源泉所得税はよく耳にする言葉ですが、
なぜ毎月天引きされているのか、最終的にどのように
なるのかなど、その一連の流れを知らない経営者も
いるのではないでしょうか。
そこで今回は、源泉徴収の基本的な流れや納付義務が
生じる場合などについて解説していきます。
会社が従業員に代わって所得税を納付する理由とは?
源泉所得税とは、会社が従業員や業務委託先となる個人にお金を支払うときに、
支払額からあらかじめ所得税分を天引きし、本人に代わって会社が納付する
所得税のことです。
そして、この一連の流れを『源泉徴収』と呼びます。
では、なぜ会社が天引きして代わりに支払うことになっているのでしょうか。
原則として、所得税は個人が1月1日から12月31日までに得た
課税所得に対して課税されますが、課税された所得税は
確定申告時に一括納付するというのが本来の流れです。
しかしそうすると、一度に数十万円という高額の所得税を納めなければならず、
個人にとっては負担が大きくなります。
万が一、未払いとなってしまえば、国の財政にとってもよい影響はありません。
そこで、あらかじめ概算で所得税を計算しておき、毎月会社が天引きして
納付するという形を取っているのです。
源泉徴収の意味と一連の流れとは?
では、従業員の場合、どのように源泉徴収を行えばよいのでしょうか。
具体的な流れを見ていきます。
(1)従業員を雇用するとき
まず、初めて従業員を雇う場合には、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長に
『給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書』を提出し、
開設手続きを行う必要があります。
(2)従業員を雇用した後
従業員を雇って給与を支払うことになった場合には、
原則として、給与を支払った月の翌月10日までに、税務署に
従業員の給与から天引きした源泉所得税を納付しなければなりません。
ただし、給与等の支給人員数が10人未満の場合、
『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』を提出し、
その承認を受けることで、源泉所得税を年2回
(1月と7月に各6カ月分)にまとめて納付することができます。
(3)年末調整のとき
年末調整とは、雇用している従業員について、
1月1日から12月31日までの1年分の所得を国に報告する制度のこと。
年末調整の時点でその年の従業員の所得が確定して、
あわせて納税するべき所得税の額も確定します。
これまで源泉徴収をしてきたなかで従業員が所得税を納め過ぎていれば
還付されることになり、納付した源泉所得税が不足していれば
追加で納付することになります。
その名の通り、年末に所得税を調整するというわけです。
会社経営を行ううえで、源泉徴収や年末調整の業務を
経理の担当者や顧問税理士などに任せている経営者は多いものです。
実務を任せることは問題ないとしても、源泉所得税がどういったものか
という仕組みは知っておくことが大切です。
※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。
お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。
人材確保が困難な現在、企業が求める経験値を
持っている人を採用することはむずかしい状況です。
そんななか、未経験者を育成するという前提で
採用するケースも増え、特に中小企業では、
中途採用者のうち未経験者の比率が高いという
調査結果もあります。
しかし、採用後のリスクを考え、未経験者の採用に踏み切れない企業も多いでしょう。
今回は、職業経験や知識が不足している求職者を雇用する場合に、
適性や能力を見極めたうえで、常用雇用したいという企業に
おすすめの助成金をご紹介します。
『トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)』
トライアル雇用助成金とは、
求職者を原則3カ月間試行雇用することでその適性や能力を見極め、
常用雇用へ移行するきっかけとなることを目的として支給される助成金です。
一般トライアルコース、障害者トライアルコース、
障害者短時間トライアルコース、若年・女性建設労働者トライアルコースの
4つがありますが、今回は一般トライアルコースについて紹介します。
【対象となる求職者】
以下の(1)~(5)のいずれかに当てはまる求職者が対象となります。
(1)紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している。
(2)紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている。(※1)
(3)妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、
安定した職業(※2)に就いていない期間が1年を超えている。
(4)紹介日時点で、ニートやフリーターなど(※3)で45歳未満である。
(5)就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する。(※4)
※1 パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと。
※2 期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が
通常の労働者の所定労働時間と同等であること。
※3 安定した職業に就いていない方で、ハローワークなどにおいて
担当者制による個別支援を受けている人。
※4 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、
季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、
住居喪失不安定就労者、生活困窮者。
紹介日時点で安定した職業に就いている人や、
自営業者・役員で週30時間以上働いている人などは、対象外となります。
【支給額】
助成金額は、対象者1人当たり最大12万円
(月額最大4万円、トライアル期間は最長3カ月間)。
ただし、対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合と、
若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の対象者に対し
トライアル雇用を実施する場合は、1人当たり月額5万円(最長3カ月間)です。
トライアル期間の途中で労働者が退職した場合や
欠勤日数などが多い場合には、金額が変わります。
【支給要件(抜粋)】
以下の(1)~(6)のすべての要件を満たすことが必要です。
(1)事前にトライアル雇用求人をハローワーク、
地方運輸局、職業紹介事業者(※1)に提出していること。
(2)1の求人に基づき、対象者を原則3カ月の有期雇用(トライアル期間)で
雇い入れていること。
(3)トライアル雇用開始日から2週間以内に、対象者を紹介したハローワークに
実施計画書を提出していること。
(4)対象者に係る紹介日前に、当該対象者を雇用することを約束していないこと。
(5)トライアル雇用を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族
(配偶者、3親等以内の血族および姻族をいう)以外の対象者を雇い入れていること。
(6)トライアル雇用開始日の前日から過去3年以内に、当該対象者の雇用や
職業訓練(短期訓練を除く)を行っていないこと。
※1 トライアル雇用助成金の取扱いを行うに当たって、
雇用関係助成金の取扱いに係る同意書を労働局に提出している職業紹介事業者。
未経験者を積極的に活用する足がかりに
人材不足を解消するためには、職種未経験または経験不足である
求職者の雇用も積極的に行いたいところです。
しかし、採用後に『適性がなかった』と判明することは、
企業・労働者の双方にとって望ましくありません。
トライアル雇用助成金は、人材の見極めをしっかり行えるうえ、
人件費の削減に役立つ制度です。
ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、本助成金の支給条件は、このほかにも細かく決定されていますので、
詳しくは、厚生労働省のホームページをご確認ください。
出典:厚生労働省『トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html
※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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2019年10月に軽減税率制度がスタートし、帳簿や請求書
の記載方法の変更や、価格表示の変更、対応レジの導入
など、事業者側の負担は軽くありません。
特に確定申告における消費税の計算方法が複雑化したこと
で頭を抱える事業主の方も多いのではないでしょうか。
そこで、負担軽減のために活用を検討したいのが
『税額計算の特例』制度です。
適用を受ければ、ある一定期間は一般的な課税方式よりも簡単な方法で計算することができます。
今回は、この『税額計算の特例』についてご紹介します。
特例を受けられる企業とその期間
消費税増税に伴い、導入された軽減税率制度。
すべての商品やサービスの消費税を10%にするのではなく、飲食料品や新聞など、
生活に欠かせない商品に限って消費税を8%に据え置くわけですが、
その区分の複雑さは導入前から問題視されていました。
たとえば、飲食料品は消費税8%ですが、酒類やケータリングなどは10%の消費税が課税されたり、
ファストフードやコンビニではイートインとテイクアウトで消費税率が異なったりなど、
混乱を招きかねない部分があります。
軽減税率の導入にあたって、事業者は税額計算を行う際、原則として、
売上又は仕入れを税率ごとに区分経理しなければなりません。
当然、事業者はその対応に追われることになりましたが、
一方で売上又は仕入れを税率ごとに区分経理することが困難な中小事業者に対し、
企業への救済措置も設けられています。
それが『売上税額又は仕入れ税額の計算の特例(簡易課税制度の届出の特例を含む。)』です。
これは、本来であれば細かく複雑な計算をしなければいけないところを、
簡単な計算式でよしとしてくれるもので、
ここでは、このうち『売上税額の計算の特例』について取り上げます。
特例適用の対象となるのは、
基準期間(原則として前々年または前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下で、
区分経理が困難な中小事業者です。
国税庁は『困難の度合いは問わない』としているため、
企業側が困難だと感じたら、適用を受けることができます。
また、その期間は、
『売上税額の計算の特例』は軽減税率制度の実施から4年間
(2019年10月1日から2023年9月30日までの期間)、
『仕入れ税額の計算の特例』は1年間
(2019年10月1日から2020年9月30日までの期間)と決められています。
税額の計算方法を3種類から選べる
特例では、売上のうち『一定の割合』を、軽減税率の対象となる売上として、
消費税額を計算することができます。
この『一定の割合』は、企業の業態や状態によって
『小売等軽減仕入割合』『軽減売上割合』『50%の割合』の3つに分かれるので、
それぞれ説明していきます。
・小売等軽減仕入割合
対象となる業種は、卸売業・小売業のみで軽減税率の対象となる商品を多く扱っており、
特例の期間中に簡易課税制度の適用を受けておらず、
さらに課税仕入れについて、税率ごとに区分経理できている中小事業者に限られます。
簡単にいうと、“仕入れの区分経理はできても売上の区分経理はできない”という
卸売業や小売業を営む中小事業者に適用されるというわけです。
この方式では、仕入れ額のうち軽減税率対象商品の占める割合を、
売上に係る軽減税率対象商品の割合として、消費税額を計算します。
仕入れ額がはっきり区分できていることを前提に、
それを売上の区分経理にも使うということになります。
・軽減売上割合
対象となるのは、業種を問わずすべての中小事業者で、
仕入れが区分経理できていなくてもかまいません。
この方式では、連続する10営業日の商品の売上を抽出し、
そのなかの軽減税率対象商品の売上の割合を、
売上に係る軽減税率対象商品の割合として、消費税額を計算します。
なお、この10営業日は中小事業者が任意で選ぶことができます。
・50%の割合
対象となるのは、仕入れの区分経理ができておらず、
『軽減売上割合』に必要な10営業日の売上の区分経理も困難で、
さらに、軽減税率対象商品の売上がおおむね50%以上である中小事業者です。
この方式では、売上の50%を軽減税率対象商品の売上として、消費税額を計算します。
非常に簡単ではありますが、よほど計算が負担でない限り、
『小売等軽減仕入割合』または『軽減売上割合』で計算したほうがお得です。
軽減税率の計算に関して、一般的な算出方法で計算するのか、特例を使えるのか。
そして特例が使えるのであれば、
どの割合で計算するのが一番効果的なのかをよく考え、
自社に有用な選択をすることが必要といえそうです。
※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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労働者の解雇を巡って、労使双方が和解するために、
使用者側から労働者側へお金が支払われる場合が
あります。これを解決金といいます。
では、解決金を払った場合、税務上の扱いは
どうすればいいのでしょうか。
解決金の支払いの決定方法と共にご紹介します。
解決金の支払い金額を決定する判断基準とは?
のちに労働裁判になって「不当解雇ではないため、解決金を支払わなくてもよい」
と判断されることもありますが、一度、労働審判になってしまったら、
判決による不当解雇の有効性・無効性にかかわらず、和解のために
解決金を支払う場合が多くあります。
支払い金額はケースによってまちまちで、相場はありません。
考え方としては、
(1)給与〇カ月分といった月給単位
(2)解雇期間中における給与分
(3)労働者側に過失があるとみなされる場合には
使用者との間で責任割合を決める
などがあります。
ただし、(1)(3)については、労働審判委員会の
心証によって決定される場合がほとんどです。
また、申し立て内容の有効性・無効性も判断の材料となり、
解決金の額は増減します。
解決金の税務上の取り扱いはどのような性質かによって変わる
解決金として労働者側に金銭を支払った場合においても、
企業の源泉所得税の納付が免除されるわけではありません。
また、その一方で、解決金を退職所得として企業が
源泉徴収を行ったことを違法とした例もあります。
では、解決金として労働者側に金銭を支払った場合、
税務上はどのような取り扱いになるのでしょうか。
ここで大切になってくるのは、労働者に支払った解決金が
どのような性質を帯びているか、しっかり見極めることです。
通常の給与と同様に、賃金としての性質が強いようなら、
源泉所得税の納付義務が発生します。
解雇期間中の給与分や未払い残業代などの請求がこれに当たります。
この場合、退職を起因として一時的に支払われるものであれば、
“退職所得”に該当することになります。
また、不当解雇と認定され、当該労働者が復職をした場合には、
過去の給与を支払ったという考え方から、
通常通り“給与所得”とみなされるのが適当になるのです。
このほかに、解決金の支払いが精神的苦痛などに対する
慰謝料としての性質が濃い場合には、“損害賠償金”として
損金算入することができ、源泉徴収の対象とはならないことになります。
解決金は、実質的に何を支払ったのかによって
対応する勘定科目が異なります。
そのため、解決金の扱いについては、支払いの性質を見極めることが
肝心です。
とはいえ、そもそも労働紛争がなければ頭を悩ます必要もありません。
問題となりそうな点を見直して、あらかじめ対策を立てておくことも
大切なことと心得ましょう。
※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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2019年6月、吉本興業所属の芸人による
闇営業に端を発する騒動から、芸人と会社側
との契約問題がすべて口約束であることが
発覚し、波紋を呼びました。
労働法では雇用契約を結ぶ場合、雇用契約書
などの書類がなく口約束だったとしても、
雇用契約は成立しているとみなされます。
しかし、口約束での契約には、常にトラブルの危険性が
あり、最悪の場合、裁判にまで発展することも。
企業としても避けたい口約束の危うさと、
正式な書類を交わすことの重要性を説明していきます。
口約束でも雇用契約は成立するが……
多くの企業は、従業員に署名押印してもらった雇用契約書を預かっています。
その書類が、対象の従業員を自社で雇用していることの証になります。
また、労働基準法第15条では、事業主に対して、労働条件の明示を義務づけています。
しかし、中小企業のなかには、雇用者側と口約束だけで雇用契約を結び、
なんとなく曖昧なまま雇用者を労働に従事させている会社もあります。
「昔からの慣例だから」「面倒くさいから」「書類作成のやり方がわからないから」など、
書類による契約を交わさない理由はさまざまです。
前述した通り、口約束でも雇用契約は成立しますが、雇用契約書を交わしていないと、
大きなトラブルが発生する危険性があります。
もし従業員側から「当初の労働条件と異なるため、改善を要求する」と訴えられた場合に、
実は入社時に正当な労働条件を提示していたとしても、
自社の正当性を証明することがむずかしくなります。
その従業員のタイムカードや毎月の給与明細、仕事内容の詳細、ほかの社員の労働状況などの
証拠を集めて、正当性を証明するしかありません。
雇用契約以外も口約束の契約は成立する
企業と雇用者との間で交わす雇用契約はもちろん、会社とフリーランスの間で交わす請負契約や、
会社と委託社員との間で交わす業務委託契約など、基本的にはどの契約も口約束で成立します。
そして、口約束による契約だからといって、企業側がその契約を軽んじることもできません。
たとえば、プロジェクトが途中で頓挫した場合に、口約束だったからといって報酬を
支払わなかったり、いきなり委託社員を解雇したりすることもできません。
各種の契約書は、その契約の内容を証明するものに過ぎず、
口頭による約束でも契約は守らなければなりません。
一方で、契約書がないばかりに、フリーランスや委託社員との
トラブルに発展するケースもあります。
たとえばフリーランスのWebデザイナーから規定外のギャランティーを請求された際に、
本来の内容を証明できないと、相手の請求が認められてしまいます。
証明するには裁判を行うしかなく、そうなってしまった場合は、
会社的にも労力や資金を割かねばなりません。
口約束は『言った、言わない』の水掛け論にもなりやすく、大きな危険性をはらんでいます。
受注者側が、「これだけのギャラを払ってもらう約束だった」と訴える一方で、
企業側が「そんなにギャラを払うなんて約束していない」と主張し、
意見が食い違うことは、往々にしてあるパターンです。
このような面倒事を避けるには、会社のセーフティーネットとして、
どんな契約であっても、書類を交わしておくことが大切です。
たとえ雇用者やフリーランサー本人から書類の交付を要求されなかったとしても、
当事者がお互いに合意したことの証拠として契約書類を作成し、
交わしておくのがベストといえるでしょう。
※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。
お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。
中小企業の経営者にとって
気がかりなのは、大口の取引先の
経営状況でしょう。
大口の取引先が万が一倒産してしまった場合、
その企業を拠り所にしている会社は
連鎖倒産を引き起こしかねません。
そこで、
そういった不安を少しでも減らすために活用したいのが
『中小企業倒産防止共済制度』です。
今回は、この制度についてご説明します。
共済制度に加入するための条件
『中小企業倒産防止共済制度』とは、国が全額を出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構
(以下、中小機構)が運営している制度のことで、『経営セーフティ共済』とも呼ばれています。
取引先企業が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内(最高8,000万円)で回収困難な
売掛債権等の額以内の共済金の『貸付け』が受けられる、中小企業倒産防止共済法に基づいた共済制度
です。
基本的には、取引先企業の倒産による連鎖倒産や経営難から中小企業を守ることを目的としており、
中小企業の経営の安定化を担っています。
共済への加入資格は1年以上事業を継続している中小企業、または個人事業者に限られます。
1年以上事業を継続していても、事業に係る経理内容が不明であったり、税金の支払いを滞納したり
している場合などは加入できないので注意が必要です。
また、以下のように業種によっても加入条件が変わってきます。
・製造業、建設業、運輸業等……資本金が3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下
・卸売業……資本金が1億円以下、または常時使用する従業員数が100人以下
・サービス業、小売業……資本金が5,000万円以下、または常時使用する従業員数が100人以下
これらの条件を満たしていれば、中小企業倒産防止共済制度に加入することが可能となります。
加入の申し込み手続きは、商工会や商工会議所、もしくは金融機関などで行っています。
詳しくは、中小機構に問い合わせてみてください。
加入することで得られるメリット
中小企業倒産防止共済制度に加入するメリットとしては、以下のようなものがあります。
・毎月の掛け金を幅広く設定できる
中小企業倒産防止共済制度では、毎月の掛け金を5,000円から20万円まで、5,000円刻みで自由に
選ぶことができます。
また、状況に応じて増額や減額ができるのもポイントです。
・毎月の掛け金を損金として計上できる
また、これらの掛け金は法人であれば損金として、個人事業主であれば経費として算入することが
できます。
・共済金の貸付けが受けられる
中小企業倒産防止共済制度は、取引先が倒産してしまった場合に最大限の力を発揮します。
取引先が倒産し、売掛金がこげついた場合に、なかなか大金を貸してくれるところはありません。
しかし、中小企業倒産防止共済制度に加入していれば、回収困難な売掛債権などの額以内の共済金の
貸付けが受けられます。
限度額800万円まで積み立てていれば、最高で8,000万円の共済金を借りることができるわけです。
また、共済金の貸付けは無担保、無保証人、無利子で受けることができます。
返済期間にも余裕があり、たとえば貸付額が5,000万円未満であれば、半年から5年後の間と
定められています。
ただし、注意点もあります。
まず、取引先の“夜逃げ”や“内整理”などは制度上の『倒産』には該当しないため、
共済金の貸付けを受けることはできません。
また、貸付け自体は無利子ですが、借りた額の10%にあたる額が掛け金から控除されてしまいます。
たとえば、500万円を借り入れたとして、その10%にあたる50万円がこれまで積み立てた掛け金から
減らされるというわけです。
とはいえ、掛け金を犠牲にさえすれば、その10倍もの金額を借りられるのは大きなメリットとも
いえるでしょう。
・解約時に掛け金が戻ってくる
さらに、大きなメリットとして、40カ月以上加入している加入者に限り、解約時に掛け金の全額が
『解約手当金』として戻ってきます。
40カ月に満たなくても掛け金は戻ってきますが、40カ月以上経っていれば、100%の払い戻しが
確約されているというわけです。
ただし、『解約手当金』は所得(益金又は収入)となるため、課税の対象となることに留意して
おいてください。
いざという時のセーフティネットに
ここまでさまざまなメリットをご紹介してきましたが、取引先の倒産の際に共済金を借りるのは
“最終的な緊急手段”です。
借り入れを受ける際には、借りた額の10%にあたる額が掛け金から控除されてしまうため、
せっかくこれまで積み立ててきた掛け金を失うことになります。
中小企業倒産防止共済制度の貸付けを受けるのは、さまざまな手を尽くして、それでも
どうにもならなかった場合に限ります。
しかし、そういった最終手段を持っておくことは大きな安心材料になるでしょう。
中小企業倒産防止共済制度に加入する必要があるのかどうか、
自社や取引先の経営状況などを鑑みて、検討してみてはいかがでしょうか。