の検討等でお困りの方はお気軽に斎賀会計事務所へご相談ください。
経営者が支払う代表的な税金と言えば、
『法人税』『固定資産税』『事業税』『消費税』です。
なかでも消費税は身近な税金としてよく知られていますが、
案外、基本的なことをご存知でない方もおられるのではない
でしょうか?
ここでは、消費税の仕組みや納付が必要なケース、
不要なケースなどについて簡単にご説明します。
消費税納付の基本的な仕組み
消費税とは、消費行為に対してかかる税金のことです。
消費行為とは、消費者が店舗で商品を購入したり、
サービスの提供を受けたりすることを指します。
本来、消費行為があった際は、すぐに税務署に消費税を納税するべきですが、
これは現実的ではありません。
そのため、商品代金に上乗せした消費税を店舗がいったん預かり、
代わりに納付するという仕組みになっているのです。
たとえば、メーカーが原価87円をかけて製品を製造し、
メーカーはこれに消費税を上乗せし、93円で卸売会社に販売し、
6円分の消費税を税務署に納付します。次に卸売会社は、
93円で仕入れた商品を、消費税を上乗せした100円で店舗(小売)に販売し、
小売から徴収した7円分の消費税から、
メーカーに支払った消費税の差額である1円を税務署に納付します。
そして、小売は100円で仕入れた商品を、
消費税を上乗せした108円で消費者に販売し、8円分の消費税から、
卸会社に支払った7円を引いた1円を税務署に納付します。
つまり、『預かった消費税』-『支払った消費税』=納付する消費税、
という計算式となり、「メーカー」が6円、「卸売」が1円、「小売」が1円と
それぞれが分担して消費税を納めることによって、
最終消費者が負担する消費税8円を税務署に納めているというわけです。
消費税の納税義務が免除される場合とは?
原則として、上記の計算式で納付する消費税はされ、
消費税に係る課税売上高が一定金算出額を超えると納税義務が発生します。
しかし、その課税期間の基準期間における課税売上高が
1,000万円以下の小規模事業者については、消費税の納税義務が免除されます。
基準期間における課税売上高とは、
法人の場合は原則として当事業年度の前々事業年度の課税売上高、
個人事業主の場合は前々年の課税売上高をいい、
この間の課税売上高が1,000万円以下である場合には、
『免税事業者』とみなされて税務署への消費税の納付が不要となります。
また、消費税を計算するためには、
売上と仕入、両方の帳簿や請求書などを保存しておかなければならず、
事務処理の負担が増えることになります。
一定規模以下で次の要件をすべて満たす事業者は、
『簡易課税制度』という預かった消費税から、
業種によって決められた一定率を乗じた額を支払った消費税とみなして、
納税額を計算する、簡易な計算方法での算出が認められています。
<簡易課税制度の要件>
●課税事業者
●適用を受けようとする課税期間の前事業年度又は前年に簡易課税制度選択届出書を提出済み
●その課税期間の前々事業年度(法人)又は
前々年(個人事業主)の課税売上高が5,000万円以下であること
*消費税の申告・納付に関わることで不明点や疑問に思うことなどがありましたら、
お気軽に斎賀会計事務所へお問い合わせください。
2016年11月に中小企業庁が発表した『事業承継に関する現状と課題について』に
よると、事業承継によって利益率や売上高が増加した企業が多いことがわかりまし
た。今回はこのデータを読み解きつつ、事業承継によって経営状態が回復したある
事例をご紹介します。
事業改革意識が利益率を向上へ導く!?
同資料によると、経営者が55~64歳(2007年度時点)の企業のうち、
2007~2008年度に“経営者が交代した企業”と“交代していない企業”では、
交代した企業の方が経常利益率が高いことが判明。
さらに、2014年まで7年間継続的に調査したとろ、やはり経営者が交代した企業の
方が、交代していない企業よりも経常利益率が平均約1.6倍という結果となりました。
また、“直近3年間で売上高が増加した企業の割合”を経営者の年齢世代別に見てみると、
経営者が30~39歳の企業は51.2%ですが、50~59歳の企業は26.0%、70歳以上の会社は14.4%と、
経営者の年齢が上がるにつれ、売上高は横ばい、もしくは減少していることがわかりました。
この要因としては、高年齢化による投資意欲の減少や、リスク回避傾向の高まりが挙げられています。
しかし、経営者の交代が必ずしも利益率向上をもたらすとは限りません。
事業承継によって経営状態が回復した要因には“思い切った経営革新”があるようです。
事業承継を機に経営改革を行った事例
秋田県のある老舗酒造では、経営者交代をきっかけに“安価な普通酒”から“高品質な清酒”へ製造商品を変更。
伝統にとらわれない経営戦略で収益力の回復に成功しました。
また、神奈川県のある精密板金加工業者では、経営者交代を機に“顧客の依頼を待つ社風”を一新。
インターネットの活用やワークショップの開催を通し、自社の技術力を社会に発信する戦略を取り、
医療・航空・宇宙分野へ進出を遂げています。
早期の事業承継が利益向上への第一歩!
事業承継には、株式や事業用資産の移転など、様々な調整や手続きが必要です。
しかし、同資料内の『代表者の年齢別にみた事業承継の準備状況』によると、60~80代の経営者の約半数が“
事業承継の準備を始めていない”という結果が出ています。
事業承継の準備期間の目安は5~10年といわれているため、できるだけ早い段階から準備を進めるようにしましょう。
後継者問題についてお困りのことがあれば、ぜひ一度斎賀会計事務所へご相談ください。
裁判所が発表した『司法統計年報(平成27版)』によると、遺産相続トラブルは年々増加しています。
また、同資料の『遺産総額別遺産分割事件の内、容認・調停が成立した件数』を見ると、遺産分割事件の76%が遺産額5,000万円以下だということが分かりました。
今回は、ある事例をもとに、相続争いを防止する3つの基本的な対策を見ていきましょう。
事 例
Aさんには3人の子どもがいます。
長女と次女は結婚し、都内のマンションで暮らしていますが、三女とは同居中です。なお、Aさんの配偶者(ご主人)はすでに他界しています。
自宅や預貯金などを巡って相続争いが起こらないために、Aさんは生前に何をしておくべきなのでしょうか?
1. 相続財産を調査する
まずは、自分の資産について“何がどれくらいあるか”を調べましょう。
相続財産に含まれる資産は以下の通りです。
【プラスの財産】
●土地や建物などの不動産や貸付金などの債権
●現金や預貯金、小切手などの有価証券
●自動車や貴金属などの動産 など
【マイナスの財産】
●借金や住宅ローン、未払いの税金など
なお相続では、一般的に土地の評価は『路線価』、建物の評価は『固定資産税評価額』を用いて算出します。
相続財産に不動産が含まれる場合は、相続トラブルが発生する確率が非常に高いので、必ず次項以降の対策を講じるようにしましょう。
2. 遺言書を作成しよう
遺産相続トラブルを防止する対策としては、“誰が何をどれだけ受け取るか”を明記できる遺言書の作成が有効です。
なお、遺言書には以下の3種類があります(船舶事故など、特別方式の遺言書は除く)
(1)自筆証書遺言:財産所有者自ら作成する遺言書
(2)公正証書遺言:公証役場の人と共同で作成する遺言書
(3)秘密証書遺言:遺言内容は秘密にしつつ、公証人と証人2人以上に遺言書の存在を証明してもらう遺言書
(1)と(3)は“自書、押印されていない”など、形式に不備があると無効になってしまいます。
そのため、効力の確実性に優れた『公正証書遺言』で作成するとよいでしょう。
また、遺言内容を実行する“遺言執行者”を選任しておくと、不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどの遺産相続手続きをしてくれます。
なお、遺言執行者は弁護士などの公正な第三者を指定するとなお良いでしょう。
また、遺言書の内容によってはトラブルの原因となる可能性もあります。
“相続トラルの防止策”としての役割を果たすためには、“遺留分(※1)”を考慮した上で、資産が相続人全員に配慮する必要があります。
仮に、この遺留分を侵害(※2)する内容を記していた場合、相続トラブルに発展し、遺留分減殺請求(※3)に発展する可能性もあるので注意が必要です。
相続人同士のトラブルを避けたいのであれば、必ず遺留分を考慮した上で遺言書を作成するようにしましょう。
3. 生命保険への加入も有効
今回のケースのように相続人が複数人いて、なおかつ“主な財産が不動産だけ”という場合は、遺留分に相当するほかの遺産や現金を残さなくてはなりません。
そこで、相続分割の不平等を解消するために、生命保険金を活用することも一つの方法です。
なお、生命保険金は民法上、受取人固有の財産とされています。
そのため、原則として遺産分割の対象にはなりません。さらに『500万円×法定相続人の数』までは相続税が非課税となります。
今回は、相続対策の基本的な概要をご紹介しました。
ご紹介した内容以外にも、さまざまな相続トラブル防止策や細かな注意点があります。
相続についてご心配なことがありましたら、斎賀会計事務所へお気軽にご相談ください。
※1 本来、被相続人の財産は、被相続人の意思に基づき遺言や贈与によって財産を自由に処分できるとされています。
ただし、完全に自由な処分を認めてしまうと、全く相続できない相続人がでてきてしまう恐れがあるため、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人は、財産のうち、ある一定割合を相続できる権利が与えられています。
※2 遺留分(相続財産のうち、決められた一定の割合を相続する権利)を侵害されること。つまり、相続額が遺留分の金額に満たないこと。
※3 遺留分を侵害している相続人に、遺留分の額をもらえるよう請求すること。
なお、遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害されていることが分かった日から1年以内または、相続が開始されてから10年以内に行う必要があります。
近年、“ワーク・ライフ・バランス”の実現が重要視されています。
そこで今回は、残業時間削減に取り組む中小企業を支援する助成金をご紹介します。
時間外労働等改善助成金
(時間外労働上限設定コース)
時間外労働の上限設定に取り組む中小企業事業主に対し、
その実施に要した費用の一部が助成されます。
<対象となる事業主>
平成28年度または平成29年度において『労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準』
に規定する限度時間を超える内容の時間外・休日労働に関する協定(特別条項を設定した協定)を
締結している事業場を有する中小企業事業主。
なお、当該時間外労働および休日労働を複数月行った労働者(単月に複数名行った場合も可)がいる必要があります。
<対象となる取組>
以下のいずれか1つ以上を実施すること。
(1) 労務管理担当者に対する研修(※1)
(2) 労働者に対する研修(※1)、周知・啓発
(3) 外部専門家によるコンサルティング
(4) 就業規則・労使協定等の作成・変更
(5) 人材確保に向けた取組
(6) 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(※2)
(7) テレワーク用通信機器の導入・更新(※2)
(8) 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(※2)
(※1)研修には、業務研修も含みます。
(※2)原則として、パソコン、タブレット、スマートフォンは対象外。
<成果目標>
平成30年度または平成31年度に有効な36協定の延長する労働時間数を短縮して、
以下のいずれかの上限設定を行い、労働基準監督署へ届出を行うこと。
(ア)時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
(イ)時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
(ウ)時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数および法定休日における
労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定
<支給額>
成果目標の達成状況に応じ、以下のいずれか低い方の額が支給されます。
a : 1企業当たりの上限200万円
b : 目標ごとの上限額(表1)および休日加算額(表2)の合計額
c : 対象経費の合計額×補助率4分の3(※3)
(※3)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組のうち(6)~(8)を実施する場合。
なお、所要額が30万円を超える場合の補助率は5分の4とする。
助成金の申請については、当事務所にご相談ください。
【相談内容】
当社はIT関連事業を展開しています。
先日、同業者が集まって話をした際、エンジニアと業務委託契約を結んで仕事を発注している会社が多い印象を受けました。
「労働基準法の制約を受けないから、業務委託契約がおすすめ!」という経営者もいたのですが、労働契約と業務委託契約では、どちらがいいのでしょうか?
【結論】
どちらもメリットやデメリット、リスクがあります。
未経験者などを雇って育てていきたいのか、すでにスキルのある人に仕事を依頼したいのか、自社の方針と照らし合わせて選択するとよいでしょう。
労働契約と業務委託契約
何が違うの?
労働契約とは、
『労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約』とされています(労働契約法6条)。
つまり、社員やパートタイマーなどの労働者が、使用者の指揮命令のもとで労務を提供し、その対価として賃金が支払われる契約のことを指します。
一方、業務委託契約は使用者と対等の立場で業務の依頼を受け、その役務の提供(完成品の納品など)をもって対価を支払われる働き方です。
労働契約とは違い、使用者の指揮命令を受けることはありません。
労働契約と業務委託契約の“働き方”の最大の違いは、“使用者の指揮命令を受けるか否か”ということになるでしょう。
また、労働契約と業務委託契約のもう一つの大きな違いは、“使用者責任が生じるか否か”ということです。
具体的には、業務委託契約を締結した場合、原則として企業は以下の事項について労働法令上の使用者責任を負う必要はありません。
・健康保険や雇用保険などの社会保険料の負担
・法定労働時間を超える場合の割増賃金の支払い
・年次有給休暇の付与
・最低賃金の適用
・労働災害による負担や企業責任 など
つまり、上記の事項を行う義務はないのです。
この条件を見ると、業務委託契約の方が使用者としてのメリットが多いと感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、業務委託契約にはリスクもあります。
業務委託のつもりが……
契約内容や実態に要注意!
業務委託契約のメリットは、“必要なスキルを身につけている人に仕事を頼めること”と
“使用者責任がないこと”が大きいでしょう。
しかし一方で、指揮命令をすることができないため、
個人にそれ相応のスキルが備わっており、
指示を受けなくても個人の裁量で仕事を完遂できる人と
契約をする必要があります。
また、業務委託契約を締結していたつもりでも、
税務調査で労働契約だと判断されてしまった場合には、
以下のような多額の納税が発生するので注意が必要です。
(1)源泉所得税の徴収漏れによる、追加徴税
(2)控除されていた仕入消費税分の追徴課税
(3)過少申告加算税・不納付加算税・延滞税 など
労働契約か業務委託契約かについては、以下の基準などを総合的に見て判断されます。(下記、別表参照)
あくまでも書面上の形式的な基準ではなく、実際の働き具合を加味して判断されるので、ご注意ください。
スキルが必要な業務について労働契約と業務委託契約のどちらを選択するかは、
“即戦力を必要としているのか否か”など、
自社の求める人材や雇用条件などと照らし合わせて考えるとよいでしょう。
雇用問題に関してお悩みをお持ちの方は、当事務所へご相談ください。
最近は、視察と観光を兼ねた“海外視察ツアー”を行う会社が増えてきているようです。
本来、視察と観光とでは支出する費用の目的が異なります。
では、観光を兼ねた海外渡航費は、どのように処理をすべきなのでしょか?
海外渡航費用を 業務と観光で区別しよう
海外へ視察や出張に行く際、ついでに観光することもあるでしょう。
観光を兼ねた海外視察費などの扱いについて、 国税庁では以下のように定めています。
『その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によりあん分し、
法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与とする』
つまり、海外渡航費用の税務上の取扱いは、その目的と内容により異なりますが、
原則として『業務に関連する部分は“旅費”』、
会社が負担した『観光に関する部分はその役員等の“給与”』とされます。
また、視察を行った場所が、得意先など外部者の場合には"交際費"とされます。
“業務従事割合”を算出する
海外渡航費の旅費としての“損金算入額”または“必要経費算入額”を計算するには、
旅行日程を業務と観光とで分ける必要があります。
日数の区分については、昼間の通常業務時間(約8時間)を1.0日として、おおむね0.25日単位で日数を割り出します。
そして、その日数を以下の式に当てはめて“業務従事割合”を算出しましょう。
『視察などの業務に従事した日数』÷(『視察などの業務に従事した日数』+『観光した日数』)=業務従事割合
この業務従事割合が50%以上であれば、“海外渡航が業務遂行上必要である”といえるため、
『飛行機の往復運賃&その他の旅行に要する費用に、業務従事割合を乗じた金額』が旅費として認められます。
行程表や領収書など 証明できるものを保管しておく!
下記に該当するものは、原則として“業務に関連するものではない”とされています。
(1)観光渡航の許可を得て行う旅行
(2)旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行
(3)同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの
ただし、実務上、わざわざ就労ビザを取得せず、観光ビザで行く場合も多いでしょう。
そのため、業務への関連性があることをきちんと説明できれば、旅費としての計上は可能だと考えられます。
また、役員が親族または業務に常時従事していない者を同伴した場合、
会社が負担した同伴者の旅費については、特別な場合を除き“同伴させた役員等の給与”とされます。
海外渡航費は税務調査の際に必ずと言っていいほど確認される項目です。
業務上必要か否か&同伴者はいるか否かなどは“旅行会社などによる行程表や移動・宿泊・飲食関連の領収書など”をもとに確認されます。
そのため、しっかりと保管・記録しておくことが大切です。
海外出張費の計上方法についてお困りのことがあれば、当事務所へご相談ください。
近年、個人が自宅の一部などを旅行者に貸し出す“民泊”が注目を集めています。
これを受け、2018年6月15日に『住宅宿泊事業法(民泊新法)』が施行される予定です。
これまで、民泊を営業するには“旅館業法に基づく簡易宿泊の営業許可”や“特区民泊の認定”などが必要でしたが、民泊新法の施行により条件や手続きが簡易化されます。
今回は、民泊を副業とする際の利点と注意点について、ご説明します。
従来より民泊営業の基準が緩和!
民泊とは、自宅(戸建て・マンション)や別荘の一室を有料で貸し出すサービスのことで、Airbnb(エア・ビー・アンドビー)などの仲介サービスが普及したことにより、徐々に一般化してきました。
今後、民泊新法が施行されることにより、従来よりも比較的簡単な届出手続きで民泊営業を始めることができます。
2020年の東京オリンピックに向けて、訪日外国人観光客の増加による宿泊施設の不足や、空き家問題の解決手段として、政府も大きな期待を寄せています。
なお、民泊新法による民泊許認可の主な要件は、以下の通りです。
・施設が住宅(※1)であること
・施設内に台所・浴室・便所・洗面設備があること(※2)
・所定の書類(※3)が添付されていること
従来より届出などの要件が緩和され、大がかりな改修を行わなくても、一般的な住宅で民泊営業を始めることができるようになりました。
今後は、空き室や空き家を活用し、民泊を副業とする人が増えてくるかもしれません。
※1 貸主が居住している家屋だけでなく、空き家・空き室・別荘も含まれます。
※2 居室ごとになくても、届出住宅全体の中に上記設備があればOKです。
※3 賃貸物件の場合は“施設の図面や転貸が承認されていること”を示す書面。分譲マンションの場合は管理規約など。
“所得の種類”に注意!
いわゆるサラリーマンが副業として民泊営業を行った場合、会社の年末調整だけでなく、原則として(※4)自分で確定申告を行う必要があります。
なお、民泊営業を確定申告する際に、最も注意すべきポイントが“所得の区分”です。
一般的に“空き家や部屋を貸し出す”といえば不動産所得を思い浮かべるでしょう。
しかし国税庁によると、民泊は『一般的に、利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供等を伴うものですので、単なる不動産賃貸とは異なり、その所得は、不動産所得ではなく、雑所得に該当します』と定義されています。
そのため、基本的に“雑所得”として確定申告を行います。
所得金額の計算方法について“収入から経費を差し引く”という点では、不動産所得と雑所得に違いはありませんが、以下の点が大きく異なります。
・青色申告者となったときの青色申告特別控除額の適用有無
・赤字になった場合、他の所得との通算の有無
2項目とも、雑所得の場合には“適用できない”規定ですので、注意しましょう。
また、民泊は通常、一時的または単発的に宿泊施設を提供する性質があります。
しかし、一定の規模以上で反復性・継続性・対価性をもって民泊を営業する場合は、“事業所得”となる可能性があるため、注意が必要です。
ただし、仮にサラリーマンが1室のみの民泊営業を行った場合は“雑所得”と考えるのが適切でしょう。
なお、民泊営業においては、以下のものなどが必要経費に該当すると考えられます。
・固定資産税、家賃または減価償却費、ローン利息、損害保険料
・仲介サービス業者に支払う手数料
・ガス代、水道代、電気代などの光熱費
・民泊用の電話回線やインターネット回線などの通信費
・宿泊者用の家具・寝具などの購入費
民泊営業による確定申告に不安がある場合は、当事務所へご相談ください。
※4 給与所得以外に年間20万円以上の所得(=収入から必要経費を差し引いた金額)を得た場合、確定申告を行う必要があります。
「愛する家族にお金を残してあげたい」と、配偶者や子、孫の名義で預金口座を作って、預金をその口座に移し変えている方は珍しくありません。
しかし、その方が亡くなった後、税務調査によりその財産が亡くなった方のものだとみなされれば、相続の課税対象となります。このような預金を“名義預金”といいます。
今回は、その名義預金について解説していきます。
名義預金とみなされた場合は 課税対象に!
預金口座の名義が配偶者や子、孫などになっていても、実質的には 名義とは別の方が管理している“名義預金”。
税務調査では相続財産の申告漏 れを防ぐため、亡くなった人(被相続人)の名義ではない財産でも、実質的 に被相続人が管理していた財産ではないか、ということをチェックします。
そして、名義預金とみなされた場合は相続税が課税されてしまいます。
名義預金かどうかの 判断基準はどこに?
預金が名義預金かどうかの判断基 準は次の通りです。
●通帳・印鑑の管理は誰が行っていたか
●預金の原資は誰が負担していたか
●受取利息は誰が費消していたか
●贈与税の申告をしているかどうか
つまり「通帳や印鑑の保管場所を、預金の名義人本人が把握していない」「名義人本人が口座の存在を知らない」という場合は、すぐに名義預金と疑われ、預金を管理していた人の財産として扱われます。
また、妻や子供などの名義になっ ている預金は、どこから入金されているかが重要です。
被相続人の口座 からそのまま振り替えられていると、 名義預金とみなされる可能性が高くなります。
妻や子供、孫などに収入がない場合、預金残高が増える理由は、夫 (父)からの贈与によるものが多いです。 この場合、贈与税の申告がなされ ていないと、名義預金と疑われてし まうかもしれません。
では、税務署から名義預金だと思わ れないためには、どうすればよいので しょうか?
名義預金とみなされないための 対策例
まず、配偶者や親などの親族から、 見知らぬ自分名義の口座を知らされた方は、“通帳と印鑑を自分で管理 するようにする”、“自分の口座なので、自由に引き出してお金を利用する”と いった対策が有効です。
ただし、通帳に110万円を越える預金があり、名義預金とみなされないよう通帳と印鑑を口座名義人に渡した場合、その場で預金額を一括贈与したと判断される場合もあります。
また、配偶者や子供、孫などの名義で口座を作っている方は、“適当な タイミングで本人に預金の管理を任せる”、“毎年110万円以内の贈与ではなく、ある年にはいくらか基礎控除額を上回る贈与をして、翌年贈与税の申告をして少額でも贈与税を払ってもらう”といった対策が有効でしょう。
子供が未成年である場合の法定代理人との関連にも注意しなければいけません。
相続や贈与についてご不明点が あれば、お気軽にご相談ください。
今回は試用期間中の従業員の扱いについてご紹介します。前回は、試用期間中の従業員を解雇するには“勤務態度が極めて悪い”などの“正当な理由”が必要だとお伝えしました。
今回は、試用期間中の減額について注意点を確認していきましょう。
就業規則などに規定しておけば減額可能
“試用期間”とは、従業員の勤務態度・能力・スキルなどから本採用するかどうかを判断するために設ける“お試しの雇用期間”のことです。一般的には3~6か月の期間とする会社が多いようです。試用期間中の給料については、都道府県別に決められている最低賃金を下回らない範囲であれば、原則として会社が自由に決められます。ただし、就業規則や雇用契約書に必ずその旨を明記し、従業員も合意の上で給料を設定することが必要です。
最低賃金は2種類存在する
最低賃金には、各都道府県で定められた『地域別最低賃金』と、特定の産業に定められた『特定最低賃金』の2種類があります。
『地域別最低賃金』とは、産業や職種に関係なく、各都道府県で働くすべての労働者とその会社(使用者)に対して適用される最低賃金です。金額は各都道府県で定められており、正社員・契約社員・派遣社員・臨時・嘱託・パート・アルバイトなどの雇用形態を問わずすべての労働省に適用されます。
一方『特定最低賃金』は、地域別最低賃金よりも高い水準の最低賃金を定める必要があると認められた“特定地域内の特定産業”(平成29年4月1日の時点で全国233件)について設定されています。なお、これらの金額は厚生労働省のホームページで確認することが可能です。
給料の減額・解雇は就業規則への明記が必要
試用期間中の減額については、『最低賃金を下回らないこと』・『従業員との合意による賃金の設定』・『就業規則や雇用契約書への明記』・『試用期間が社会通念上妥当な期間を超過しないこと』などの要件を満たす必要があります。なお、前回お伝えしたように、従業員の勤務態度や能力に問題があり試用期間中に解雇をしたい場合も、就業規則への明示が必要です。試用期間中といっても、自由に減給や解雇ができるわけではないので注意しましょう。
常時50名以上の従業員を使用する事業場には、産業医の選任が義務付けられています。
一方、従業員数50名未満の事業場については、産業医の選任義務はありませんが、『医師などに従業員の健康管理を行わせるよう努めなければならない』とされています。
そのため、選任義務はなくても、従業員の心身の健康を管理するために産業医を配置する中小企業も増えてきています。
今回は、従業員数50人未満の事業所が産業医を選任し、実際に産業医活動を行った際にもらえる『小規模事業場産業医活動助成金』をご紹介します。
そもそも産業医とは?
“従業員が健康的に働ける環境づくり”をサポートするため、事業場の健康管理などについて専門的な立場から指導・助言を行う医師のことを“産業医”といいます。
一般的に産業医の雇用形態は、“専属産業医”と“嘱託産業医”の2種類に大きく分けられます。
・専属産業医:当該事業場のみに属し、最低週3日・1日3時間以上の勤務を行う産業医
・嘱託産業医:月1回、また企業によっては週1回などのペースで嘱託として働く産業医
労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられており、従業員数が常時50名以上であれば産業医の選任義務が生じます。
さらに従業員数が常時1,000名以上の事業場は、専属産業医を選任する必要があります。
なお、従業員数が常時1,000名未満の事業所においては、嘱託産業医を選任する会社が多いようです。
産業医は以下のいずれかの方法で探すことができます。
1. 地域医師会に紹介を依頼する
2. 健康診断を実施しているクリニックに紹介を依頼する
3. 社長、役員の知り合いに依頼する
4. 業務委託会社(紹介会社)に依頼する
では、今回ご紹介する“産業医選任義務のない事業場が産業医を導入した際にもらえる助成金”について、具体的に見ていきましょう。
小規模事業場産業医活動助成金
【概要】
小規模事業場が産業医の要件(※1)を備えた医師と産業医活動の全部または一部を実施する契約を締結し、産業医活動を実施した場合に実費の助成を受けることができます。
※1 産業医の要件:産業医には、以下のいずれかの要件を満たした医師を選任しなくてはなりません。
(A)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会・産業医科大学)が行う研修を修了した者
(B)産業医の養成課程を設置している産業医科大学やその他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を収めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
(C)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
(D)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授・准教授・常勤講師またはこれらの経験者
【支給要件】
助成金の届出前に、以下の要件すべてを満たしている必要があります。
① 小規模事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)であること
② 労働保険の適用事業場であること
③ 平成29年度以降、産業医と職場巡視・健診異常所見者に関する意見聴取・保健指導産業医活動の全部または一部を実施する契約を新たに締結していること
④ 産業医活動を実施していること
【助成金額】
一事業場につき半年あたり10万円を上限とし、将来にわたって2回限り支給されます(産業医活動に係る実施費用に対してのみ助成)。
【受給までの流れ】
(1) 産業医と契約をする(契約内容は、支給要件の③を参照)
↓
(2) 契約に基づいた産業医活動を実施する
↓
(3) 産業医に対し、報酬を支払う
↓
(4) 産業医活動を開始して半年後に、助成金の支給申請を行う
助成金の支給申請には“継続する半年の間に産業医へ支払った費用”の領収書を添付します。
なお、申請は“領収書の最終月”の翌月から半年以内に行う必要があります。
※この内容は平成29年度のものです。平成30年度の実施・詳細については現在検討されており、実施の際には、当該助成金のホームページに掲載される予定です。
助成金申請のサポートも当事務所で行なっております。お気軽にご相談ください。
ビジネスをしていると同業者団体や組合などに加入が必要なことがあります。
例えば、同じ業界での親睦や地位向上、技術向上のため、付き合いで、ということもあるでしょう。
こういった団体に所属した際の年会費や入会金の請求書を見ると、『消費税不課税』などと書いてあり、消費税分は請求されていないことがあります。
クレジットカードの年会費などは当然のように消費税がかかっているのに、なぜこの場合は不課税なのでしょうか?その境目をお話します。
なぜ業界団体などの年会費は消費税が課税されないのか?
クレジットカードの年会費には消費税が課税され、団体への年会費には消費税が課税されない、この違いは、その取引の性質が異なることで生まれています。
消費税は本来、商品やサービスを提供した対価性がある場合に課税されるものです。
ところが、業界団体や組合などの年会費は、その団体や組合を運営するために充てられるため、一般的にそのような年会費は対価性のある取引ではないとされ、消費税は課税されません(消費税基本通達11-2-6)。
まずは事務局からの通知の有無で判断
では、自分が支払っている会費が運営のための会費かどうかの判断は、どのようにすればよいのでしょうか?
基本的には、業界団体や組合などが発行する請求書などの『消費税は不課税』『消費税課税対象外』の記載で判断することが最も妥当な方法でしょう。
課税対象になる2つのケース
課税対象になるのは下記、2つの場合です。
1.通常会費でかつ対価性があるかないかの判断が困難なもので、事務局からの請求書に『消費税は不課税』『消費税課税対象外』といった記載がない場合
基本的に課税仕入れとして処理をします。
なぜなら、業界団体や組合などが請求する会費が課税仕入れに該当するかどうか判断しかねる場合には、事務局や本部などから会員に通知をしなければならないと規定されているからです。
『消費税基本通達5-5-3』
「資産譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な会費、組合費等について、この通達を適用して資産の譲渡等の対価に該当しないものとする場合には、同業者団体、組合等はその旨を構成員に通知するものとする」
2.レジャー施設などの入会金の場合
ゴルフクラブ、宿泊施設、体育施設、遊戯施設、その他のレジャー施設を利用するための会員となる入会金(脱退などで返還されないもの)は、明らかにサービスの提供による対価を得ていると考えられるので、課税対象となります。
業界団体や組合などの年会費が課税されるかどうかは、事務局や本部などからの通知があるかどうかで判断することができます。
不安な場合は事務局や本部などに問い合わせると良いでしょう。
65歳以上の高齢者の4人に1人は、認知症及びその予備軍になると言われています。もし自分の親が認知症になった時、遺産分割はどうするのか?一つ間違えば、“争続”の原因にもなりかねません。
そこで注目されているのが『民事信託』という制度です。
今回はこの制度を紹介します。
民事信託とは?
民事信託とは、簡潔に言うと、家族や親族に親の財産の管理を任せる制度のことです。
自筆証書遺言の場合、原則としては親の財産を把握することもできませんし、誰にどのように分配されるのかは親が亡くなった後にしかわかりません。また、遺言によって分割される遺産の運用実態も把握することができません。
しかし、民事信託であれば、親が生存している時から2代、3代、その先まで、設定した信託目的や信託契約内容に基づき、受託者による財産の管理運用ができる、というのが特徴です。
オーダーメイドの民事信託
民事信託は家族構成やその目的によって内容が異なるため、全てオーダーメイドとなります。司法書士や専門家などが民事信託の構成を考え、費用は数十万円から可能です。
民事信託を利用する場合、まず専門家が親の財産について聞き取り調査をします。そこで作成された財産目録をもとに、家族や親族が集まって、財産運用から相続に至るまで、その家族の実情に合わせた信託契約書を作成します。そして、相続人である子どもなどが親の財産を管理することになります。
親の介護費用や生活費は子どもたちが管理している信託財産から供出。相続が発生したときは、生前に作成した信託契約書通りに遺産分割が行われるのです。
生前に財産の運用から、遺産分割、場合によってはその先の相続まで家族が納得した状態で進められるので、相続がスタートしても争いになりません。
認知症の対策にもなる
例えば、親が認知症になったとします。その場合、成年後見人を立てれば財産の処分は可能ですが、活用はできません。しかし、民事信託を利用して、子どもが親の財産の管理を委託されていれば、信託契約の目的通りに財産運用も可能です。
争いを避けるための民事信託制度。ぜひ、利用してみませんか?
相続対策や相続税の申告など、お悩みがありましたら当事務所へお気軽にご相談ください。
会社が新たに従業員を雇う際、その資質や能力、勤務態度などを見極めるため、試用期間を設けることは珍しくないでしょう。仮に、試用期間中に従業員の勤務態度や能力に問題があると判明した場合、その従業員を解雇することは可能なのでしょうか?
今回は、試用期間中の解雇についての留意事項をご説明します。
試用期間中の解雇が認められる事由とは?
“試用期間”とは、“お試しの雇用期間”のことで、新たな人材を採用する際、実際の業務を通して、その従業員の勤務態度・能力・スキルなどから本採用するかどうかを判断するために設けられます。
そのため、試用期間中に従業員として不適格であると認められた場合は、労働契約を解除することができます。ただし正当な事由がなければ、会社側が一方的に本採用の取り消しを行うことはできません。
では、“正当な事由”とは一体どのようなことを指すのでしょうか?
過去の判例で試用期間中の解雇の相当性が認められた事由は、下記の通りです。
● 勤務態度が極めて悪い場合
● 正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返す場合
● 経歴詐称があった場合
実は、その社員の能力やスキルの不足という曖昧な理由による解雇は難しく、不当解雇とみなされる可能性が高いです。
本採用の取り止めについては“社会通念上妥当である”と考えられるような、客観的かつ合理的な理由が必要になるのです。
また、不当な理由による本採用の取り止めについては、『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』(労働契約法第16条)が適用となる可能性があります。
就業規則への明示が重要
たとえば、試用期間中に遅刻が多かったり、勤務態度が悪い社員の本採用を取り止めにする場合は、就業規則に『試用期間中の従業員が勤務態度の不良などで会社が従業員として不適格と判断した時には解雇する』などの記載をしておくことが必要になります。
いくら勤務態度が悪くても、条件提示がないまま本採用を取り止めにすることはできません。前述したように、試用期間中の本採用への取り止めは、解雇と同様に解釈されるため、解雇予告が必要になるケースもあります。
解雇予告が必要なケースは、試用期間が14日を超える場合です。仮に試用期間が3カ月ある場合には、本採用を取り止めるために、少なくとも30日前に解雇予告をするか、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
態度が悪かったり、著しく能力が不足している従業員を雇い続けると、会社への損失につながりかねません。そうならないような対策は予め講じておきましょう。
配偶者や子供への財産譲渡は生前の相続対策としてもよく利用されます。
贈与の場合には原則として贈与税が課せられますので、高額財産についてはあまり現実的ではないかもしれません。
そこで、親族間で土地等を移転する場合、売買とするのはよくあるケースです。
ただし、注意しないと税務署から指摘を受け、思わぬ税負担を課されることがあります。
今回は、親族間の譲渡で気をつけておくべきポイントをご紹介します。
親族間の譲渡で贈与税が課税されるケースとは?
時価3,000万円相当の土地を所有しているAさんが、自分の土地を子供に1,000万円で売却しました。
土地の売却価額は、子供の負担を考えて算出したため、結果的に時価よりもかなり低い価額での譲渡となりました。
ところが、今回の譲渡は相続税法第七条の『著しく低い価額の対価で財産の譲渡があった場合には、その対価と時価との差額について贈与等があったとみなす』にあたるとされ、税務署から指摘を受けることになりました。
このように"著しく低い価額での譲渡"を『低額譲渡』と言いますが、低額譲渡に当たるかどうかは、さまざまな事情や対価、相続税評価額などを総合的に判断すべきものされます。
そのため土地の譲渡の場合には、通常の取引価格や相続税評価額をもとに、売却価額を決めなければいけません。
今回のケースでは、この差額の2,000万円が贈与にあたるとみなされ、贈与税が課されることになってしまいました。
売買が贈与とみなされないためには?
それでは、このようなケースで贈与とみなされないためには、どのように対処すればよいでしょうか?
まず、他人間のような利害関係の無い親族間での財産譲渡は、その譲渡取引の妥当性に税務署の厳しい目が向けられていると認識しておきましょう。
さらに、低額譲渡にあたるかどうか、その価額に対する明確な規定があるわけではありません。
その対処策のひとつとしては、親族間での譲渡が"著しく低い価額で取引をしていない"という事実を、第三者に説明できるような客観的な根拠資料を用意しておくことが重要です。
また、価額設定などの金額面のみならず売買契約書などの様式面にも配慮し、しっかりとした書面を残すようにすると良いでしょう。
まずは、所有している土地の適正な売却価額がいくらになるかを知ることが重要です。
詳しくは当事務所へご相談ください。
社員が出張をすると、交通費や宿泊費、接待費等、さまざまな経費がかかります。
出張のたびに、これらを細かく経費精算するのは面倒なものです。
そこで“出張旅費規程”を導入することで、この面倒さが軽減され、節税効果も期待できます。
では、“出張旅費規程”とは一体どのようなものなのでしょうか?
“出張旅費規程”を定めるメリットとは?
出張にかかる諸経費の取扱いを定めた社内規定のことを“出張旅費規程”といいます。
法律上の明確なルールがあるわけではないので、会社ごとに日当の額や規定内容を決めることができます。
出張旅費規程に基づき支給した日当は、会社の経費として計上することが可能です。
また、社員が受給した出張旅費は所得税の課税対象とならないため、会社と社員双方にとって、実質的な節税となるのです。
さらに、日当をあらかじめ定めておくことで、日当計算の手間が省け、社員の間での日当額に対する不公平感も軽減できます。
“出張旅費規程”の作成手順
①目的・ルールを定義する
『就業規則〇条に基づき』や『この規定は、役員および従業員が業務命令により出張する場合の、手続きおよび旅費に関して定めるものである』など、就業規則に出張旅費規程の目的やルールを定義しておくことが大切です。
②範囲を定める
社員全員を対象とします。
福利厚生費と同様の考え方なので、役員のみを対象とすることはできません。
パートなど、正社員以外の人が出張する可能性がある場合は、それについても明記しておく必要があります。
③“出張”の定義を明確にする
“移動距離”によって出張を判断することが一般的です。
ただし、これについても法律上、特に基準があるわけではありません。
そのため、“100km以内は近出張” “それ以上は遠出張”など、距離によって定めるとよいでしょう。
④“旅費”の対象を定める
旅費はおもに『交通費・日当・宿泊費』などが該当します。
交通費と宿泊費は実費精算となります。
交通費については、“新幹線の指定席・グリーン車の利用基準” “鉄道と飛行機の利用区分”など、役職や距離に応じて基準が異なるものは、あらかじめ明確な基準を規定しておきましょう。
日当は、出張にともなうコインランドリー代など経費に計上できない個人の出費を補填する意味合いがあります。
法律上の基準がないため、会社で自由に出張手当の額を決めることができます。
ただし、適性額を超えた額を設定すると、税務当局から指摘され、課税対象となる可能性があります。
日当は通常、近出張と遠出張とで分けて役職ごとに支給額を規定します。
たとえば、『近出張の場合、従業員は2,000円、役員は4,000円とする。ただし、8日目以降は支給額を50%減額する』など、役職ごとの支給額や日数に応じての制限があれば定めておきましょう。
宿泊費についても、役職ごとに1泊あたりの上限額を定めておくとよいでしょう。
⑤出張旅費精算書を作成する
出張旅費規程を策定しても、自由に経費を計上できるわけではありません。
まず“出張旅費精算書”を作成し、役員や従業員が実際に出張した際には、その都度これを記入・提出してもらう必要があります。
出張旅費精算書の書式や項目に決まりはありませんが、一般的には、『日時・場所・出張先や担当者・用件』などを記載します。
また、領収書も一緒に保管しておくことが必要です。
出張旅費規程に『出張が終了した際には、5日以内に出張旅費計算書を作成し、領収書とともに提出しなければならない』などと規定し、速やかに会計処理ができるように努めましょう。
出張旅費規程は、出張が多い会社ほどメリットが大きくなります。まだ定めていない場合は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
作成のお手伝いもいたします。当事務所へお気軽にご相談ください。
不動産関連の比較査定サイトを運営するスマイスターが、2017年9月に行った『不動産相続についての調査』によると、不動産を相続した人のうち79.5%(回答数171)が戸建てを相続したことがわかりました。
さらに、そのうち約3割は空き家になっているそうです。相続した家をどのように活用するかが、今後、大きな課題になってくるでしょう。
相続した実家の約3割が空き家に
同調査によると、『相続した実家をどのように管理しているか』という設問に対し、『空き家として管理している』が17.0%、『空き家として放置している』が11.7%と、有効な活用をしていない人が28.7%にのぼりました。
また、『自分が住んでいる』という人も36.8%にとどまり、都心に住む人が地方の実家を相続するなど、他に居所がある人が相続した実家の活用に困り、空き家となるケースが多いことがわかりました(スマイスター調べ)。
建物を管理せず放置すると、虫や雨風などによって建物の劣化や倒壊のリスクが高まります。また、市街地にある空き家は、犯罪の温床になってしまう可能性も考えられます。
駐車場にすると税金が高くなる!?
建物の劣化や倒壊を防ぐために、家を取り壊し、駐車場として賃貸する人も増えてきています。ただし、住宅を取り壊す場合は、固定資産税に注意する必要があります。
住宅用地には、税の負担を軽減する特例措置が設けられています。しかし、住宅を取り壊したり、家屋の用途を変更したりすると、この特例の適用対象から外れるため、固定資産税が高くなる可能性があります。
住宅を取り壊した場合の固定資産税については、自治体によっても異なりますので、一度役所の窓口でご相談いただくか、自治体のホームページで確認されることをおすすめいたします。
飲食店へのリフォームで注意したいこととは?
また、リフォームをして、カフェなどのお店を経営しようと考えている人もいるでしょう。仮に、戸建ての1階部分、50㎡をカフェにリフォームした場合は、一般的に数百万の費用がかかるといわれています。
ただし、自治体によっては補助金制度を設けているところもあるので、役所などの窓口に相談してみましょう。また、土地の用途を変更した場合は法律の確認が必要となるので、お気軽にご相談ください。
不動産活用でお悩みがありましたら当事務所へご相談ください。
税金面だけではなく、提携企業と連携してサポートいたします!
最近、東芝、日産自動車、神戸製鋼など大手企業の不祥事が大きく取り上げられ、話題になっています。企業の不祥事は、社会的な信頼を失うだけでなく、経営にも大きな打撃を与えるため、倒産に至るケースも少なくありません。
では、どのようにして不祥事や連鎖倒産を防げばいいのでしょうか?
2016年度は過去2番目に不祥事倒産が多かった
帝国データバンクの調査によると、“粉飾決算”、“業法違反”、“脱税”などのコンプライアンス違反が原因で倒産する企業が増えているといいます。
調査がスタートした2011年度のコンプライアンス違反倒産は159件でしたが、年々件数が増加し、2016年度は250件で、過去2番目の多さとなりました。2017年度上半期(4月~9月)は、106件が判明しており、この見通しでいくと2017年も200件を超える勢いだと調査では明らかにされています。
最も多かったコンプライアンス違反では、不正経理などの粉飾決算が問題になっています。同調査では、昨今の景気回復局面で企業活動が活発化する中、コンプライアンスに歪みが生じていると分析しています。さらに、不正を許してしまう企業の体制や慣習に加え、コンプライアンス違反に厳しい社会へ移行していることも原因なのかもしれません。
取引先が不祥事を起こせば、連鎖倒産になる可能性も
神戸製鋼の製品検査データの改ざん不祥事では、同社の部材を活用している中小零細企業にも影響が出るのではないかと推測する意見が散見されます。東京リサーチの調査では、神戸製鋼の一次、二次の販売先は合わせて1万1,466社です。同社の出荷が停滞すれば、業績に大きな問題が出てくる企業も少なくありません。
これまで、企業不祥事には自社内部の対策が重要視されていましたが、今後は、取引先が企業不祥事で業務が滞ったり、倒産した場合のリスク回避策も考えておくことが重要になってきます。取引先の新規開拓だけでなく、情報収集にも力を入れることが大切でしょう。
相続税の課税対象となる“みなし相続財産”。みなさんはご存知でしょうか?
遺産を相続した際、これを相続税の計算に入れなかったことにより、税務署に指摘されてしまうこともあります。
一体、みなし相続財産とはどのようなものか、まずは基本的なことからご説明します。
“みなし相続財産”とは?
本来、被相続人の固有の財産とはいえないけれど、被相続人が死亡したことによって発生した財産のことを“みなし相続財産”といいます。
代表的なものとして、“生命保険金(死亡保険金)”や“死亡退職金”が挙げられます。
どちらも、被相続人が亡くなったことにより発生した財産なので、みなし相続財産として考えられ、相続税の課税対象になるのです。
【生命保険金(死亡保険金)の場合】
契約者や受取人、支払っていた人など、契約状況によって課税される税金の種類が異なります。
契約者・被保険者である被相続人が保険料を支払っていた場合、相続人が受け取った保険金はみなし相続財産となるので、“相続税”の課税対象となります。
一方、被相続人を被保険者とする保険契約において、受取人が契約者となり保険料を支払っていた場合は、“所得税”が課税されます。
そのほか、被相続人でも受取人でもない人が保険料を支払っていた場合(たとえば、被相続人を被保険者とする保険料を、受取人ではない家族が契約者となり支払っていた場合など)は、“贈与税”が課税されます。
【死亡退職金の場合】
被相続人が死亡して3年以内に遺族への支給が確定した退職手当金や功労金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
ちなみに、弔慰金については、原則として相続税の課税対象にはなりません。
ただし、下記のいずれかに該当するものは退職手当金等として相続税が課税されます。
①雇用主から支給された弔慰金が、実質上、退職手当金などに該当すると認められるもの
②弔慰金が、被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額(業務上の死亡である場合)を超える部分に相当する金額
③弔慰金が、被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額(業務上の死亡ではない場合)を超える部分に相当する金額
※普通給与とは、俸給・給料・賃金・扶養手当・勤務地手当などの合計額をいいます。
法定相続人の数に応じて 一定額が非課税に
みなし相続財産となる生命保険金・死亡退職金の一定額について、“法定相続人”の数に応じて、それぞれ非課税限度額が設定されています。
【非課税額算出方法】
◇500万円×法定相続人の数=生命保険金非課税限度額
◇500万円×法定相続人の数=死亡退職金非課税限度額
なお、相続人以外の人が取得した生命保険金(死亡退職金)には非課税の適用はありません。
まずは、何が“みなし相続財産”に該当するのか、そして相続税や所得税など、どのような税金の課税対象となるのか知ることが重要です。
相続財産の税金対策について、ご不明な点がありましたら、当事務所へご相談ください。