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 『退職金』を支給する際に気をつけたい手続きと計算方法 2024-12-18

 

   日本では、およそ8割の会社が退職金制度を設けています。

退職金制度とは一定の年数以上勤めた従業員が退職する際に、働いた年数や業績に応じて手当を支給する制度のことです。

この退職金を支払う際に注意しなければならないのが、税務上の手続きや会計に関する処理です。

もし、必要な処理を怠ると余計な混乱を招くことになりかねません。

退職金制度を導入している企業は理解しておきたい、退職金の税務会計について解説します。


退職金にまつわる所得税などの税金について

 法律で定められた義務ではないものの、退職金制度は多くの会社で導入されている制度の一つです。

企業規模や地域、制度の中身などによって大きく異なりますが、一般的に退職金は高額になる傾向にあります。

厚生労働省では大企業における学歴別の平均退職金額を公表しており、「令和5年賃金事情等総合調査」によれば、

定年まで勤めた大学卒業者は約2,140万円、高校卒業者は約2,020万円でした。

一方、東京産業労働局の2022年度のデータによれば、中小企業の平均退職金額は、

定年まで勤めた大学卒業者が約1,092万円、高校卒業者が約994万円でした。


これらの高額な退職金を取り扱う際には、行わなければならない税務上の手続きがあります。

まず、退職金を支給する際には、退職金から所得税などを差し引かなければならないため、

退職金の支給対象者に必要事項を記入した「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」を提出してもらいましょう。

申告書の入力用フォーマットは国税庁のホームページから入手できるので、対象者に渡しておきます。

対象者から申告書を受け取った事業者は、所得税額および復興特別所得税額、住民税額を計算し、

退職金を支給する際に、金額に応じた所得税などの額を源泉徴収します。

したがって、原則、退職する対象者が確定申告をする必要はありません。

事業者は受け取った申告書を保管しておき、税務署長からの求めに応じて提出します。


退職金を支給する際には、退職所得控除額、退職所得金額、所得税額および復興特別所得税額、住民税額を計算する必要があります。


退職所得金額は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」という式で求められます。

この場合の収入金額は源泉徴収される前の金額です。

退職所得控除額は勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数(最低80万円)」、

20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」という式で求められます。

勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算します。


所得税額と復興所得税額の合計は「(退職所得金額(千円未満切捨)×税率-控除額)×1.021」という式で、

住民税額は「退職所得金額(千円未満切捨)×0.1(都道府県民税0.04+市区町村民税0.06)」という式で求めることができます。

源泉徴収した所得税および復興特別所得税と住民税は、原則として支払った翌月の10日までに納めます。

また、対象者が退職した1カ月以内に、源泉徴収票・特別徴収票を作成して、対象者本人に交付しなければいけません。


対象者が退職所得申告書を提出していない場合、対象者は退職所得の20.42%の所得税および復興特別所得税と、

10%の住民税が徴収されることになり、本人が確定申告を行い清算することになります。

対象者のためにも、退職所得申告書は必ず提出してもらうようにしましょう。


退職金の仕訳と支給後に必要な手続き

 退職金の仕訳は積立の有無で方法が異なります。

退職金は勤続年数に応じて額が増加する場合が多いため、企業会計基準上の「引当金」の要件を満たす場合、

将来の支給に備えた見積額として一定の方法で計算した金額を「退職給付引当金」として計上します。

その場合は、その事業年度の繰入額を「退職給付費用」という勘定科目を使用して各事業年度の費用として計上します。

退職金が発生した段階で、この退職給付引当金から取り崩す仕訳を行います。

ただし、退職給付引当金の計上は会計上の処理であって、税務上は損金算入が認められていません。


一方で、退職給与規程がない会社や、税法基準で決算を行なっている中小企業など、

引当金を計上していない場合は、退職時に処理することになります。

そのようなケースでは「退職金」の勘定科目を使用して費用処理します。

これらの勘定科目は一般の従業員の場合で、役員に対して支給する退職金は

「役員退職金」や「役員退職慰労金」といった勘定科目を使用します。

役員への退職金は、仕訳や経理処理の方法が異なるので注意しましょう。


また、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の提出も忘れてはいけません。

この届出書は、従業員が退職や休職、死亡などによって給与の支給を受けなくなり、特別徴収ができなくなった旨を知らせるためのもので、

原則として退職した翌月の10日までに対象者の特別徴収先の市区町村に提出する必要があります。

もし届出書を提出しないでいると、特別徴収の義務が継続したままになり、市区町村から督促状などが送付されることもあります。


退職金の支給や仕訳は、さまざまな手続きや処理を行う必要があるので、計算方法や勘定科目などをよく理解したうえで進めていきましょう。

なお、会社が直接支給する退職金制度以外にも、中小企業退職金共済や、確定拠出年金など、外部機関が取り扱う退職金制度もあります。

外部の退職金制度を採用している場合は、処理の方法などが異なるので注意してください。

※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。


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  届出制ならOK? 休憩時間中の外出に関する考え方 2024-11-28

 

   労働基準法では、使用者は、労働時間が一定時間を超える労働者に対して

休憩時間を与えなければならないと定めています。

この休憩時間は、従業員が完全に労働から離れて、心身の疲れを回復させるためのものなので、

基本的には従業員の自由にさせなければいけません。

これを「自由利用の原則」といいます。

では、従業員が休憩時間中に外出する場合も、自由利用の原則が当てはまるのでしょうか。

休憩時間の自由利用に関する考え方について説明します。


休憩時間は労働から離れる時間

   従業員の労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、

8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える必要があります。

この休憩時間中は、警察官や消防官などの特殊な職種を除き、基本的にはどんな仕事であっても、

労働から離れて、自由でなければいけません。

労働から離れるとは、使用者の指揮命令下から完全に離れるという意味でもあります。


解釈を巡ってよく問題になるのが、休憩時間中の「電話番」です。

たとえ、電話がかかってこなかったとしても電話のために待機している状態は、使用者の指揮命令下から完全に離れているとはいえず、

休憩時間には該当せず、労働時間に該当すると考えられています。

従業員が電話番をしていた時間は労働時間として賃金が発生しますし、別で休憩時間を与える必要もあります。

電話番や店番など、業務に従事していないものの、もし何かあればすぐに対応しなければならない「待機時間」や「手持ち時間」は、

基本的に労働時間として扱われるので注意してください。

当然、休憩時間中の顧客対応も労働時間に含まれます。


一方で、「自由利用の原則」があるからといって、従業員は休憩時間中に何をしてもいいというわけではありません。

休憩時間は、あくまで休憩が目的であり、疲労や集中力の低下などによって引き起こされる労働災害を防ぐという意味合いがあります。

したがって、飲酒や過度な運動などは休憩にはそぐわない行為ですし、職場の規律を乱したり、

ほかの従業員の休憩を妨害したりする行為も認められるものではありません。

このような管理上および社会通念上問題となる行為を禁じる目的であれば、休憩時間の過ごし方について、

使用者が一定の制限を加えることもできます。


休憩中の外出を制限するのはむずかしい?

   では、休憩時間中の外出については、どのように考えればいいのでしょうか。

基本的に自由利用の原則があるため、従業員が休憩時間中に外出したとしても、使用者がこれを禁じることはできません。

ただし、休憩時間といっても、使用者の拘束下にあるため、一定の要件のもと外出を制限したとしても、

ただちに労働法違反になるわけではありません。


事業所のなかにしっかりと休憩できる施設が整っており、さらに合理的な理由があれば、

従業員の外出について、最小限の制限を加えることが認められています。

合理的な理由は、事業場の規律を保持するうえで必要とされるものに限られ、

「外出されてしまうと事業所に人がいなくなり、来客の対応ができない」などの理由で外出を禁じている場合は、労働法違反となります。

合理的な理由は、あくまで業務以外の理由でなければいけません。


また、外出を許可制にしたとしても、合理的な理由がなければ不許可にすることはむずかしいでしょう。

どうしても外出に制限を加えたければ、合理的な理由があることは前提のうえで、許可制ではなく「届出制」にして、

従業員が外出する際は上長の承認を受けるようにするのが現実的です。


基本的には外出自体に厳しい制限を課すことはできませんが、就業時間に間に合わないほどの遠出や、

ギャンブル施設への立入り、宗教の勧誘や政治活動、ビラ配布や物品の販売などは、事業場の規律を保持する目的で禁じることができます。

また、原則として、従業員は休憩後すぐに業務が始められる状態にしておかなければいけません。


外出して職場から離れて過ごすことは、気分転換やリフレッシュになりますし、仕事の効率アップも期待できます。

買い物や役所での用事を休憩時間中に済ませたいという従業員の要望もあるでしょう。

たとえ合理的な理由があったとしても、外出の制限には慎重にならなければいけません。

労働基準法違反とならないよう、本当に外出制限が必要なのか、必要であるのならばなぜ必要なのかをはっきりとさせ、

ルールを運用していきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。

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  『現金商売』の事業者が注意したい税務調査のポイント  2024-11-15

 税務調査は納税者が申告した内容に誤りがないか確認するために行われます。

通常は「事前通知」といって税務署から連絡が来て、調査を実施する日を調整しますが、

事前通知は義務ではないため、飲食業や小売業など顧客から直接現金を受け取る『現金商売』の場合は

事前通知をせず、抜き打ちで調査が行われることもあります。

なぜなら、税務調査は現金が正しく計上されているか現場で確認する必要があり、現金商売の場合、

事前に通知してしまうと数字のごまかしや改ざんができてしまう可能性があるためです。

今回は、現金商売の税務調査について解説します。


店舗にいきなり税務調査官がやってくる!?

 『現金商売』とは、飲食業や小売業のように、商品やサービスを提供した対価として、

顧客から直接現金を受け取る商売のことを指します。

そして、現金商売の大きな特徴は、お金の記録が残りづらいことにあります。

通帳に取引の履歴が残る振込などと比べると、現金での取引は履歴が残りづらく、売上を少なく計上するなど、

帳簿の改ざんも容易にできるため、税務調査の対象になりやすいといわれています。


それでは、もし現金商売で税務調査が実施されることになったら、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

まず、現金商売の税務調査は、店舗を中心に行われます。

調査の性質上、税務調査官(以下、調査官)は事前通知を行うことなく、抜き打ちで店舗を訪れることがあります。

一般的には営業時間外に調査を受けることになりますが、強制捜査ではなく、その多くが任意調査なので、

どうしても都合が悪ければ、調査官と相談したうえで調査の実施を延期してもらうことも可能です。

ただし、現金商売の税務調査の目的は、現場でその日の現金の動きを確認することです。

基本的には抜き打ちであっても調査を受け入れなければいけません。


調査官の訪問を受けたら、事業者は正式な調査官かどうか把握する目的で、

所属の税務署や氏名の確認や身分証明書の提示を求めてしっかりチェックしたうえで、店舗内に入ってもらいます。

調査には事業者の許可が必要になるため、事業者は必ず立ち会う必要があります。

また、その際には顧問税理士にも連絡して、立ち会ってもらうのが望ましいでしょう。

調査は税理士が到着するまで待ってもらいます。


調査では、レジロールや領収書の控え、売上伝票などの記録と、実際にレジや金庫に保管されている現金を照らし合わせ、

お金の動きにおかしなところがないか調べます。


また、売上の記録も入念に調査されます。

たとえば、申告している売上に対して、領収書の控えの枚数やレジの履歴が合わないと、脱税を疑われてしまうので注意が必要です。


『現金実査』で疑われないために大切なこと

 一度、調査官に脱税を疑われてしまうと、細かい部分まで入念に調べられますが、

適正に現金が管理できていれば、そこまで煩雑なことにはならず、比較的スムーズに調査が終了します。

大切なのは、日頃から正しい現金管理を行なっておくことです。


現金の額と帳簿や伝票が一致しているかどうか、現金をどのように保管しているのかなどを調査することを

『現金実査』と呼び、現金商売の税務調査では必ずこの現金実査が行われます。

そして、現金実査で疑われないためには、帳簿や伝票と現金残高に差が生じないようにすることが重要です。

差が生じている日数が多ければ多いほど、調査官に疑われることになるため、帳簿や伝票と現金残高は毎日一致させるようにしましょう。


特に現金商売では、伝票の書き損じや、帳簿の書き忘れなどが起きがちです。

忙しくて手が回らず、現金を受け取ったものの、レジに打ち込むのが後回しになってしまうケースなどもありえます。

意図せず売上をごまかしてしまうことにもなりかねないので、現金を受け取ったら、すぐにレジに打ち込んだり、

伝票に記入したりするなどして、その都度、売上を記録するようにしましょう。


また、その日の営業が終了したら、現金残高と帳簿残高を突き合わせて、

差額が出た場合は、その原因を突き止める必要があります。

その日の現金売上は毎日、口座に入金すると同時に、現金出納帳などに記入し、記録として残しておきましょう。


現金に関してはもちろんですが、ほかにも在庫や仕入れ、経費の計上なども細かく調査されます。

特に個人商店では、個人的な支払いをレジに入っているお金で済ませてしまうなど、事業とプライベートの支出があいまいになりがちです。

顧問税理士などにも相談しながら、いつ税務調査が行われても問題のないよう、すべてにおいて適正な現金管理を行うことが大切です。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。

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  納品書でもOK? 領収書がもらえなかったときの対処法  2024-10-17

 

 経費を計上する際には、金銭の受取があったことを証明する領収書が必要になります。

商品やサービスを提供した側は、民法によって領収書を交付する義務を負いますが、

さまざまな理由から領収書が発行されないケースもあります。

また、発行された領収書を受け取っていても、商品やサービスを購入した側が領収書を紛失してしまうこともあります。

手元に領収書がなければ、経費を計上することはできないのでしょうか。

領収書がない場合の対処法について説明します。


もし領収書を発行してもらえなかったら……

 事業活動に必要な商品やサービスを購入した場合、その費用を経費として計上できます。

計上した経費は、収益から差し引くことができ、課税所得の額を減らすことにつながります。

日本は所得税、相続税、贈与税で所得や資産が多ければ多いほど税率が高くなる累進課税制度を採用しています。

個人事業主の場合、個人の所得を申告し所得税を納めることになるため、課税所得を減らせばその分、税負担を軽くできる可能性があります。

法人の場合は法人税を納めますが、必要な備品の購入費や接待交際費などを経費として計上することで、法人の所得を減らせ、

節税対策として活用することが可能です。

ただし、費用を経費として計上するためには、領収書が必要になり、支払先から領収書を受け取っていなかったり、紛失していたりする場合は、

経費として認められない可能性があります。


領収書は「受取証書」という書類の一種で、債権者が債務の弁済を受けたことを証明するために債務者に交付するものです。

債務というと一般的には借金をイメージしますが、法的には他人に金銭や物を渡す義務のことを指し、弁済とは債務が履行され、

債権を消滅させることを意味します。

債務の弁済と領収書の発行は「同時履行」といって、どちらも法的な義務となっており、

民法第486条では「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」と定めています。

平たくいえば、顧客が商品の提供を受けるのであればお金を払う義務があり、

お店はお金を受け取るのであれば商品を提供して、領収書を発行する義務があるということです。


原則として、利用者が求めた場合は領収書を発行する義務があるので、もし商品やサービスを購入して領収書が交付されない場合は、

お店や会社に領収書の発行を求めましょう。

売上をごまかす目的で相手が故意に領収書を発行しないケースもありますが、単純に渡しそびれていたり、

発行を忘れていたりすることがほとんどなので、発行をお願いすれば、通常は領収書を受け取ることができます。

もし、特に理由もなくお店や会社から領収書の発行を拒否された場合は、同時履行が成り立たないため、代金の支払いそのものを拒否しましょう。


領収書の代わりになるのはどんな書類?

 領収書が発行されなくても、支払いの事実があったことを証明する書類があれば、「受取証書」として処理することができます。

販売者の名前をはじめ支払い先や取引のあった日付、金額や商品名などの必要事項が記載されたレシートは受取証書として領収書と同等に取り扱われます。

たとえば、小売店で商品を購入した際に、手書きの領収書を発行してもらうこともあるかと思いますが、

万が一発行してもらうことを忘れていたとしても、レシートがあれば問題はありません。

また、経費計上を行ううえでは、請求書や納品書、各種利用明細書、出金伝票なども領収書の代わりに利用することができる場合もあります。


注意したいのは、領収書を紛失してしまい、さらに領収書の代わりになる書類も存在しないケースです。

こうした状況では、取引先のお店や会社に領収書の再発行を依頼したいところですが、相手にしてみれば、本当に紛失したのか、

経費の水増しが目的なのか判別できないため、原則として再発行を断ることにしているお店や会社もあります。

領収書を求められた場合、発行する義務はありますが、再発行は義務ではないため、断られても無理強いはできません。


もし領収書を再発行してもらえなければ、出金伝票に支払い先や取引のあった日付、金額や商品名などを記入しておきましょう。

出金伝票は出金があった際に、その内容を記載しておく伝票で、絶対ではありませんが、この出金伝票の記録をもって経費が認められる可能性もあります。


また、すべての支払いをクレジットカードや銀行振込にすれば、カード会社や銀行に支払いの履歴が残るため、領収書の代わりに、出金があったことを証明できます。

前提として領収書を紛失しないように管理しておくことはもちろんですが、紛失しても問題がない仕組みを構築していくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。


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 利用目的で決まる!『レンタルスペース』の勘定科目  2024-10-04

 

 近年は検索や予約ができる専用のポータルサイトなども誕生し、誰でも気軽に『レンタルスペース』を利用できるようになりました。

レンタルスペースはいわゆる貸し会議室のようなルーム型から完全個室のボックス型に、

オープンスペースで固定席を利用するコワーキングスペース型まで、タイプもさまざまです。

こうしたレンタルスペースを借りる際の費用について事業のために使用したものであれば、経費として計上することができます。

今回は、レンタルスペースを利用した際の勘定科目について解説します。


『レンタルスペース』利用料金の勘定科目 

    多くの企業や自治体が貸し会議室やレンタルスペースの貸出を行なっています。

また、住宅やマンションの一室、古民家や撮影スタジオなど、空いているスペースを貸したい人と借りたい人をつなぐ

プラットフォームも利用者を増やしています。

「インスタベース」や「スペースマーケット」、「スペイシー」や「カシカシ」などが

代表的なレンタルスペースのポータルサイトとして知られています。

コロナ禍をきっかけとしたリモートワークの浸透やシェアサービスの隆盛などもあり、

今後ますますレンタルスペースの需要は高まっていくのではないでしょうか。


ビジネスシーンにおいても、会議やセミナーだけではなく、物販会場や面接会場、顧客向けの体験教室など、

レンタルスペースの利用は多岐にわたり、アイデア次第でこれまでにないユニークな使い方ができるようになりました。


レンタルスペースの利用の多様化が進むなかで、気になるのが費用の仕訳です。

レンタルスペースの利用料金も会議やセミナーなど、事業に必要なものであれば経費として計上できますが、

適切な会計処理を行うためには、レンタルスペースの利用料金の勘定科目を把握しておかなければいけません。


では、実際にどういった勘定科目で仕訳をしていけばよいのでしょうか。

実は、レンタルスペースの利用料金の勘定科目は『利用目的』によって異なります。


たとえば、レンタルスペースを会議やミーティング、商談、株主総会などで利用した際は、勘定科目は「会議費」で分類します。

会議やミーティングの際のコーヒー代や弁当代なども会議費に含まれます。

会議に付随するものは、すべて会議費に分類して問題ありません。

一方、同じレンタルスペースを利用したとしても、社員研修や社内向けのセミナーなどに使用した場合は「教育訓練費」や「研修費」で分類します。

会議費と同様に、研修時に使用するテキスト代などは教育訓練費や研修費に含まれます。

また、レンタルスペースで新商品のPRを目的とした展示会や発表会、記者会見や説明会などを行なった場合は「広告宣伝費」に分類します。

レンタルスペースからオンラインの展示会に参加したり、商品PRの動画配信などを行なったりした場合も、広告宣伝費で問題ありません。


オフィスとして利用した場合の勘定科目

   会議や展示会などではなく、レンタルスペースをオフィスとして使用した場合は、どの勘定科目が適しているのでしょうか。

オフィスとして使用する場合は、『利用頻度』や『利用目的』によって勘定科目が異なります。


たとえば、オフィス環境を共有するコワーキングスペースとしての利用や、月1~2回ほど単発で利用するのであれば、

その費用については「賃借料」や「会議費」に分類できます。

1週間に複数回利用するなど、定期的に利用しているケースでは「賃借料」が適しているでしょう。

本社から離れた場所で機能させるサテライトオフィスとして、月契約でレンタルスペースを利用する場合は、

毎月の固定費が発生することになるため、費用を「地代家賃」に分類します。


レンタルスペースは賃貸物件のような賃貸借契約ではなく、あくまで利用契約に過ぎません。

しかし、勘定科目は契約の内容に左右されず、利用目的などによって判断されます。


勘定科目は利用目的や頻度に応じて自由に決めることができますが、社内で仕訳の方法を統一しておかないと、混乱を招くおそれがあります。

施設の利用目的と勘定科目を統一しておき、同じ目的でレンタルスペースを利用した際は、同じ勘定科目を使うようにすることで、帳簿が整理できます。

会社や事業内容によって仕訳の方法は異なるので、もし費用の計上や勘定科目で迷ったら、専門家に相談するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。


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  小規模企業こそ『経理のアウトソーシング』を検討したい理由 2024-09-19

 

 企業を経営するうえで欠かせない経理業務ですが、創業間もない会社や個人事業主などは、

験のある経理担当者を雇用する余裕がなく、経営者みずからが経理業務を行うことも少なくありません。

しかし、経理業務は専門的な知識が必要なうえに、ミスが許されない業務です。

作業も複雑で手間がかかるため、経理業務に追われて本業に注力できなくなるという本末転倒な状況は避けたいところです。

そこで、検討したいのが経理のアウトソーシングです。

経理業務に追われている経営者に向けて、経理のアウトソーシング導入のポイントを解説します。


経営者が経理業務を担当するリスク

   経理業務は日々の取引やお金の流れを数値化して管理する業務のことです。

おおかまには、売上(売掛金)や仕入(買掛金)の記録、請求書や領収書の処理など「社外取引に伴う入出金などの管理」と、

給料の支払や預金・現金管理などの「社内の資金などの管理」に分けることができます。

また、企業の規模によっても異なりますが、課税に必要な所得額を算出する税務会計や、

株主や銀行などに向けて経営状況を報告する財務会計なども、経理業務に含まれます。

こうした膨大で煩雑な経理業務を、小規模な企業では少人数もしくは一人で行わなければいけません。

人員に限りがある会社では、経営者が経理担当者を兼任するケースも珍しくありません。


しかし、経営者は必ずしも経理の専門家ではないため、思わぬミスが発生してしまったり、

かえって手間がかかってしまったりすることもあります。

また、経理業務は会社法や法人税法、金融商品取引法などの法知識が求められるため、法改正に合わせた知識のアップデートも必要不可欠です。

こうした経理業務が大きな負担となり、本業に力を入れることができないという経営者も少なくありません。


ある会計事務所の調査によれば、顧問税理士がいない会社の経営者と個人事業主のうち、

約7割が経営者みずから経理業務を行なっていることがわかりました。

もちろん、経営者と経理担当者の二足のわらじで順調に業績を伸ばしている会社もありますが、

通常は本業に支障が出てしまうことがほとんどです。

さらに、専門性のない経営者が一人で作業を行うことから、経理上のミスが生じやすくなるだけでなく、

ミスが起きても発覚しづらくブラックボックス化してしまうという危険もあります。

こうしたさまざまなリスクを解消し、経営者を助けてくれる方法の一つが経理のアウトソーシングです。


経理のアウトソーシングのメリットは?

   経理のアウトソーシングとは、社内の経理業務を外部の会計事務所や経理アウトソーシング会社に委託することを意味します。

業務を委託できる範囲は、契約内容や会社によってさまざまです。

たとえば、会社から派遣されたスタッフが社内に常駐して、すべての経理業務を受け持つこともできますし、

記帳代行などの一部の業務だけを依頼することも可能です。

経理をアウトソーシングするメリットのなかに、経営者が本業に専念することができ、ミスが発生しづらくなるという点があります。

経理の正確性が増すということは、対外的な信用や従業員の信用なども増すということです。

具体的な例でいえば、給与計算の間違いによって意図せず未払賃金が生じていた場合、労働基準法違反になるばかりか、

従業員の信頼を失うことにもなりかねません。

経理をアウトソーシングすることによって、給与計算の間違いなどが起きづらくなり、こうしたリスクも大幅に低減するでしょう。


また、経理をアウトソーシングすることは、属人化やブラックボックス化を防ぐことにもつながります。

一人の経理担当者が経理業務のすべてを取り仕切っている場合、その人ではないと入出金の管理や社内の資金管理ができないという状況に陥りがちです。

もし、その経理担当者が突然、退職してしまうと、大きな混乱を招いてしまうかもしれません。

アウトソーシングによって外部のスタッフが経理業務を担当することで、これらの事態を避けることができます。


こうしたメリットがある一方で、経理のアウトソーシングにはデメリットもあります。

その一つがコストです。

業種や業態、業務量にもよりますが、経理担当者を雇用する人件費よりも、外注費のほうが高くついてしまうこともあり、

派遣されたスタッフに常駐してもらう場合はさらに単価が上がるケースもあります。


経理のアウトソーシングの平均的な相場は、1カ月で15万円から利用可能といわれています。

コストを抑えるのであれば、依頼する業務を絞ったり、一時的に利用したりするなど、委託する内容や時期をよく検討しましょう。


そのほかのデメリットとして、経営者が数字をリアルタイムで把握できない、経理のノウハウを蓄積できない、

突発的なトラブルに対応できないなどの懸念点もあります。


大切なのは、経理をアウトソーシングするメリットとデメリットをよく理解しておくことです。

もし、利用するのであれば、自社の状況に合わせた適切な範囲や時期で、業務の委託を行うようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。


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  スタートアップ企業が活用できる『資金調達』の基本 2024-09-12

 

 設立したばかりのスタートアップ企業は、経営に使う運転資金を確保しなければならず、

そのための資金調達を行う必要があります。

しかし、スタートアップ企業は実績が乏しく、将来性も不透明なため、

銀行などからの借り入れがむずかしいケースがほとんどです。

では、多くのスタートアップ企業は、どのような方法で資金調達を行なっているのでしょうか。

起業家や経営者であれば知っておきたい、スタートアップ企業における資金調達の基本について解説します。


スタートアップ企業の成長ステージ

 スタートアップ企業は設立以降、段階を踏みながら成長していきます。

一般的にスタートアップ企業の成長ステージは『シード』『アーリー』『ミドル』『レイター』と区分され、

資金調達についてもそれぞれのステージに適した方法が存在します。


シード期とは、事業者が会社を立ち上げる前段階、もしくは初期の段階を指します。

ビジネスのアイデアやコンセプトなどは決まっているものの、まだ具体的に商品やサービスをリリースできていない状態です。

開発費や人件費などがかさむなかで、活動資金を確保しなければならないため、

自己資金が潤沢な場合を除き、多くの起業家はシード期の資金調達に苦労します。

このシード期に適した資金調達は、『シードアクセラレーター』や『エンジェル投資家』による投資です。


シードアクセラレーターとは、起業前・起業直後のシード期のスタートアップ企業に対して投資を行う団体や組織のことです。

スタートアップ企業のビジネスアイデアや事業者の資質などを、資金提供の有無を決める判断材料にしています。

出資額は数百万円からと少額ですが、出資だけではなく、協力者の紹介や助言、ノウハウやシェアオフィスの提供などの支援も行います。

シードアクセラレーターは投資だけではなく、起業家の育成を重視する団体・組織であり、

スタートアップ企業の大きな味方になってくれるはずです。


また、エンジェル投資家は、起業して間もないスタートアップ企業に出資する個人投資家のことです。

シードアクセラレーターと同様に出資額は少額ですが、もともとスタートアップ企業の経営者だった投資家も多く、

取引先の紹介やアドバイスなどのサポートを受けられる可能性があります。


一方、育成を行わず、あくまでスタートアップ企業への投資のみを目的とした投資会社を『ベンチャーキャピタル(VC)』と呼びます。

シードアクセラレーターやエンジェル投資家と並行して、VCからの出資も検討していきましょう。


こうしたシードアクセラレーターやエンジェル投資家、VCからの出資は、融資ではないため返済する義務がありません。

したがって、金融機関から融資を受けたものの、返済に追われて企業の成長が滞ってしまうといったデメリットがありません。


事業が軌道に乗った段階の資金調達

 アーリー期は、事業を立ち上げて、軌道に乗るまでの時期を指します。

企業が急成長するタイミングでもあり、組織の拡大や市場でのポジションの確立などに力を入れていく時期でもあります。

この時期は、シード期に調達した資金だけでは足りなくなり、追加の資金調達が必要になってきます。


アーリー期には、引き続きVCやエンジェル投資家の出資を受けつつ、より大きな資金提供を受けるため、

融資による資金調達も検討することになるでしょう。

ただし、銀行などから借り入れるのはまだむずかしく、

通常は政府系金融機関である日本政策金融公庫などが行なっている融資制度を利用することになります。

日本政策金融公庫では、スタートアップ企業や起業家に向けた創業融資制度として、

「新規開業資金」や「新事業活動促進資金」などを用意しており、低金利や無担保・無保証で融資を受けることも可能です。


そして、事業が軌道に乗ったミドル期になると、すでに一定の実績を重ねているため、

複数のVCからの出資や、企業との資本提携なども期待できるようになります。

また、銀行からの借り入れなども選択肢に入ってきます。


さらに、ミドル期を過ぎて、経営基盤が安定したレイター期に入ると、株式の上場を見据えた資金調達を行うことになります。

すでに銀行などからは優良企業だと認められており、融資も受けやすくなっているはずです。


このほかにも、投資型のクラウドファンディングや、補助金・助成金など、

さまざまなスタートアップ企業向けの資金調達が存在します。

大切なのは、自社の事業や方針、ビジョンなどに合わせた資金調達を選ぶことです。

それぞれの特徴をよく理解したうえで、適切な資金調達を行うようにしましょう。

※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。


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  延滞金や差押えの可能性も! 社会保険料を滞納するリスクとは 2024-08-15

 

 すべての法人と、常時5人以上の従業員を雇用している個人事業主は、原則、社会保険への加入義務があります。

社会保険とは、厚生年金保険や健康保険などの総称で、この保険料を事業者と従業員(被保険者)の双方が負担することになります。

社会保険料は、所得税や法人税のように赤字であれば免除されるというものではなく、加入している限り必ず毎月納めなければいけません。

もし、社会保険料の納付を滞納してしまうと、延滞金の加算や財産の差押えなどが行われます。

経営者や会計担当者に向けて、社会保険料を滞納するリスクを説明します。


社会保険料の滞納が原因の倒産が増加

国や自治体に納める社会保険料や税金などのことを『公租公課』といいますが、2023年度はこの公租公課の滞納を原因とした

企業の倒産が138件と、過去最多を記録しました。

公租公課のなかでも、特に毎月必ず納める必要のある社会保険料の滞納によって、倒産を余儀なくされた企業が相次いでいます。


コロナ禍で猶予されていた社会保険料の徴収が本格化したことに加え、円安や物価高などの影響もあり、猶予期間中に業績を立て直すことができず、

そのまま倒産してしまうというケースが少なくありません。

日本年金機構によれば、厚生年金などの保険料の滞納によって財産を差し押さえた事業所の数は、2023年度の上半期(4月~9月)時点で

約2万6,300社と、前年度の1年分に相当する数だったことがわかっています。


ただし、社会保険料を滞納したからといって、すぐに財産が差し押さえられるわけではありません。

差押えを受けるまでには、いくつかのステップがあるので確認しておきましょう。


まず、社会保険料が未納の場合は、納付期限を過ぎてから1週間ほどで年金事務所などから督促状と納付書が届きます。

もしくは、電話や訪問などによって、納付の催促を受けることもあります。

この時点で、督促状で指定されている期限(指定期限)までに保険料を納めれば、延滞金は発生しません。


しかし、指定期限を過ぎてから納付すると、延滞金が発生するので注意が必要です。

延滞金の額は、『納付期限の翌日』から実際に納付した日の前日までの日数に応じ、一定の割合を乗じて求められます。

指定期限の翌日ではないことに注意が必要です。

また、延滞金の額を求めるための割合は都度変更されるので、日本年金機構のホームページをチェックしておきましょう。


財務調査や強制捜査を経て差押えを実施

督促を受けても社会保険料を納付しないままだと、財務調査が行われます。

財務調査は、事業者の所有している現金や預貯金、不動産や売掛金などの財産を把握するためのもので、差押えの前段階のようなものです。


代表者への聞き取りなどを行う財務調査はあくまで任意ですが、応じない場合は、より強制力の強い強制捜査に切り替わります。

強制捜査は、代表者の自宅への立入りや、取引先への聞き取り、不動産や預金残高の調査などが行われます。

また、厚生年金の場合、捜査を拒否したり、妨害したりすると、厚生年金保険法に基づき、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる

可能性もあるので注意してください。


こうした調査や捜査によって財産が把握できると、ついに差押えが行われます。

差押えは不動産や売掛金なども対象になるため、自由に営業ができなくなったり、資金繰りが急速に悪化したりといった悪影響が考えられます。

取引先はもちろん、金融機関からの信用も失うことになり、融資を受けることもむずかしくなります。

また、経営状態への不安や不信から、従業員の離職なども相次ぎ、結果として倒産を招いてしまうというわけです。


このような社会保険料の滞納を原因とする『社保倒産』にならないためには、早い段階で各所に相談しておくことをおすすめします。

社会保険料が納付できなければ年金事務所へ、雇用保険や労災保険などの労働保険料に関しては、労働局へ連絡しましょう。

相談をしておけば、納付猶予や分納、滞納処分の停止などの緩和措置を受けられる可能性があります。


日本年金機構を管轄する厚生労働省は地方厚生局長宛に、社会保険料について滞納者からの納付方法の相談に丁寧に応じるように

通知を出しています。

また、社保倒産を多く扱う専門の弁護士であれば、経営再建も含めた包括的な相談に乗ってくれるでしょう。


社会保険料の滞納に関する問題は後送りにすればするほど、悪化してしまいます。

滞納してしまうことがないよう、できるだけ早めに対策を講じておきましょう。

※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。


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  事業承継における『遺留分』の問題を解消する民法の特例とは 2024-07-23

 事業承継を目的に、先代の経営者から後継者が自社株式や事業用資産などを譲り受けることが

あります。

贈与などで、一人の後継者に自社株式や事業用資産などを集中させておけば、

先代が亡くなった後も、これまでと変わらずに会社を運営していくことができます。

しかし、後継者以外にも相続人がいる場合、『遺留分』を巡るトラブルに発展し、

事業承継もうまくいかない可能性があります。

今回は、トラブルを起こさず、円滑な事業承継を行うために利用できる

『遺留分に関する民法の特例(民法特例)』の活用方法について説明します。


相続人の権利でもある『遺留分』とは?

先代の経営者から会社や個人事業を承継する場合に、考えておきたいのが『遺留分』の問題です。

遺留分とは、遺族の生活の安定や相続人同士の平等を確保するために、民法で定められている最低限の相続分のことです。


たとえば、相続人が複数人いるのに、被相続人である故人の遺言などによって一人の相続人が

ほとんどの財産を独占して相続したとします。

当然、ほかの相続人たちは納得できないでしょう。

その場合、ほかの相続人たちは財産を独占した相続人に対して、自分たちの遺留分を請求できます。

つまり、簡単にいえば、遺留分とは遺言などに影響されない相続人に最低限保証されている『取り分』のことです。


しかし、事業承継の際には、この遺留分がトラブルのもとになります。

先代の経営者が後継者である一人の相続人に対して、事業承継を目的に自社株式や事業用資産を集中させた場合、

ほかの相続人から遺留分を侵害されたとして、遺留分に相当する額の請求を受けることがあります。

遺留分を支払うために、後継者が自社株式や事業用資産を処分することになってしまうと、

スムーズな事業承継が妨げられてしまうかもしれません。


そこで、円滑な事業承継の実現を目的に、経営承継円滑化法では『遺留分に関する民法の特例(民法特例)』を規定しています。

この民法特例を活用すれば、先代の経営者から生前贈与や相続で自社株式や事業用資産を受け継ぐ際に、

ほかの相続人との遺留分を巡るトラブルを防ぐことができます。


対応策としての『除外合意』と『固定合意』

民法特例を活用することで、相続人全員の合意のうえで、自社株式や事業用資産の価額について、

『除外合意』と『固定合意』のどちらかの手段を取ることができます。


除外合意とは、後継者が先代から贈与や相続によって取得した自社株式や事業用資産について、

遺留分を算定するための財産の価額から除外できるというものです。

合意に至れば、ほかの相続人は自社株式や事業用資産について、遺留分を主張できなくなります。


一方、固定合意とは、遺留分を算定するための財産の価額について、

自社株式を合意時の「時価」で固定して算入するというものです。

固定合意を行なっておけば、株価が上昇しても遺留分の額に影響を及ぼすことはありません。

そのため、後継者の経営努力により自社の株価が上昇した場合でも、

ほかの相続人から上昇した額の遺留分を主張される可能性がなくなります。

ただし、固定合意は、自社株式だけに適応できる手段で、会社のみが利用できます。

そのため、自社株式がない個人事業では使うことができません。

また、合意時の時価については、相当な価額であることを税理士や公認会計士、弁護士などに証明してもらう必要があります。


これらの民法特例による除外合意と固定合意は、どちらか一方を利用することも、組み合わせて利用することも可能です。

適用を受けるためには、いくつか条件があり、会社であれば非上場の中小企業者で、

合意時点において3年以上継続して事業を行なっている必要があります。

また、先代の経営者もしくは後継者が、合意時点において会社の代表者でなければいけません。

さらに、後継者は株式の贈与などにより、会社の議決権の過半数を保有している必要があります。


この民法特例を利用するための手順としては、先代経営者の推定相続人全員(ただし、遺留分を有する者に限定)が

合意したうえで合意書を作成し、必要書類と共に経済産業省中小企業庁事業環境部財務課に提出します。

その後、経済産業大臣の確認と、家庭裁判所の許可を受けて、はじめて合意の効力が発生します。


相続人全員の合意が得られない場合などは、ほかの相続人を説得する必要があり、専門的な知識が必要になるかもしれません。

遺留分をめぐるトラブルの可能性があるのであれば、合意書の作成なども含めて、まずは専門家への相談を検討してみましょう。


※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。


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  事業承継の際には『青色申告承認申請書』の提出を忘れずに! 2024-07-10

  個人事業主が亡くなり、相続人が事業を承継する際に忘れずに行なっておきたいのが

『青色申告承認申請書』の提出です。

特別控除や赤字の繰り越しなどの節税メリットが受けられる青色申告制度ですが、

事業を相続したからといって、自動的に青色申告の適用が引き継がれるものでは

ありません。

事業承継をした相続人が青色申告の適用を受けるには、税務署に

青色申告承認申請書を提出する必要があります。

個人事業主から事業を相続する際における、青色申告承認申請書の提出期限などについて解説します。


節税メリットのある青色申告者になるには

 個人事業主などの事業所得がある人や、不動産所得や山林所得のある人は青色申告か白色申告の

どちらかで確定申告を行います。

青色申告を選ぶと、最高で65万円の特別控除や、生計を一にする配偶者や親族の給与を経費にできる

『青色事業専従者給与の特例』、純損失の繰越し控除や純損失の繰戻しによる還付など、

さまざまな節税メリットがあります。


新たに青色申告の適用を受けるためには、原則その年の3月15日までに『青色申告承認申請書』を

納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

もし、期日までに提出が間に合わなければ、その年の所得分は青色申告によるメリットは受けられず、

白色申告で確定申告を行うことになります。


確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、

原則翌年の2月16日~3月15日までに行う必要があります。

たとえば、2024年分の所得に関しては2025年3月15日が確定申告の期日となり、

この2024年分の確定申告を青色申告で行う場合には、2024年3月15日までに青色申告承認申請書を

提出しなければいけません。

なお、新規事業を始めた時期が1月16日以後の場合は、事業開始日から2カ月以内に提出する必要があります。


一度、青色申告の申請を行い承認されれば、以降の年は申請しなくても、継続して『青色申告者』となります。

しかし、被相続人から事業を引き継いだ場合は、たとえ被相続人が青色申告者だったとしても、

青色申告の適用は引き継がれず、相続人が新規で青色申告承認申請書を提出しなければいけません。


相続が発生すると、相続人は死亡届の提出など、死亡したことを届ける各種手続きを行う必要があり、

遺産の分割協議や相続税の申告といったさまざまな対応に追われます。

もし、被相続人が青色申告者として事業を行なっており、相続人がその事業を承継する場合には、

青色申告承認申請書の提出も忘れずに行いましょう。

被相続人の死亡日(相続人が相続の開始を知った日)によっては、申請書の提出期限が短くなることもあるので、

注意が必要です。


ちなみに、事業を承継する相続人がすでに個人事業主で青色申告者の場合は、

あらためて青色申告承認申請をする必要はありません。

また、承継する事業を会社(法人)で行なっていて亡くなった人が会社(法人)の経営者の場合、

会社(法人)が引続き青色申告法人となりますので、個人で青色申告承認申請をする必要はありません。


被相続人の死亡日によって異なる提出の期限

 事業を行なっていた被相続人が青色申告者で、その年の1月1日から8月31日に死亡した場合、

相続人は被相続人が亡くなった日から4カ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。

ただし、相続人が青色申告者になることを希望していなければ、提出する必要はありません。


また、被相続人に収入があった場合、相続人は1月1日から被相続人の死亡日までの所得について

所得税額を計算して税務署に申告する必要がある場合があります。これを『準確定申告』といいます。

準確定申告の期限は、青色申告承認申請書を提出する期限と同じ、相続の開始があったことを知った日の

翌日から4カ月以内です。

青色申告者になることを希望するのであれば、準確定申告と一緒に青色申告承認申請書を提出するようにしましょう。


一方、被相続人の死亡日がその年の9月1日から10月31日の場合は、その年の12月31日まで、

死亡日がその年の11月1日から12月31日の場合は、翌年の2月15日までに青色申告承認申請書を提出

しなければいけません。

もし、被相続人が10月31日に亡くなった場合は、提出までの猶予がわずか2カ月しかありません。

事業承継した相続人が青色申告者になるには、被相続人の死亡日をまず確認し、迅速に青色申告承認申請書を

提出しましょう。


また、被相続人が白色申告者で、相続人が新たに青色申告者になる場合は、原則、通常の青色申告の申請と同様に、

その年の3月15日までに申請する必要があり、その年の1月16日以後に事業を承継した場合は、

業務を承継した日から2カ月以内に青色申告承認申請書を提出します。


ちなみに、事業を引き継いだものの、途中で廃業などによって青色申告を取りやめる場合は、

取りやめようとする年の翌年3月15日までに『所得税の青色申告の取りやめ届出書』を納税地の所轄税務署長に

提出する必要があります。


青色申告承認申請書や所得税の青色申告の取りやめ届出書などは、税務署や国税庁のホームページで入手できます。

個人事業主から事業を引き継ぐ場合、青色申告承認申請書の提出など事業に関する煩雑な相続の手続きが発生します。

期限が設けられている手続きもあるため、ご心配な方は是非ご相談ください。

 

※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。


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  損金算入できる『飲食費』が1万円に引き上げ! その背景は? 2024-06-26

 

 2024年度の税制改正により、

2024年4月1日以降に発生する取引先との飲食費に関して、

損金算入できる上限額がこれまでの一人当たり5,000円から、

10,000円に引き上げられました。

事業者にとっては、取引先との関係維持や新規顧客の開拓などがしやすくなる

といったメリットが考えられます。

では、なぜ経費にできる飲食費の上限が10,000円に引き上げられたのでしょうか。

引き上げに至った背景や、会計処理の方法などを確認しておきましょう。


交際費のうち一部の飲食費は損金算入が可能

 会計上、取引先への接待、供応、慰安、贈答などを目的とした支出は、すべて『交際費』に該当します。

たとえば、取引先を招いた懇親会を開けば、会場代から飲食代に参加者のタクシー代まで、

すべての支出が交際費に含まれますし、取引先に送るお中元やお歳暮、取引先を接待するためのゴルフや旅行などに

かかった費用も交際費となります。


通常、自社の業務で発生した支出の多くは、経費として計上することができます。

出張のために飛行機を使えばその費用は旅費交通費として、

商品の広告や宣伝に使った費用は広告宣伝費として計上できます。


ただし、交際費に関しては、すべてを計上できるわけではありません。

交際費は損金不算入の原則がありますが、2006年度の税制改正によって、

交際費のうち一人当たり5,000円を上限とした『飲食費』については、損金として算入できることになりました。

つまり、一人当たり5,000円までの飲食費は、交際費の範囲に含まれないということです。


したがって、これまでは従業員が取引先との飲食代として使える額を一人当たり5,000円以下に

設定している企業が少なくありませんでした。

しかし、「飲食需要の拡大を妨げている」「物価が上昇している中で上限が5,000円では厳しい」

などの指摘が相次いだことから、2024年度の税制改正によって、損金算入できる飲食費の上限が

2024年4月1日より5,000円から10,000円に引き上げられました。


財務省発表のデータによると、1990年代初頭は約6兆円もあった企業の交際費は、

近年では3兆円前後の水準まで半減しています。

今回の税制改正で飲食費の上限を引き上げることにより、企業の営業活動を促進させ

収益機会の向上や飲食店の需要喚起を図り、経済の活性化を目的としています。


引き上げに伴う会計処理の注意点

 引き上げられた一人当たり10,000円の飲食費は、飲食店1軒に対しての上限です。

たとえば取引先の接待を伴う飲み会において、一次会と二次会を別のお店で開催した場合、

それぞれ一人当たり10,000円までは損金算入できます。

ただし、飲食費が10,000円を超えた場合に、10,000円の範囲だけを飲食費にすることはできません。

具体的な例をあげて説明すると、1軒につき一人当たりの飲食費が12,000円だった場合、

12,000円の全額が交際費となり、損金として算入できないので気をつけましょう。


ちなみに、10,000円を超えてしまった場合でも、自社の従業員だけで飲食店を利用した場合は

『福利厚生費』として、費用の全額を経費計上することが可能です。

ただし、その場合、全従業員が対象である、現物支給でない、

社会通念上妥当な金額であるなどの要件を満たす必要があります。


また、中小企業には交際費のうち800万円までを全額損金算入できる特例措置があり、

今回の税制改正によって、措置の期限が3年間延長(2027年3月末まで)されました。

飲食費が一人当たり10,000円を超えたとしても、中小企業であれば800万円までは交際費として全額損金算入できます。


経理担当者が会計処理する際には、消費税の取り扱いにも注意が必要です。

飲食費として認められるのは、税抜経理を採用している企業であれば『税抜』で10,000円まで、

税込経理を採用している企業であれば『税込』で10,000円までとなります。


税制改正に伴う5,000円から10,000円の飲食費の引き上げによって、

コロナ禍を経て売上が伸び悩む飲食産業の活性化と、企業間の取引の維持および拡大などが期待されています。

企業の会合や接待などの需要が多い飲食店は客単価を上げられますし、一

般の企業もこれまで以上に取引先との関係維持や、新規顧客の開拓などがしやすくなるでしょう。


まずは、社内規定や慣習などを見直し、利用できる飲食費の上限が5,000円となっているのであれば、

10,000円に修正し、同時に従業員への周知も行いましょう。


今回の税制改正をきっかけに、飲食店を活用した営業活動に力を入れてみてはいかがでしょうか。

※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。


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  会社設立直後は消費税が免除される? その条件とは 2024-06-19

 

 消費税を納める義務のある事業者を消費税の課税事業者と呼び、

消費税の納税が免除されている事業者のことを免税事業者と呼びます。

会社を設立した直後であれば、一定の条件を満たすことで、

免税事業者になることができます。

また、条件によっては、事業開始から2期目も消費税の免税を適用させることが

可能です。

会社を設立するのであれば、理解しておきたい消費税の免税について解説します。


消費税の『事業者免税点制度』とは

 新しく会社を設立する際には、法人税や法人住民税、法人事業税などとあわせて、

消費税についても気にしておかなければいけません。

消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課される税金のことで、

基本的には顧客から預かった消費税から、仕入れや経費などで支払った消費税を差し引いた分を

課税事業者が納税するという仕組みです。

会社を設立する際には、きちんと消費税を納税できるように、普段から資金繰りを考えていかなければいけません。

ただし、一定の条件に当てはまる事業者は、対象となる期間の消費税の納税が免除されます。

これは消費税の『事業者免税点制度』といい、小規模事業者の税務にかかるコストや

事務負担を配慮して設けられた特例措置です。

それぞれ適用される条件について説明していきます。


資本金が1,000万円未満の事業者の場合

 消費税の納税義務は、基準期間と特定期間の課税売上高などで判断します。

新たに設立された法人は基準期間がないため、原則として納税義務はありません。

資本金とは、会社を運営するうえでの資金のことで、経営者の資金のほか、

主や投資家から調達した資金も含まれます。

新しく会社を設立した際に、この資本金が1,000万円未満の場合は、

事業開始の1期目に関しては消費税の納税が免除されます。

2期目についても、一定の要件を満たすと消費税の納税が免除されます。

なお、資本金が1,000万円未満であっても特定新規設立法人

(親会社などが50%超の株式を保有し、かつ親会社などの基準期間相当の課税売上が5億円を超えている法人)

に該当する場合は、納税義務が免除されません。

一方、資本金が1,000万円以上の場合には、設立1期目から消費税の納税義務が生じるので留意しておきましょう。

また、資本金の判定は、期の頭である事業年度の開始日に行われるため、

たとえば資本金800万円の会社が1期目の途中で200万円を増資して資本金を1,000万円にした場合は、

2期目から課税事業者となります。

2006年5月に施行された新会社法によって、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。

しかし、資本金は会社の規模や経営体力の指標となるため、多いほうが融資の際などに信用を得やすくなります。

免税事業者でありつつ、事業の優位性を確保するのであれば、資本準備金を活用するという方法もあります。

会社法第445条2項では、資本金の額の2分の1を超えない金額までは資本準備金として、

資本金に計上しなくてよいことが認められています。

資本金を1,000万円未満にし、資本金の2分の1の金額を超えない範囲で

それ以外の資金を資本準備金としておくことで、会社としての体力を維持しながら、

免税事業者でいることができます。

資本準備金は資本金よりも赤字の際に取り崩しが容易なのもメリットの一つです。


基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合

 会社の設立後も、一定の条件を満たせば、消費税が免税されます。

その条件の基準となるのが、基準期間と特定期間の課税売上高です。

基準期間とは、法人における前々事業年度のことで、基本的には2年前の事業年度が該当します。

この基準期間の課税売上高が1,000万円を超えなければ、消費税の納税義務は発生しません。

なお、基準期間が1年でない法人の場合は、

1年相当に換算した金額で判定することになっていますので、注意が必要です。

新しく会社を設立した場合は、基準期間が存在しないので、資本金が1,000万円未満などの要件はあるものの、

原則として2期目までは消費税の納税が免除されることになります。


しかし、新しく設立した会社でも、

特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、2期目は課税事業者になります。

特定期間とは、その事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間のことを指します。

たとえば、2023年4月1日に決算日が3月末の会社を設立した場合、

2024年4月1日の時点で前事業年度は2023年4月1日から2024年3月31日までになり、

特定期間は2023年4月1日から2023年9月30日までの6カ月になります。

なお、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、

従業員に支払う給料支給額の合計が1,000万円以下であれば、2期目も免税事業者となります。

特定期間における納税義務の判定を、課税売上高か給料支給額の合計のいずれにするかは

納税者の任意で選択できます。

ただし、特定期間の課税売上高と給料支給額の合計が、ともに1,000万円を超えている場合は

原則として課税事業者となるので留意する必要があります。


新たに設立された法人の場合、資本金が1,000万円未満、

基準期間と特定期間の課税売上高が1,000万円以下といった条件を満たしていれば、

第1期と第2期の消費税の納税義務は生じません。

しかし、2023年10月1日からインボイス制度がスタートしたことで、

会社を設立したばかりでも課税事業者になっておいたほうがよいケースも出てきました。

免税事業者のままだと適格請求書が発行できず、

課税事業者である取引先や顧客は仕入税額控除を受けることができなくなります。

特に事業の拡大や販路の開拓が重要になる会社設立の初期は、免税事業者であることが不利に働く可能性もあります。

こうした実情も踏まえながら、課税事業者と免税事業者のどちらで事業を行うのか、

会社を設立する前に、よく考えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。

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  2026年末まで延長!『住宅取得等資金の贈与税の非課税措置』とは 2024-06-12

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税措置』とは、親や祖父母などの直系尊属から

住宅の購入や増改築のためのお金を受け取っても、一定額まで贈与税がかからない制度です。

贈与を受けた年の1月1日時点で、18歳以上の受贈者が対象です。

当初は2023年12月末までが適用期限とされていましたが、

『令和6年度税制改正』により、2026年12月31日まで延長されることが決定しました。

今回は制度の概要や申請方法や、注意点について解説します。

 

住宅購入時、親などからの贈与が非課税に

 『住宅取得等資金の贈与税の非課税措置』とは、

住宅を購入、建築するための資金を親や祖父母などの直系尊属から贈与された場合に、

贈与税が免除される仕組みです。

通常は親族間のやりとりであっても、財産が無償で渡された場合は「贈与」とみなされ、

その年の1月1日から12月31日までの1年間に110万円を超える贈与を受けた場合には

贈与税が課税されます。

この制度を活用することで、贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、

それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。

しかし、適用には一定の要件を満たす必要があるため、注意が必要です。


【受贈者の主な要件】

(1)贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。

(2)贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。

(3)贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下

(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)であること。


【住宅の主な要件】

 新築または取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が

40平方メートル以上240平方メートル以下で、かつ、

その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。


このほかにも要件が細かく規定されていますので、詳細は国税庁などのオフィシャルサイトを確認しましょう。

また、非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、

非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、

新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。


親の住宅を相続する場合に注意することは?

 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置には、住宅購入のハードルが下がるメリットがあります。

ただし、将来的に親の住宅を遺産として相続することを考えている場合、いくつかの留意点があります。

まず、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置を活用していると、多くの場合、小規模宅地等の特例を使うことができません。

小規模宅地等の特例は、相続した宅地などの評価額を最大8割下げる軽減措置を受けられる節税効果の高いものですが、

適用の要件に「相続開始時までに、持ち家に住んだことがないこと」が含まれています。

親からの資金援助を受けて住宅を購入している場合、ほとんどのケースで、この要件を満たすことができません。

住宅を取得した時にかかる税金も、相続のほうが基本的に有利です。

不動産取得税は相続の場合は非課税ですし、登録免許税についても、贈与より相続のほうの税率が低くなっています。

また、住宅取得等資金の贈与は、将来遺留分を算定する場合に、遺留分の基礎となる財産に含まれることとなるため注意が必要です。

住宅取得等資金の贈与は、相続時精算課税制度とも併用することができ、併用する場合には、

60歳未満の直系尊属でも相続時精算課税制度の贈与者として認められるなど、

それぞれの制度の非課税枠の利用が可能になるという利点もあります。

興味のある方は検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。

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  労使協定の締結などに関わる『過半数代表者』の正しい選出方法 2024-06-05

 

業員と労使協定を結ぶ際などには、

従業員の過半数で組織する労働組合から意見を聞く必要があります。

そして、もし会社に組合がなければ、従業員のなかから『過半数代表者』を

選出してもらうことになります。

過半数代表者とは、従業員の過半数を代表する者のことを指します。

しかし、過半数代表者の選出方法が適正ではないと、

締結した労使協定や変更した就業規則が無効になる可能性があります。

労働法に基づく正しい過半数代表者の選出方法を理解しておきましょう。


従業員の主導で選ばれる過半数代表者とは

 労働基準法により、法定労働時間は原則1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められています。

これを超えて従業員に労働させる場合は、使用者と従業員との間で、

労働基準法第36条に基づく労使協定、いわゆる『36(サブロク)協定』を結ばなければいけません。

また、36協定以外にも1カ月または1年単位などの変形労働時間制に関する協定や、

フレックスタイム制に関する協定、事業場外労働に関する協定や代替休暇に関する協定、

賃金控除に関する協定など、多くのケースで従業員との労使協定の締結が必要になります。


常時10人以上の従業員を使用する事業場では就業規則を定める義務があり、

この就業規則を作成したり変更したりする場合も、本来はすべての従業員の意見を聞くことが望まれます。

しかし、使用者である事業者側が全従業員と協定を結んだり、意見を聞いたりすることは現実的ではありません。

そこで、労使協定を締結したり、就業規則を変更したりする場合は、過半数の従業員で組織する労働組合か、

組合がない場合は『過半数代表者』を選出して、やり取りをすることになります。

労働組合は全国に約2万3,000組合ほどありますが、

事業規模が99人以下の企業における労働組合のある割合は0.8%ほどなので、

多くの中小企業では過半数代表者が労使協定や就業規則に関わる当事者となります。


この過半数代表者を決める際に注意したいのが、選出方法です。

過半数代表者は従業員の過半数を代表することになるため、従業員のなかから選んでもらう必要があります。

会社が代表選出の手続きに関与したり過半数代表者を指名したりしてはいけません。

会社の意向に基づいた過半数代表者と結んだ労使協定は、無効になります。

たとえば、使用者が指名した場合や、社員の親睦会の幹事などを自動的に選任した場合なども、

労使協定を結ぶために選ばれたとはいえないため、過半数代表者とは認められません。

また、労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者も経営者側の立場とみなされ、過半数代表者になることはできません。

ここでいう管理監督者は、労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことで、

肩書や職位でなく、その職務内容や責任と権限などの実態によって判断されます。


全従業員が参加して民主的な方法で選出

 過半数代表者は、従業員一同による投票や挙手、もしくは話し合いや持ち回り決議など、

従業員の過半数がその人を選んだことがわかるような民主的な方法で選出します。

ただし、すべての従業員に対して過半数代表者の選出に関するメールを送り、

返信のない人を信任(賛成)したものとみなす方法は、過半数が支持しているとはいえない場合があるので注意が必要です。


また、過半数代表者はすべての従業員の過半数を代表することになるため、

選出には正社員だけでなく、パートやアルバイトなどにも参加してもらう必要があります。

会社は選出に関与してはいけませんが、意見の集約に必要な社内メールや、

事務スペースの提供などは必要に応じて行うようにしましょう。


選出において、過半数代表者が適正な方法によって選ばれたことを証明するために、会

議の議事録や投票記録などを提出してもらいましょう。

同時に、選ばれた過半数代表者が管理監督者ではないことを示すため、

そのときの労働条件なども記録しておくことをおすすめします。


そして、使用者が特に注意したいのは、過半数代表者に対する取り扱いです。

過半数代表者であることや、過半数代表者になろうとしていたことを理由に、

当該の従業員に対して、解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いをしてはいけません。


使用者は過半数代表者が従業員の過半数を代表する者であることを意識しながら、

労使協定や就業規則に関するやり取りを進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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  源泉徴収の際に行う『定額減税』の計算方法と注意点 2024-05-28

 

 ここ最近は物価の高騰に賃金の上昇が追いついておらず、

多くの人が経済的な負担を強いられています。

こうした負担を緩和する一時的な措置として、『定額減税』が実施されることになりました。

定額減税とは、納税者本人やその扶養家族を対象に、

一人当たり所得税から3万円、住民税から1万円の合計4万円が減税される制度です。

2024年6月からスタートする定額減税ですが、

従業員を雇用している事業者はどのような対応が必要になるのでしょうか。

制度のあらましと、定額減税の計算方法について解説します。


定額減税の対象者を確認しておく

 2024年3月に所得税法と地方税法の改正案が衆院本会議で可決され、6月から定額減税の実施が決まりました。

定額減税は税金から一定の額を差し引く制度ですが、事務処理はとても複雑です。

ここでは、順を追って事業者が行うべき対応を説明していきます。


まず必要なのは、定額減税の対象者の確認です。

 定額減税の対象となるのは、給与収入だけの場合、給与収入(所得税は2024年分、住民税は2023年分)が

2,000万円以下の従業員本人と、同一生計配偶者および扶養親族です。

給与収入以外にも収入がある場合は、合計所得金額(所得税は2024年分、住民税は2023年分)が

1,805万円以下の本人と、同一生計配偶者および扶養親族が対象となります。

この制度は富裕層を対象としたものではないため、給与収入が2,000万円以上の従業員と、同一生計配偶者および扶養親族は

定額減税を受けることができません。


定額減税では、一人当たり所得税から3万円、住民税から1万円の合計4万円が減税されることになります。

従業員から提出された『扶養控除等申告書』をもとに、対象者の人数を把握しておきましょう。

たとえば、ある従業員に同一生計配偶者がいる場合、その従業員の減税額は本人と同一生計配偶者の2人分となり、

所得税から6万円、住民税から2万円の合計8万円が減税されます。

ちなみに定額減税の対象となる同一生計配偶者は、従業員本人の合計所得金額が900万円超1,805万円以下の場合でも

配偶者の合計所得金額が48万円以下であれば対象となり、

従業員本人の合計所得金額にかかわらず配偶者の合計所得金額が48万円超の場合は対象とならないなど、

所得税法上の控除対象とは範囲が異なります。

また、定額減税の対象となる扶養家族は、所得税法上の控除対象となる扶養親族だけではなく、

16歳未満の扶養親族も含まれます。

扶養控除等申告書に記載のない同一生計配偶者や16歳未満の扶養親族がいる従業員には

別途『源泉徴収に係る定額減税のための申告書』を提出してもらい、対象者に加えておきましょう。


所得税から減税する際の計算方法

 対象者を把握したら、2024年6月1日以降に支払う給与や賞与に対して、減税の計算をしていきましょう。

所得税の定額減税は従業員に給与を支払う際に、源泉徴収額から定額減税額を控除する方法で行います。

これを『月次減税事務』といいます。

月次減税事務の具体的な計算方法は、2024年6月1日以降の源泉徴収税額から各人の定額減税額の分を

使い切るまで控除していくというものです。

具体例として、扶養親族が1人いる従業員で、毎月の源泉徴収額が固定で1万円というパターンで説明します。

この場合、所得税の減税額は一人当たり3万円×2人で6万円になり、

6月から11月までの6カ間、毎月1万円ずつ減税額として合計6万円を控除していきます。

つまり、6月から11月まで源泉徴収税額は0円になり、12月から通常の源泉徴収税額に戻るということになります。

その月の源泉徴収税額から定額減税額を控除しきれない場合は、

2024年中に支払う給与や賞与などの源泉徴収税額から順次控除していきます。


このとき、月次減税事務においては、対象者の減税額と控除した額を把握しておく必要があるため、

国税庁のホームページで公開されている見本を参考にしながら、『各人別控除事績簿』を作成しておきましょう。


また、月次減税事務は、2024年6月1日に在籍している定額減税の対象者となる従業員に対して行うもので、

6月2日以降に入社した従業員に対しては、年末調整の際に定額減税の精算を行います。

この年末調整時点の減税額に基づく精算のことを『年調減税事務』と呼びます。

なお、年末調整での精算については、国税庁ホームページで2024年9月頃から各種情報が掲載される予定です。

所得税の定額減税は、月次減税事務と年調減税事務によって行われることを覚えておきましょう。


住民税から減税する際の計算方法

続いて、住民税の減税額の計算方法について説明します。

まず制度がスタートする月となる2024年6月の分は住民税額を0円に設定し、

定額減税後の年税額を2024年7月から2025年5月までの11カ月で割り、各月に振り直します。

扶養親族がいない従業員(住民税の減税額が1万円)で、毎月の住民税額が固定で5,000円のパターンを例として解説します。

この場合、年間の住民税額は5,000円×12カ月で6万円になり、そこから減税額の1万円を差し引くと、5万円になります。

この5万円を11カ月で割り各月に振り直すと、毎月の住民税額は四捨五入して4,545円になります。


従業員一人ひとりの減税額を求めるのは大変ですが、事業者がこれらの計算をする必要はありません。

原則として、従業員個人に対しては各市区町村から定額減税を反映した『特別徴収税額決定通知書』が送付されるので、

事業者はその通知書に記載された金額をもとに控除を行います。


このように、所得税と住民税の定額減税には、事務負担が増大する可能性があるため、

事業者は準備を進めておく必要があります。

減税額の控除後も給与支払明細書への控除額の表示や、源泉徴収票への記載といった事務作業が増えますし、

従業員の所得税額や住民税額にも変化があるため、個々に伝わるよう周知しなければいけません。

6月の制度開始まで間もなくです。

ほかにも定額減税にはさまざまな注意事項があるため、国税庁のホームページなどで詳細を確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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  免税事業者が『インボイス制度』に対応したほうがいい場合とは? 2024-05-22

 

 2023年10月1日のスタートから半年以上が経った『インボイス制度』は、

売手である適格請求書発行事業者の発行した『適格請求書(インボイス)』によって、

買手の課税事業者は仕入税額控除の適用を受けることができるという制度です。

実は、インボイス制度の影響を受けないとされている業種でも、

状況によっては適格請求書発行事業者の登録を行なったほうがいいケースもあります。

免税事業者が登録をするか否かを判断するためのポイントについて説明します。


一般の消費者が顧客であれば登録は不要!?

   インボイス制度に関係するのは、消費税の免税事業者と課税事業者です。

報酬に消費税が含まれていない会社員やアルバイトなどの給与所得者は、

影響を受けることがありません。


また、適格請求書発行事業者として登録せず、免税事業者のままであっても、

大きな影響を受けない業種があります。

具体的には、美容室や理髪店、サロン、マッサージ店、スポーツジム、学習塾や英会話教室など、

一般の消費者が顧客の業種です。

一般の消費者は、みずからが購入した商品やサービスについて直接消費税を納める必要がなく

、仕入税額控除の適用を受けることもありません。

したがって、一般の消費者を顧客にしている業種は、適格請求書発行事業者として登録せずに、

免税事業者のままで問題ないということです。


ただし、一般消費者向けの業種でも、不特定かつ多数の顧客を相手に商品やサービスを提供する業種は、

その限りではありません。

具体的には、飲食店業、小売業、写真業、旅行業、駐車場業、タクシー業などの業種です。

これらの業種は、顧客の個人事業主や会社員が仕事で商品やサービスを購入した際に、

その代金を経費として計上する必要があるからです。

たとえば、会社員が取引先に移動する目的でタクシーを利用した際に、

タクシー業者から発行された領収書が適格請求書ではない場合、会社側は会社員から経費精算のために

その領収書を渡されても、仕入税額を控除することができません。


そこで、このように不特定多数が利用する業種では、書類を受け取る人や会社の名前の記載がないレシートや領収書を

『適格簡易請求書(簡易インボイス)』として交付することが認められています。


また、一般の消費者が顧客の業種以外にも、取引先や顧客が免税事業者、

もしくは簡易課税事業者の場合もインボイス制度の影響は受けません。

免税事業者は仕入税額控除の適用を受ける必要がありませんし、簡易課税事業者は売上に対して事業区分に応じた

『みなし仕入率』をかけて納める消費税を算出するため、仕入の領収書や請求書が適格請求書かどうかは関係しないからです。


免税事業者のままでも取引は継続する?

   インボイス制度の導入直前には、「個人事業主が適格請求書発行事業者として登録せずに免税事業者のままでいると、

取引先から取引を中断されるリスクがあるのではないか?」という声も上がりました。

買手である取引先からしてみれば、免税事業者との取引は仕入税額の控除が受けられなくなり、

いわゆる「損をしてしまう」ことになるため、同じ仕事であれば適格請求書を発行できる課税事業者へ発注するほうが

メリットになるからです。


一方、高い専門性を持つデザイナーや職人、イラストレーターやエンジニアなどは、

取引先が同等のスキルを有した課税事業者を探して発注するほうがコストも工数もかかってしまいます。

この場合は、個人事業主が免税事業者のままでも、継続して取引が行われる可能性は高いでしょう。


1年間の課税売上が1,000万円を超えている場合などは、すでに課税事業者となっているため、

消費税の納付義務が発生します。

適格請求書発行事業者の登録をしても負担する税額が変わらず、新たな負担は生じません。


免税事業者が適格請求書発行事業者として登録することは、取引先の税負担を減らすことにもなります。

また、適格請求書発行事業者となることで、既存の取引先以外にも新たな販路が開拓できるといった

メリットを享受できる可能性もありえます。

取引先が課税事業者で自身が免税事業者の場合、取引先と良好な関係性を築けているか、

もしくは、これから築いていくつもりがあるのかといった視点も、

適格請求書発行事業者として登録するか否かの大きな判断材料となるでしょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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  どうする電帳法? 未対応に対する新たな『猶予措置』の要件とは? 2024-05-08

 

 電子帳簿保存法(以下、電帳法)が2022年1月に改正され、猶予期間の終了により

2024年1月1日から電子取引データ保存の義務化がスタートしました。

法人税や所得税に関して、帳簿や書類の保存義務が課されている法人や個人事業主は、

電子取引データの保存に対応する必要があります。

猶予期間終了後も未対応のままでいると、過料や加算税が科せられる可能性がありますが、

一定の要件を満たすことで猶予措置を受けることができます。

今回は電子取引データの保存義務化で注意すべきポイントについて説明します。


電子取引データ保存未対応の罰則とは?

 電帳法とは、各税法上で保存が必要となる「帳簿」や「国税関係の書類」などの

電磁的記録(電子データ)の保存に関する法律のことです。

2022年の改正によって、2024年1月1日から法人と個人事業主に対し、

注文書・契約書・納品書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する書類を電子データでやりとりした場合には、

紙ではなく電子データのまま保存することが義務づけられました。

これが、『電子取引データ保存の義務化』です。


義務化によって電子取引データの保存が必要になり、プリントアウトした書面のみを保存することは認められなくなりました。

たとえば、取引先から電子メールでPDFの請求書が送られてきた場合、

プリントアウトして紙で保存すると同時にPDFも保存すれば問題ありませんが、

紙で保存しているからといってPDFを破棄してしまうと、電帳法違反になってしまいます。


電子取引データ保存の義務化に対応するためには、

要件を満たした会計ソフトやクラウドサービスの導入が必要になる場合もありますし、

データの保存方法や管理方法も見直さなければいけません。


猶予期間が終了した2024年1月1日以降も電子取引データ保存に対応していない場合は、

書類の不備や不正、改ざんなどを疑われ、税制上で多くのメリットがある青色申告の承認を取り消されたり、

重加算税10%が加算されたりする可能性があります。

また、保存義務の違反は会社法第976条に定められている「過料に処すべき行為」に抵触する可能性もあり、

違反とみなされれば100万円以下の過料が科せられる場合があります。


電帳法は2021年度の税制改正で改正され、2022年1月1日に施行されましたが、

電子化の対応が間に合わない事業者が多かったことから、電子取引データ保存の義務化については、

2023年12月31日まで2年間の猶予期間が設けられていました。

しかし、電子取引データの保存にあたり『検索機能の確保』が多くの事業者にとって大きなハードルとなっており、

猶予期間を過ぎても対応が間に合っていない事業者がいることから、

2023年度の税制改正で新たな猶予措置が設けられることになりました。


新しい猶予措置で満たすべき二つの要件

 電帳法に基づく電子取引データの保存は、国税庁の定める要件を満たす必要があります。

タイムスタンプの付与や履歴が残るシステムでの保存など、改ざん防止のための措置を取り、

「日付・金額・取引先で検索」することができ、さらに、電子取引データがいつでも確認できるように

「ディスプレイやプリンタ等を備え付ける」必要があります。

これらの要件を満たさないまま保存した電子取引データは、書類の不備を指摘される可能性があります。


しかし、新たな猶予措置の要件を満たしていれば、改ざん防止や検索機能など、

保存時に満たすべき要件に沿った対応が不要となり、単純に電子取引データをパソコンなどに保存するだけで済むことになります。


新たな猶予措置が認められるための要件は、以下の二点です。

(1)保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、

所轄税務署長が「相当の理由」があると認める場合(事前申請は不要)。

2)税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」およびその電子取引データを

「プリントアウトした書面の提示・提出の求め」にそれぞれ応じることができるようにしている場合。


(1)の「相当の理由」についてはケースごとの判断となりますが、資金繰りや人員不足、

システム整備が間に合わないなどの理由で未対応の場合には、相当の理由に該当すると認められる可能性があります。

(2)の税務調査の際には、税務署の職員から要求された電子取引データをダウンロードしたり、

そのデータを印刷したりしたうえで、未対応の理由や今後の見通しなどを説明できるようにしておきましょう。


現状、猶予措置には期限が定められておらず、猶予措置を受けるための事前申請なども不要ですが、

いつまでも未対応のままでいると、「相当の理由がない」と判断されるおそれがあります。

未対応の法人や個人事業主は、できるだけ早く対応できるように準備を進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。

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  『ローン返済』のなかで経費として計上できる項目は?  2024-04-24

 

 法人や個人事業主は、事務所に使用する建物や社用車を購入する際にローンを組むことがあります。

こうしたローンで購入した不動産や車は、購入費用を減価償却して毎年経費にできるほか

ローンの返済時にも利息を経費として計上できます。

しかし、返済時に経費にできるのは金利のみで、借入金の元本は経費にすることができません。

また、事業のためにローンで購入したものを私的に使用した場合は、

利子が経費として認められないこともあります。

今回はローンにまつわる経費計上について解説します。


社用車の個人利用で利息が経費計上不可に!

 法人や個人事業主が事業用に建物や車などを購入する際は、現金一括による支払いではなくローンを組むことによって、

手元に事業資金を残しておけるというメリットがあります。

そもそもローンとは、金融機関から資金を借りて、毎月決められた額を返済する仕組みの金融商品のことです。

ローンの返済は、借入金である「元本」と、元本に対する「利息」で構成されます。


利息は借入金の額や返済期間、借入先などによって利率が大きく異なります。

たとえば、カーローンの借入先には、金融機関やカーディーラー、信販会社などがあります。

金融機関系のローンは利率の相場が年2~4%ほど、カーディーラー系のローンは金融機関系よりも高く、

5~10%程度となっています。


カーローンは、一般的なマイカーローンのほかに、法人名義でローンを組める法人向けのカーローンもあります。

法人向けのカーローンを利用する場合、会社の財政状況や事業内容について借入先から審査を受けなければいけません。

会社を設立したばかりのタイミングでは信用度が低いため、借入先の審査が通らない可能性もあります。


また、法人名義の車は事業以外に使用することができません。

法人向けのカーローンは、ほかの法人向けのローンと同様、返済時に利息を経費として計上できます。

しかし、法人名義の車を個人で利用したことが発覚すると、利息が経費として認められないことがあるので注意しましょう。

さらに、法人名義で車を購入する場合には、車種にも注意が必要です。

具体的な指定があるわけではありませんが、スポーツカーや高級車などは、税務署から事業の用に供する社用車として

認められない場合があります。

ただし、実際の走行距離などから事業に使用していることが証明できれば、スポーツカーや高級車でも

社用車として認められる可能性があります。


ローンの元本と利息の勘定科目

 事業のために組んだローンの利息を経費として計上する場合は、「支払利息」という勘定科目で計上します。

購入代金のすべてをローンで支払う場合には、購入時にローン利用額を「未払金」で処理し、

頭金や手付金などを一部支払っているのであれば、その額を「前払金」とする仕訳が必要です。

購入時には、未払金から前払金を差し引いた額がローンの利用額となります。

そして、ローンの返済時には、未払金として計上している元本から返済分を差し引くと同時に、

利息分となる支払利息を経費計上する必要があります。


では、なぜ利息は経費計上でき、元本は計上できないのでしょうか。

元本が経費として計上できないのは、金銭の貸し借りは損益とは無関係であるという前提があるためです。

税金は損益に対して課税されますが、借入金は損益には該当しないため、同じように返済した借入金の元本も経費にはなりません。

これは、事業資金専用のビジネスローンだけでなく、個人事業主の住宅ローンなどでも同じです。

ただし、ローンの元本は経費になりませんが、建物や車の減価償却費は経費として計上することができます。

つまり、建物はもちろんですが、事業用にローンで購入した車も固定資産となるため、

「減価償却」を行うことになります。

減価償却とは、経年劣化する固定資産を一度に経費計上するのではなく、

一定の年数に渡り分割して計上する会計処理の方法のことです。

固定資産は、国税庁によって法定耐用年数と計算方法がそれぞれ定められています。

たとえば、法人が新車の普通自動車を購入した場合は、法定耐用年数は6年になり、

『定率法』という計算方法を使うのが一般的です。


法人名義で建物や車などをローンで購入した場合は、減価償却費や利息、さらに手数料や維持費、

保険料や税金なども経費計上することができます。

一方、ローンの元本などは経費計上できないので、会計処理を誤らないように注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。

税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。

     

  個人事業主も該当する場合がある『源泉徴収義務者』の基準  2024-04-17

 

 法人が従業員に給与を支給する際には、あらかじめ所得税の分を給与から差し引いた額を

支払います。

外注先等(個人事業主)に報酬を支払う際も同様に、原則、報酬から所得税の分を差し引きます。

差し引いた所得税は、所得が発生した月の翌月10日までに納付しなければいけません。

この仕組みを『源泉徴収』といい、源泉徴収を行う必要がある者のことを

『源泉徴収義務者』と呼びます。

また、個人事業主でも、状況によっては源泉徴収義務者になるケースがあります。

今回は、個人事業主が源泉徴収義務者になる基準について解説します。


源泉徴収をする理由と源泉徴収義務者の範囲

 所得税とは個人の所得に対してかかる税金で、基本的には本人が1年間の所得から所得税の額を計算し、

みずから税務署に納付する必要があります。

個人事業主が確定申告を行うのは、この所得税を申告して納付するためでもあります。

しかし、会社に勤めているすべての人が自分で確定申告を行うことになると、混乱が生じ、税務署側も対応しきれなくなります。

そこで、日本では会社が給与から差し引いて自社従業員全員の所得税分を預かり、

まとめて納付する源泉徴収という方法が採用されています。

会社員はみずから所得税を計算したり、納付したりする手間が省け、

税務署は徴税手続きの簡略化と申告漏れの防止が実現できます。


この源泉徴収を行う源泉徴収義務者は、法人だけではなく、給与の支払いが発生する学校や官公庁、

人格のない社団・財団なども該当します。

また、個人事業主も従業員を雇用していると源泉徴収義務者になります。

源泉徴収義務者に該当するか否かは、従業員を雇用して給与を支払っているかどうかで決まります。

ただし、個人事業主が常時2人以下の家事使用人のみを雇用している場合は、

給与を支払っていたとしても源泉徴収をする必要はなく、源泉徴収義務者にもなりません。

源泉徴収義務者は従業員だけでなく、外注先等(個人事業主)に報酬を支払う際も、源泉徴収を行う必要があります。

源泉徴収の対象になる報酬は、国税庁によって以下のように定められています。


1.原稿料や講演料など

2.弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

3.社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

4.プロ野球選手、プロサッカー選手、プロテニス選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金

5.映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才など)、テレビジョン放送等の出演などの報酬・料金や

芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

6.ホテル、旅館などで行われる宴会などにおいて、客に対して接待等を行うことを業務とする

いわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金

7.プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

8.広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金


源泉徴収義務者がこれらの報酬を支払う際には、あらかじめ所得税分を報酬から差し引いて、

その分を納付する必要があるということです。


源泉徴収をされる・する側の両方になる場合


 注意したいのは、源泉徴収義務者である個人事業主は、源泉徴収をされる側とする側の両方になる可能性があるということです。

たとえば、源泉徴収義務者の個人事業主であるAさんが法人のB社から仕事を受注し、

業務の一部を別の個人事業主であるCさんに発注したとします。

Aさんは自分の報酬に関しては、B社から源泉徴収をされる立場となり、Cさんに支払う報酬に関しては、源泉徴収を行う立場になります。

この場合、Aさんの所得税分はB社が源泉徴収によって税務署に納付し、

Cさんの所得税分はAさんが源泉徴収によって税務署に納付することになります。

一方で、もしAさんが源泉徴収義務者でなければ源泉徴収の必要はなく、Cさんが自分で所得税を納めることになります。

また、本来、税理士や弁護士、司法書士などに報酬を支払う場合は、支払金額に応じて源泉徴収をする必要がありますが、

源泉徴収義務者でなければこれらの報酬も基本的に源泉徴収は不要です。


では、これまで源泉徴収義務者でなかった個人事業主が、新規事業を始めることで給与を支払う立場になり、

源泉徴収義務者になった場合はどうでしょうか。

源泉徴収義務者になったのは、従業員に給与を支払っていることが主な要件となります。

そのため、法人やこれから開業する個人が新たに給与の支払いを行う場合は『給与支払事務所等の開設届出書』を、

給与支払事務所等を開設してから1カ月以内に管轄の税務署に提出しなければなりません。

一方、もともと開業している個人事業主は、基本的に開業した際に『個人事業の開業等届出書』を提出しています。

そのうえで新規事業によって給与を支払うことになった場合は、『給与支払事務所等の開設届出書』を提出する必要があるのです。

   

そのほかの注意点として、源泉徴収義務者になった場合は『源泉徴収票』を作成する必要があります。

国税庁の公式サイトでひな形をダウンロードできるので、利用すると便利です。

源泉徴収の際には、請求書の作成時に消費税を別にすること、確定申告で源泉徴収の還付申告をすることなども忘れないようにしましょう。


源泉徴収義務者が源泉徴収せずに給与を支払っていた場合、正当な理由があると認められないと

『不納付加算税』が課税され、さらに納付が遅れると『延滞税』も課税されます。

徴収した所得税を納付し忘れることのないように注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。

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  『賃上げ促進税制』強化! 赤字企業は5年の控除繰り越しが可能に  2024-04-11

 雇用者全体の給与を基準よりも増やした企業は、『賃上げ促進税制』によって、

支給した給与のうち増額分について一定の割合を法人税から控除することができます。

この賃上げ促進税制は2022年4月からスタートしましたが、2024年度税制改正によって、

適用期間が延長されることになりました。

さらに、赤字の中小企業に対しても賃上げを促すために、賃上げを実施した年度に

法人税から控除できなかった金額を5年間は繰り越せるようになります。

賃上げ促進税制の強化によって新たに創設された、中小企業に対する『繰越控除措置』について、

説明します。


中小企業向けの賃上げ促進税制が強化された

 

 物価の上昇や円安が続き、国民の生活は厳しい状態が続いています。

この状況に対応し、暮らしやすい環境にするため、企業による持続的な賃上げが求められています。

労働者の賃上げによる消費の拡大を狙い、政府はこれまでさまざまな『賃上げ税制』を講じてきました。

2013年に企業の賃上げ促進を目的に『所得拡大促進税制』が創設されたのを皮切りに、

以降は複数回の見直しを経て、2022年4月1日からは新たな賃上げ税制として、『賃上げ促進税制』がスタートしました。

賃上げ促進税制は、大企業向けと中小企業向けに分かれています。

中小企業向けの賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業等または個人事業主が

前年度より給与等支給額を増加させた際に、その増加額の一定の割合を法人税または所得税から控除することのできる制度です。

これまで、中小企業向けの賃上げ促進税制では、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大40%を控除することができました。

この割合のことを『税額控除率』といいます。

2024年度の税制改正によって、税額控除率が現行の最大40%から最大45%まで引き上げられることになります。

この強化された賃上げ促進税制においては、2024年4月1日から2027年3月31日までに開始する

各事業年度が適用期間となります。


さらに、改正された賃上げ促進税制では、ある課題を解決するための措置も創設されました。

その課題とは、赤字の中小企業は賃上げを行うメリットがないというものです。

赤字の中小企業は法人税がかからないため、賃上げを行なっても、これまでは増加額の一定の金額を控除することができませんでした。

控除ができなければ節税メリットがないため、賃上げにも消極的になってしまいます。

そこで、赤字の多い中小企業にも賃上げを促すため、新たに『繰越控除措置』が創設されました。


赤字になっても別の年度に控除を繰り越せる

 

 賃上げ促進税制での繰越控除措置とは、赤字の中小企業が賃上げを行なった年度に控除しきれなかった金額を、

年間は繰り越すことのできる措置です。

たとえば、改正後の中小企業向けの賃上げ促進税制では、雇用者全体の給与等支給額を前年度比で2.5%アップさせた場合、

税額控除率は30%になります。

税額控除率が30%ということは、賃上げの増加分が100万円の場合は30万円を法人税額から控除できるということです。

その年度が赤字であれば法人税額は0円のため、本来は控除することができません。

しかし、繰越控除措置によって、この30万円を5年間のうちの黒字の年度に繰り越すことが可能になりました。

ただし、繰り越して控除するには、繰り越し先の黒字になった年度も雇用者全体の給与の支給額が

前年度より増えている必要があるので注意してください。

また、複数の上乗せ要件を満たすことで、税額控除率は最大で45%になります。

税額控除率が45%ということは、賃上げの増加分が100万円の場合は45万円を税額控除できるということです。

その年度が赤字であれば、5年以内で黒字になった時に45万円を控除できます。


2023年度に賃金の引き上げを実施した中小企業は約6割にもなり、給与を3%以上賃上げした企業は5割を超えました。

賃上げは税額控除による節税メリットはもちろん、優秀な人材の確保や定着、従業員のモチベーションアップなどにもつながり、

特に中小企業においては有効な施策となります。

繰越控除措置によって、赤字の中小企業でも節税の恩恵を受けられるようになった今だからこそ、

賃上げ促進税制による賃上げを検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年3月現在の法令・情報等に基づいています。

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 『法定休暇』と『特別休暇』の違いを理解しておく  2024-03-13

 

  従業員の休暇には、労働法で定められた『法定休暇』と、その企業が独自に設ける『特別休暇』があります。

年次有給休暇などを筆頭とした法定休暇は、従業員の求めに応じて、必ず与えなければいけない休暇です。

したがって、事業者は法定休暇についての付与日数や要件などを正しく理解しておく必要があります。

一方、特別休暇は必ず従業員に与えなければいけないものではありませんが、

福利厚生の一環として導入している企業が少なくありません。

法定休暇と特別休暇の種類や日数、取得できる従業員の要件などを説明します。


日数や要件が決められている法定休暇

 法定休暇には、法年次有給休暇、産前産後休業、生理休暇、育児休業、介護休業、子の看護休暇などの種類があります。

事業者は従業員に対して、これらの休暇(休業)を付与する義務があり、休暇の取得に必要な要件を満たしているにもかかわらず、

休暇を与えなかった場合は法令違反となります。


年次有給休暇は、雇用した日から6カ月間継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤した従業員に付与する休暇のことで、

付与する休暇の日数は勤続期間に応じて増えていきます。

勤続期間が6カ月の場合、年次有給休暇の付与日数は年10日です。

その後、1年6カ月で年11日、2年6カ月で年12日といった具合に増えていき、

勤続期間が6年6カ月の従業員には、年20日の年次有給休暇を付与します。

また、正社員だけでなく、パートやアルバイトなど、週の所定労働時間が30時間未満で、

週の所定労働日が4日以下(週以外の期間によって所定労働日を定める労働者は、年間の所定労働日数が216日以下)の従業員に対しても、

規定に沿った労働日数の年次有給休暇を与えなければいけません。


年次有給休暇のほかに労働基準法では、第65条に産前産後休業、第68条に生理休暇も法定休暇と定めています。

産前産後休業と生理休暇はどちらも女性従業員を対象とした休業です。

産前休業は、当事者である女性従業員から請求があった場合、出産予定日をベースに、産前6週間(多胎妊娠は14週間)の休業を付与します。

産後休業は女性従業員からの請求がなくても、原則産後8週間の休業を付与する必要があります。


生理休暇は、生理に伴う体調不良などによって、就業が著しく困難な女性従業員に付与する休暇のことです。

原則として、女性従業員からの求めがあった場合には、就業が著しく困難である証明がなくても、休暇を付与する必要があります。

日数に関しては、生理による苦痛や就業できる程度は個人差があるため、企業側で決めることはできません。


育児休業、介護休業、子の看護休暇は、『育児・介護休業法』によって定められた法定休暇です。

育児休業は、原則として1歳未満の子どもを養育するための休業で、男女ともに求めに応じ、分割で取得させることが可能です。


介護休業は、要介護状態(負傷・疾病または身体上や精神上の障害により、2週間以上の期間に渡り常時介護が必要な状態)の家族がいる

従業員を対象とした休業で、対象家族が一人の場合は年5日、二人の場合は年10日まで取得させなければいけません。

子の看護休暇は、小学校就学前の子どもを看護するための休暇で、従業員の求めに応じて、年5日(二人以上は年10日)まで取得させる必要があります。


特別休暇を設ける際に注意しておきたいこと

 法律で定められている法定休暇に対し、特別休暇はその企業が独自に定めるものなので、取得の要件や日数などの制限はありません。

一般的な特別休暇は、慶弔休暇、病気休暇、夏季休暇、冬季休暇などがあり、厚生労働省が公表した『令和4年就労条件総合調査の概況』によると、

何かしらの特別休暇を設けている企業の割合は58.9%でした。

慶弔休暇は、従業員本人の結婚や、親族の忌引きの際に付与する休暇で、取得日数は通常1日~5日ほどに設定されています。

病気休暇は、病気になった従業員の通院や入院のための休暇で、休暇中は無給とするのが一般的です。


夏季休暇や冬季休暇は、多くの企業が採用している特別休暇で、夏季はお盆の8月中旬に付与するケースが多く、日数は3~5日ほどになります。

冬季は年末年始の前後に付与することがほとんどで、土日祝日と組み合わせることで、5日~9日ほどの休暇を実現している企業もあります。


このほかにも、特別休暇には、誕生日休暇やリフレッシュ休暇、ボランティア休暇などの種類があります。

特別休暇の付与は義務ではなく、日数や有給・無給も事業主が自由に決めることができます。

福利厚生として導入すれば、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。


ただし、取得の要件や対象者の範囲などがあいまいだと労使トラブルに発展する可能性もあるため、

取得のルールや申請手続きを明確にしたうえで、就業規則に記載し、全従業員に周知することが重要です。


まずは、法定休暇の種類や要件についてしっかり把握し、

適切に従業員に取得してもらえるように企業として注意しておきましょう。

そのうえで、特別休暇を設けるのであれば、どのような休暇が自社の福利厚生として適しているのか、

制度の設計と共に考えてみましょう。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。



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インボイス制度導入後の経理業務の変更点をチェック! 2024-02-28

 

   2023年10月1日からインボイス制度が始まり、民間調査によると「大変」「少し大変」

と回答する事業者が8割以上を占めています。

インボイス制度によって会計処理にまつわるさまざまな実務の変更が生じ、

その対応に追われている企業は今も少なくないようです。

さらに、適格請求書(インボイス)を受け取る買手の企業の経理担当は、

新しいルールを把握しておかないと、会計上で思わぬミスを招くかもしれません。

すでにインボイス制度は始まりましたが、対応に苦慮している経理担当に向けて、

改めてインボイス制度施行後の経理業務の変更点について説明します。


請求書を区分する必要性と、端数処理の変更

   インボイス制度とは正式名称を『適格請求書等保存方式』といい、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式です。

これまで採用されていた『区分記載請求書等保存方式』は、必要事項が記載された請求書や領収書であれば、

どの事業者からのものでも消費税の仕入税額控除ができました。

一方、インボイス制度の施行後は、適格請求書発行事業者が発行したインボイスでないと、

消費税の仕入税額控除ができなくなりました。

また、インボイス制度によって、インボイスを発行する売手側の事業者(適格請求書発行事業者)はもちろんですが、

インボイスを受け取る買手側の事業者も会計処理の実務に変更が生じました。

会計処理はこれまでより複雑になりましたが、変更点を理解しておけば、煩雑な経理業務の対策を講じることが可能です。

まず、実務の変更点では、買手の事業者は売手から受け取った請求書や領収書が、インボイスか否かを判断することが必要になりました。

適格請求書発行事業者ではない免税事業者からの請求書や領収書は、消費税の仕入税額控除ができないためです

(ただし、制度開始後の一定期間は、免税事業者からのものであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして

控除できる経過措置が設けられています)。

インボイスには「登録番号」「適用税率」「税率ごとの消費税額」が記載されているため、請求書がインボイスかそうではないかは判別しやすいです。

そのうえで、取引先が本当に適格請求書発行事業者なのか、『国税庁適格請求書発行事業者公表サイト』で登録番号を検索して、

確認しておきましょう。

続いて、インボイスに記載されている消費税額の計算が正しいかをチェックします。

これまでの区分記載請求書等保存方式では、商品ごとに消費税額を計算し、その都度端数の処理を行なっていました。

しかしインボイス制度では、端数の処理がインボイス1枚につき、税率ごとに1回のみと定められています。

つまり、消費税8%と10%の税率ごとに商品の売上金額を合算し、各税率をかけて求めた消費税額の端数処理をそれぞれ行うということです。

ちなみに、端数処理はこれまでと同様、「四捨五入」、「切捨て」、「切上げ」など任意の方法で行います。

端数の処理が変わったことで、消費税額にも変更が生じる可能性があります。

もし、インボイスに記載された税込金額と、計算して求めた税込金額が異なる場合は、取引先にインボイスを修正して再発行してもらうか、

もしくは発生した差額を「仮払消費税」などで調整します。


税区分と消費税額の算出パターンが増えた

   仕訳もインボイス制度によって変更が生じました。

これまでの仕入は「課税仕入8%(通常の8%、軽減税率8%)」と「課税仕入10%」という2つの税区分でした。

一方、インボイス制度の施行後は、「仕入税額控除の対象となる課税仕入8%(通常の8%、軽減税率8%)」と

「仕入税額控除の対象となる課税仕入10%」に加え、

仕入税額控除の対象にはならない「控除対象外の課税仕入8%(通常の8%、軽減税率8%)」と

「控除対象外の課税仕入10%」という4つの税区分で仕訳を行うことになります。

さらに、免税事業者からの請求書や領収書であっても、経過措置として、2026年9月までは仕入税額相当の80%、

2029年9月までは仕入税額相当の50%が控除できます。

そのため、これらの仕入を仕訳する際には「80%控除対象」「50%控除対象」や

「免税事業者からの仕入れ」と記載して、区分することになります。

また、売上と仕入に対する消費税額の計算方式が固定だったものから、

税率ごとに区分して集計したものに消費税率を乗じて計算した金額から消費税額を算出する「割戻し計算」と、

集計期間において、1仕訳単位で取引金額(税込価額)を消費税額と本体価額(税抜価額)に区分し、

その消費税額を積み上げて計算を行う「積上げ計算」のいずれかを選択できるようになりました。

この選択により、売上や仕入に対する消費税額を少なくすることが可能です。

ただ、どちらの方式がその事業者にとって有利になるか判断するのはむずかしい一面もあります。

インボイス制度の導入により事業者にとってメリットとなる部分はありつつも、煩雑な処理が増えている分、ミスが起こりうる可能性もあります。

たとえばインボイス制度に対応した会計システムを利用するなど、どの書類をどのように処理するかの判断は事業者みずから行うことになります。

判断に困った場合は、税に詳しい専門家に相談することをおすすめします。


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フリーランスの『労災』はどうなる? 特別加入の対象が拡大か 2024-1-31

 一人でも労働者を雇用する事業主は、業種や規模にかかわらず、

労災保険に加入する必要があります。

労災保険は正式名称を『労働者災害補償保険』といい、

業務上の事由や通勤中に起きたケガや病気、死亡などに対して、

給付などの補償が行われます。

この労災保険は原則として労働者を保護するものですが、

一部の事業主やフリーランスとして働く個人事業主は特別加入制度により、

任意での加入が認められていました。

この特別加入制度の対象の範囲が大幅に拡大する可能性があります。

労災の現状と今後の見通しについて、考えていきます。


労働者かフリーランスかは労働者性で判断

   労災保険は労働者を使用する事業を適用事業とし、補償の対象となるのは、

正社員や契約社員、パートやアルバイトなど、職種や雇用形態を問わず、

すべての労働者と定められています。

労災保険は、労働者災害補償保険法に基づく公的保険で、原

則的には雇用されている労働者を保護するための制度です。

したがって、事業または事務所に使用されておらず、労働者ではない事業主や会社役員などは、

労災保険による補償の対象にはなりません。

また、事業者と「業務委託」や「業務請負」などの契約を結んで働くフリーランスなども、

労災保険の対象外になります。

特定の業務に対して事業者側から報酬を受け取る業務委託契約や業務請負契約は、

雇用契約ではないため、業務中にケガや病気をしても補償を受けることはできません。

しかし、2023年11月、ネット通販大手『アマゾン』の配達業務に就いていたフリーランスの運転手が

配達中に負ったケガに対し、管轄の労働基準監督署は『労災』を認定しました。

運転手はアマゾンの配送を取り扱う運送会社と業務委託契約を結んでいたフリーランスであるにもかかわらず、

労基署が労働者とみなしたことになります。

労働基準法では、労働者に該当するか否かの判断基準を『労働者性』といい、

たとえ形式上は業務委託契約であったとしても、労働者性があれば労働者と認められる場合があります。

そして、この労働者性を見極める主なポイントは、他人の指揮監督下にあるかどうかと、

指揮監督下における労働の対価として報酬が支払われているかどうかの二つになります(使用従属性)。

たとえば、フリーランスであっても勤務場所や勤務時間が拘束されていたり、

業務の拒否権がなかったりすると、指揮監督下にあるとされ、労働者性が高いことになります。

この使用従属性については、明確な基準に基づき画一的に判断されるわけではなく、

個々の事案ごとに総合的に判断される点に注意が必要です。

先の運転手は、アマゾンと運送会社にアプリを通じて配達先や労働時間が管理されており、

両社の指揮監督下にあると判断されました。

つまり、独立したフリーランスでありながら、実質的に雇用された労働者と同等の働き方になっていたことから、

労災が認められたことになります。


すべてのフリーランス対象の特別加入制度

   フリーランスである運転手の労災が認められた一件は、

同様の働き方を行うフリーランスの保護につながるという見方があります。

フリーランスとは、自身で事業等を営んでいる特定受託業務従事者で、従業員を雇用しておらず、

実店舗を持たない人のことを指します。

多様な働き方が重んじられる現代において、さらにコロナ禍を経たことにより、

フリーランスとして働く人の数は飛躍的に増えています。

そのようななか、同じ企業から継続的に業務の委託を受けるなど、

労働者に近い働き方をしているフリーランスも多いのが現状です。

厚生労働省ではこうした現状をふまえ、これまで一部のフリーランスしか加入することができなかった

『特別加入制度』の対象範囲の拡大・運用を検討しています。

特別加入制度とは、その業務の実情や災害の発生状況などから、労働者ではなくても、

労働者に準じて保護する必要がある中小事業主や一人親方、特定作業従事者、海外派遣者、

一部の個人事業主の加入を認める制度のことです。

これまで何度か特別加入の対象の拡大が行われており、2021年にはフリーランスでも

ITフリーランスや自転車を使用して貨物運送事業を行う者、芸能関係作業従事者など、

一部の業種で特別加入が認められました。

内閣府の調査によると、現在のフリーランスの数は本業と副業を合わせて約462万人という試算が出ています。

特別加入制度の範囲が拡大されることで、これらすべてのフリーランスにとって

新たなセーフティーネットができることになります。

具体的にどのような制度になるのかなど、フリーランスは今後の行方を注視していく必要があります。


※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。


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会社設立してすぐに『青色申告』の手続きをするメリット 2024-1-26

 

 法人は事業年度ごとに決算を行い、所得に応じた法人税を

納めなければいけません。

確定申告には『青色申告』と『白色申告』の2種類があり、

青色申告で申告しない場合は自動的に白色申告で申告することになります。

確定申告を行う個人事業主に選ばれているイメージのある青色申告ですが、

法人でも青色申告をすることにより節税などのメリットを享受できます。

ただし、青色申告を行うには税務署に申請する必要があり、提出期限も決められています。

今回は、会社を設立した際に検討しておきたい、法人の青色申告について解説します。


白色申告は単式簿記、青色申告は複式簿記

 確定申告における青色申告と白色申告の大きな違いは、帳簿のつけ方にあります。

白色申告は日々の取引を単式簿記により帳簿に記帳し、会計を行います。

これに対し、青色申告は「複式簿記」が義務づけられており、

取引ごとに借方と貸方という二つの側面から記帳しなければいけません。

単式簿記は家計簿やお小遣い帳のような比較的シンプルで簡易的な帳簿ですが、

複式簿記は単式簿記よりも複雑で、簿記や会計の知識がある程度は必要になります。

しかし、会社の売上や経費などの財政状況を正確に把握するためには、事業における損益の把握、

お金の増減や出納などの情報を細かく記載できる複式簿記が欠かせません。

特に、金融機関の融資を受ける際などは、損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を

金融機関に提出することになります。

その際、複式簿記による記帳を行なっていないと、この財務諸表を作成することもむずかしくなります。

また、複式簿記は記帳が複雑といっても、法人であれば簿記の知識がある会計担当者や、

顧問の税理士に任せることが可能であり、会計ソフトを活用すれば比較的スムーズに作成できます。

そのため、一般的な会社であれば複式簿記での記帳はすぐにできるはずですので、青色申告をしやすいでしょう。

青色申告は税制面でもさまざまなメリットがあるため、ほとんどの法人は立ち上げ時に青色申告の申請を

行なっています。

実際に、国税庁の調査によれば、法人の9割以上は複式簿記が必要になる青色申告で確定申告を行なっている

というデータもあります。


法人が青色申告を行う節税メリット

 法人の場合は青色申告を行うことで、具体的にどのような節税が可能なのでしょうか。

個人事業主の青色申告といえば、要件を満たすことで最大65万円を所得金額から控除できる

『特別控除』がよく知られています。

ですが、この65万円の特別控除は法人には特にありません。

法人が青色申告を行う最大のメリットといえば、「欠損金の繰越控除」と「欠損金の繰戻還付」が

あげられます。

欠損金の繰越控除とは、今期の事業が赤字になってしまっても、

10年間は赤字を繰り越すことができるというものです。

黒字になった期には繰り越した赤字と相殺することで、その期の税金を抑えることができます。

また、欠損金の繰戻還付は、前期が黒字で今期が赤字だった場合に赤字分を黒字分と相殺し、

前期に支払った法人税のうち、相殺した分の法人税が還付されるというものです。

ほかにも、通常は業務のために用いられた機械や備品など、10万円以上の資産は数年に渡って減価償却する必要が

ありますが、青色申告では特例として、取得価額が30万円未満の減価償却資産は、一定の要件をもとに

一括で損金に算入することが認められています。

ただし、この特例が使えるのは資本金1億円以下の中小企業者等のみなので注意してください。

ちなみに個人事業主の場合も青色申告を行なっていれば、欠損金の繰越控除が認められています。

しかし、繰り越せる期間は3年しかありません。


承認申請書を税務署に提出する期限に注意!

 青色申告で確定申告を行うには、青色申告の承認申請書に必要事項を記入し、

管轄の税務署に提出する必要があります。

ここで気をつけたいのが提出期限です。

法人の場合は原則、青色申告で確定申告を行いたい年度の事業年度開始日の前日までに、

承認申請書を提出しなければいけません。

事業年度開始日が4月1日の場合は、3月31日までに提出する必要があり、

提出期限を過ぎてしまうと、その年度は白色申告で確定申告を行うことになります。

また、新規で法人を立ち上げた場合は、会社設立日の3カ月を経過した日、

もしくは事業年度終了の日のどちらか早い日の前日までと決められています。

会社を設立すると、法人登記や各自治体への届け出など、いくつもの作業を行うことになります。

節税などメリットが多い青色申告で確定申告を行うのであれば、ほかの手続きと併せて、早

いタイミングで税務署に承認申請書を提出することをおすすめします。

※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。


税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。

     

マイナンバーカードとe-Taxの活用でさらに便利な確定申告 2024-1-18

 

 国税庁は令和3年に、税務行政手続きなどのデジタル活用に関する方針を

まとめた『税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-

税務行政の将来像2.0-』を公表しました。

そのなかで「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」に

向けた構想などを示し、実現に向けて工程表を掲載しています。

たとえば、確定申告について自宅からのe-Taxを標準化し、マイナンバーカードで取得できる情報を

順次拡大することを目標として掲げています。

今回は、マイナンバーカードとe-Taxでより申告しやすくなった確定申告について解説します。


税務署に行かない確定申告を目指して

   コロナ禍以降、国は税務署へ行って長時間かけて申告をするのではなく、

自宅から申告できる確定申告の方法を推奨しています。

自宅での作業を中心に申告を完了できる方法は、主に4つあります。

1つ目は、国税庁のWebサイトから確定申告書類をダウンロードし、印刷のうえ、

必要事項を記入して税務署に郵送する方法です。

2つ目は、所轄の税務署や確定申告会場、市区町村の担当窓口や指導相談会場に出向いて

確定申告書類を受け取り、自宅に持ち帰って記入・郵送する方法です。

用紙の受け取りのみなら、税務署などに赴いても短時間で済みます。

3つ目は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で必要な情報を入力してデータを作成し、

そのデータをダウンロードおよび印刷してから税務署に郵送する方法です。

そして4つ目は、オンラインによるe-Taxを利用して申請する方法です。

e-Taxは国税の電子申告・納税システムのことをいいます。

e-Taxソフトまたは前述の確定申告書等作成コーナーを利用して作成した確定申告のデータを、

e-Taxを通して税務署に提出することができます。

特に、e-Taxは基本的にオンライン上で申告が完結するため、

国が税務行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の一環として推奨しています。

e-Taxでのオンライン申告は、申告者だけでなく税務署にもメリットがあります。

紙の使用を減らし、データで確定申告の管理と処理を行うことで、業務の効率化が実現します。

申告の方法としてe-Taxでのオンライン申告が主流になれば、税務署の業務効率化が進み、

納税者への諸手続き(税金の納付や還付など)もこれまでよりスムーズに実施されるでしょう。

e-Taxはパソコンだけでなくスマートフォンからも利用でき、入力方法も年々わかりやすくなってきています。

今後、e-Taxによる確定申告はますます増えるでしょう。


令和5年度の確定申告で便利になること

   令和5年度の確定申告(令和6年1月上旬~)では、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで、

以下の2つの便利な機能が追加されます。

まず、マイナポータル(政府が運営するオンラインサービスで、行政サービスの検索やオンライン申請、

お知らせの受取りなどができる自分専用サイト)と連携することで、申告書の一部が自動で入力されます。

マイナポータル連携とは、年末調整や確定申告の手続きの際に、

マイナポータル経由で控除証明書などのデータを一括取得し、各種申告書の該当項目へ自動入力する機能です。

令和5年度分からは、収入関係は「給与所得の源泉徴収票」が、

控除関係は社会保険の「国民年金基金掛金」と「iDeCo」「小規模企業共済掛金」が、

各種申告書の該当項目へ自動入力されるようになり、手入力が不要になります。

もう一つの便利な機能は、インボイス発行事業者の消費税の申告がよりスムーズに行えることです。

確定申告書等作成コーナーで作ったデータを、e-Taxのシステムを利用して申告することが可能です。

また、今回の追加機能によって、たとえばいわゆる「2割特例」についても、確定申告書等作成コーナーで

申告書を作成できるようになります。

2割特例は、2023年10月から開始されたインボイス制度を機に、免税事業者から課税事業者になり、

一定の要件を満たす事業者に向けて設けられた制度です。

この特例を選択すると、インボイスがなくても、仕入れや経費に掛かる消費税額を

売上げに係る消費税額の8割とすることができます。

この2割特例や簡易課税制度の申告書を確定申告書等作成コーナーで作成する場合、

売上(収入)金額などの入力だけで税額等が自動計算されます。

ただし、これらの方法を活用するためには、マイナンバーカードが必須です。

もし、まだマイナンバーカードを取得しておらず、e-Taxでインボイス発行事業者の消費税の申告をしたい場合は、

早めにマイナンバーカードを取得しましょう。

e-Taxでマイナンバーカードを使う場合はカードリーダーか、二次元バーコードを読み取れるスマートフォン

(マイナポータルアプリのインストールが必要)があれば、手軽に申告できるのでおすすめです。

令和5年度の確定申告は、マイナンバーカードとe-Taxの活用によって新たに一部簡素化され、手続きしやすくなります。

国が推進している税務行政のDXをぜひ体感するために、確定申告をする予定がある人は、

自宅からe-Taxを使って手続きしてみるのも良いかもしれません。

※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。

税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。